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廃墟の部屋で
ジジジジジジジ。
ぽたりと汗が落ちる。
息ができないほど蒸し暑い部屋には、蝉の鳴き声だけが反響していた。
ジジジジジジジ。
額の汗を手で拭う。ベタっとした感触が不快だが、汗が滴り続けるのも嫌だ。
「ユウ、水」
入口近くに座っていた男がペットボトルを差し出す。
私は手を伸ばさず、じっと壁を見続ける。
ジジジジジジジ。
「熱中症になるよ」
「ほっとけほっとけ。飲みたくなりゃ勝手に呑むさ」
ぐったりと壁にも垂れた男が言う。
それでもペットボトルは差し出されたままだ。
「ユウ」
「…て」
「え?」
近づいた男の胸ぐらを掴み、引き寄せる。
男は顔色ひとつ変えずに私を見る。
「そんなモンいらないから、解放して」
ジジジジジジジ。
「…そりゃ無理だ」
友達だったはずのその男は、温度のない笑みを浮かべた。
足に繋がれた冷たい鎖がじゃらりと不快な音を立てた。