プロローグ
目をさますと、そこには白いもふもふ。
俺をやさしいまなざしで見る。
起きたの?って話しかけるように俺を見下ろす。
これが、俺の小さいときの記憶。
そう、その白いモフモフはメロディという名前の猫だった。
メインクーンという猫種で、体長は1メートルを超える長毛種だ。
大型犬くらいの大きさの猫。
でも、俺にとっては単なる猫ではない。
おかあさんにも近い存在だった。
俺の家はお父さんがラーメン屋を経営していて、お母さんもヨガの教室を開いていた。
共働きでほとんど家にいない状態だった。
保育所に預けられている間以外はメロディが俺の面倒を見てくれていた。
いつも俺に寄り添い、危険がないようにしてくれた。
すごく頭がよくて優しい猫だったんだ。
俺が家にいる間、ずっと見守ってくれていたんだ。
俺はメロディのおかげで、少しもさみしくなかった。
お父さんやお母さんが惜しげもなくぼくにおもちゃを買ってくれたし、人間のベビーシッターも雇っていた。
それが親の愛情だったのだろうと思うし、別に恨んではいない。
そう思うのは、メロディが俺を愛情いっぱいに育ててくれたからだ。
メロディは小学4年生の時に死んでしまった。
すごく悲しかったのを覚えている。
そして、俺は強くならないといけないと思った。
メロディに恥ずかしくないように生きようと思った。
俺は勉強もスポーツも頑張った。
それで、クラスの中でも目立った存在になった。
結局、そこが俺の頂点だったわけだが、そこまでなれたのもメロディのおかげだった。
最近、メロディの夢をよく見る。
彼女はなぜか昔と同じように心配そうに俺をみるのだ。
そう、あのアキヒロを殺してからの俺は危険な仕事ばかりを引き受けるようになった。
自分でもなぜかわからない。
まるで、死に場所を探すように危険なところを渡り歩くようになった。
金なんてどうでもいい。
食って寝るだけのものがあればいい。
そして、危険な依頼はそれだけ多くの経験値を得ることができる。
俺はあの時より格段に強くなっていた。
いつの間にか聖剣士コスモと呼ばれ、剣聖マリーと並べて称されるようになっていた。
冒険者としても最高ランクのS級が与えられるようになったのだ。
俺は難しい依頼を楽々とこなせるようになったのだ。
でも、メロディからしたらこんな俺が心配なんだろうな。
彼女はたぶん今でも俺を見守ってくれているんだ。
まるで、子供のころと同じように…