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美酒佳肴  作者: 乙賛
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第8話 俺たちはゆうしゃだ?

時は少し遡る。


いつもの通学風景、いつもの4人、いつも通りのどうでもいい会話。

いつも通りの日常が、このまま続くと4人は考えていた。


だが、電車の急激なブレーキがかかる。

「ちょっと、マジ何っ!」

「やばいって!」

「シンちゃん助けて!」

「えっ!」


賑やかだった学生たちは、事故の直前でも変わらず喧しかった。

そしてそのまま気を失った。





真白な世界。


そこに4人まとまって倒れている、さすがに気を失っているときは静かなようだ。


「うぅ」

ひとりの女子学生が目を覚ましたようだ。


「どこ、ここ?」

周りを見回しても真白なだけで、どの程度の広さかわからない。天井があるのかどうかも判断できない場所である。

彼女は自身に何が起きたかも思い出せず、突然わけのわからない場所にいる状況にパニックを起こしそうになる。


「くっ、どうなってんだ」

男子学生が目を覚ましたようだ。


「カズっち、ここなんなのよっ!」

女子学生は、男子学生に詰め寄る。


「知るかっ、俺も目を覚ましたところだぞっ!」

男子学生は怒鳴り返すが、周りを見回し呆然となる。

「なんだここは…」


2人で口を開けたままの呆然とした顔で周りを見渡し、一緒にいたはずのあとの2人を思い出す。

足元に倒れている2人に気が付き慌てて揺さぶり起こす。


「おいシンヤ!起きろっ!」

「ホノカも、いつまで寝てんのよっ!」

状況によっては頭を揺さぶる行為は致命的になることにも気づかず、無理やり起こそうとする2人。


「くっ、なんだうるせぇな」

「ちょっと、もっと丁寧に扱いなさいよ」

何事もなかったように目を覚ました残りの2人も、周りの様子を見て唖然とする。


「なんなんだ、ここはっ。カズキ説明しろよっ!」

「俺だって知るかよ、さっき目を覚ましたとこだぞ。」


「セリナ、ここなんなの?」

「あたしが聞きたいは、それっ」

目を覚ますなり騒がしくなる学生たち。


「ちょっと、これ家に帰れないじゃないの」

「マジッ!それ困るんだけど!

 カズっち何とかしなさいよ!」

「おい、なんで俺なんだよ知るかよってか帰れるなら俺も帰りてえよ、シンヤ何とかなんねぇのか」

「ここがどこかもわからんし、どうやって来たかもわからないのにどうしろっていうんだ」

「シンちゃんいっつも俺に任せろって言ってるじゃん、かっこ悪い減滅だわ。口だけ男ってどうなの、マジ最悪!」

「おい、ふざけんなよ!この状況で何ができるんだ、偉そうに言うならお前が何とかしろよ!」

「はぁ、か弱い女子に「なんとかしてぇ~♪」って、マジうざいんだけどぉ」

「こいつ、ぶっ殺す!」


「いい加減にしてよ、ここで喧嘩しても何も変わらないよ。それよりこれからどうするか考えないと。

 こんなわけのわからないとこで暮らすなんて絶対嫌だからねっ!」

ホノカと呼ばれた女子学生が場をとりなすことで、最悪の状態は回避できたようだ。





「・・・おい」

背後から誰かの声が聞こえ慌てて振り返る学生たち。

声をかけてきたのは灰色の人型のような存在だった。


「・・・お前たちを転移する・・・」


「おい、お前は何なんだ」

「ちょっときもくない」

「この状況を説明しろっ!」

「転移って何するつもりなのよ」

自分たち以外の別の対象が現れたことで、質問攻めにしていくが、


「・・・転移・・・」

灰色は相手にすることもなく無視して転移?とつぶやくと真白な空間が輝きだした。




まぶしさに慣れ周りを見ると、先ほどの真白な空間ではなく何らかの建物の中のような場所にいた。

灰色はいつの間にか姿を消しており、その場所に取り残されている4人。


「なんだぁここは?」

「マジ意味わかんないんだけどぉ」

「さっきの奴の姿が見えないぞ、どこに逃げた!」

「まあさっきの状況よりはましっぽいかなぁ」

所変わってもにぎやかさは変わらない学生たち、話している内容も建設的なものはなく単なる愚痴か内容のない会話のみ。

それなりに時間がたち、やっと冷静になったのか喋り疲れたのか静かになったとき、少し離れた場所にサラリーマンのような男が現れた。

その男も灰色に連れてこられたらしく、文庫本片手に呆然としていた。



「これで全員が集まったな」

という渋い声の聞こえ、サラリーマンがやり取りをしている。

決して頭のよさそうではない学生たちだが、やり取りの内容は理解できたようだ。


「異世界転移キター!」

「シンちゃんが勇者だね!」

「ラノベの世界かよっ!」

「まほーはつかえるのー?」


渋い声は、質問に答えてくれた。

「転移先では魔法が一般的に利用されている」

「「魔法キター!」」


「じゃあ俺たち勇者パーティってことかっ!」

「あたしは魔法でババーンッてやりたいっ!」

「ふっ、俺が勇者か」

「チートならやりたい放題できるわねぇ」

誰も勇者やチートなどは言っていないのに、勝手に思い込んで好き勝手言う学生たち。





「その通りだ、「転移」と叫べばすぐに転移可能だ」


「さっそく無双しにこうぜっ!」

「魔法っ♪魔法っ♪魔法っ♪」

「俺が世界を救うのか…ふっ」

「おいしいものでしょ、いい男でしょ…うふふっ」



「「転移ー!」」学生たちはためらいもなく次々に転移していった。



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