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ポストを開けてみると

作者: あきとよし

 終業時間の少し前に急な仕事が入り、結局、荒木さんが自宅近くの最寄り駅に着いたのは、午前0時を少し回った頃だった。


(本当に疲れた。勘弁してほしい)


 駅前のコンビニに寄って軽い夜食と翌日の朝食を買いつつ、人通りがほとんど無い道を足早にマンションへと向かう。


 昼間の暑さが僅かに残る中、10分ほど歩いて見えてきたマンションは、日付が変わっていることもあり、明かりが点いている部屋は数えるほどしかなかった。


 入口はオートロック式なので、カバンの中にある鍵を探しつつ、自分の部屋の郵便ポストを開けて、入っているであろう夕刊をとろうと中をのぞき込むと、暗闇の中、真っ赤に充血した眼と視線があった。


「え?」


 反射的にポストを閉じてしまった。


 バタン。


 そこそこ大きな音が、静かな住宅街に響いた。


(今、目玉が浮かんでいたような…)


 酒を飲んではいないが、とても疲れているので、幻覚でも見たのだろうか。

 

 もう一度、ポストの中を見てみれば良いのだろうが、何故か開けてみる気にならない。


 ポストの前を離れて、入口の鍵を開けようとした時、


 カタカタカタ。


 荒木さんのポストだけではなく、設置されているポスト全てが、音を立てて揺れ始めた。





 気が付いたとき、荒木さんは自分の部屋のベッドで横になっていた。


 いつの間に部屋に戻ってきていたのか、まったく覚えていない。定位置に置いてある目覚まし時計が表示している時刻は、6時半だった。


 カーテンの外から、うっすらと日が差してきている。


(昨日のは、いったい何だったんだ……)


 ワイシャツにスラックス、おまけに靴下を身に着けたまま寝ていたことに驚きつつ、そのままの恰好でポストを確認しに行くことにした。


 恐る恐る、荒木さんがポストを開けると、充血した眼が浮かんではいなかった。


 ただ、微かに鉄さびのような匂いが染みついた昨日の夕刊と今日の朝刊が入っているだけだった。

自分が最近見た夢の話です。……正直、目覚めは最悪でした。

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