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美酒佳肴  作者: 乙賛
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第5話 やらかしても大丈夫、転生者だもの

初めての戦闘を無事に終えたことで、無抵抗で殺されたりするリスクは回避できそうだという自信はついた。


ただ、あまり特殊な魔法は悪目立ちするので、基本的とされる魔法もある程度習得しておく必要がある。

町に着いたときに最悪対人戦が起こりうることも考えると、必殺技というよりも護身のためのものが必要だ。

殺人はこの世界でも犯罪となることは想像に難くない。


同じ理由からあまりひどい怪我をさせるようなものも避けたい。


別にこの世界で英雄になりたいわけでもないし、酒が楽しめる程度に暮らせればよい。

そのためにも前科持ちにはなりたくない。


見た目で分かりにくく、かつ攻撃されないか避け易くするような手段が欲しい。

運よく無詠唱を取得できているので、魔法を使っていることはばれないだろう。


となると、質量の増減がバランスを崩させるのには良いのではないか。

熟練者であればあるほど慣れた動きを崩されると動揺するだろうし、うまくいけば手を引かせることもできるだろう。


質量自体を増減させるのは困難というかヒッグス機構なんかは今一つ理解出来ていない。

中途半端な知識でイメージしても発動可能なのかを試す必要がある。


重力質量と考えれば、物質間相互の引力に干渉するイメージで実現できそうだ。


まずは質量を軽減させるイメージが発現可能かを確かめる。

近くにある石を拾い軽くなるイメージをする。


掌に置いた石の重さが急に無くなった、これは成功したということか。

複雑な理論は置いておき、単純に軽くなったイメージで成功してしまった。

どういう原理で軽くなったのかはわからないが、求める結果は得られたので良しとしよう。


もう一つ重力への干渉についてもイメージしてみる。

足元に転がる別の石に対して、重力を遮断するイメージを浮かべる。


石の見た目は変化していないがどうだろうか。

つま先で軽く石を蹴ってみると、転がることなくまっすぐに飛んで行った。


どうやらこちらも成功したようだ。


念のため重くする方向でも試してみたが、どちらも成功した。

これで対人戦では油断しなければ、相手のミスを誘発させることが出来るだろう。



あとは基本魔法、いわゆる4属性魔法と言われているあたりを練習しておく。

これらを使っていれば、ちょっとした魔法使い程度に思ってもらえることを期待して。



あの部屋で見た書庫の本の内容を思い出し魔法を使っていく、もちろん無詠唱だ。

特に問題なく使えることが解ると、もう少し凝ったことがしたくなる。

今できる最大の攻撃方法についても見ておく必要があるよなと、半分自分への言い訳の様なことを考えつつ、

やっぱり派手な攻撃は爆発系だよなと。


もちろん森の中で火魔法はまずいということは理解しているが、

様々な魔法が使えたことで、妙なテンションになっていた俺はちょっとしたお試し程度なら大丈夫だろうと

気が緩んでいたようだ、後で後悔することになるとも知らず…。



いわゆる爆発は燃焼と異なり衝撃波を伴うが、火薬の密度や爆轟の速度により効果が大きく異なる。

書庫の本にもあった爆発の魔法はこの辺りについては一切触れられておらず、単純に爆発のイメージとしてしか扱われていなかった。

つまり何が言いたいかというと、爆発のイメージをより詳細により燃焼しやすい火薬をより高圧縮するとした場合、

どの程度の爆発が起こるか試してみたい。

魔法はイメージという事だが、詳細にイメージすることでどこまで威力が向上するのか知りたいということだ。


ナパームのような粘性の高い成分を含ませると消化が大変なので、高性能爆薬であるプラスチック爆弾のイメージで試そうと思う。

ソフトボール程度の大きさにプラスチック爆弾を圧縮して成型するイメージを行うのだ。

確かプラスチック爆弾は発火では起爆しなかったはずで小規模な爆発が必要だったはずだ。


万が一想定よりも規模が大きくなった場合、巻き込まれる可能性もあるので念のために塹壕を掘っておく。

安全を期して深さ五メートルほどの塹壕を掘り、すぐに飛び込めるように準備する。もちろん塹壕堀りは魔法を使った。


森の外側では町から丸見えになるので、森の中心部に向かって試すことにした。

まあ森の規模がわからないので町の反対側の森の奥というのが正しいかもしれない。


ちょっとワクワクしながら、一キロ程度先の上空数メートルあたりにソフトボール大の爆弾をイメージする。

明日の朝、明るくなってからどの程度の効果があったかを確認に行きたいので、町からは気づかれないが歩いても疲れない程度の距離ということである。


ソフトボールの中心に向かって小さな爆発で起爆させる。


すぐに塹壕に飛び込むと、ドウッという爆裂音とともに頭上を突風が吹き抜ける。

土砂や木の枝などがその後流れ込んできて、生き埋めになりそうだ。

30秒ほど木の枝と格闘して何とか塹壕から脱出して、周りを見渡し呆然とした。


「なんだこりゃ…」

さっきまで深い森だったはずの場所が何もないただの荒れ地になっている。

正確には「爆心地」から同心円状に森が地面事吹き飛ばされている。

なぜ同心円とわかるかというと、はるか先の方で森の残骸らしいものが同心円状で燃えているからだ。


おそらく半径10キロ程度の森が、さっきの魔法一つで消滅したということになる。


ふと我に返り、町の方向へ振り返る。

すでに夜半を過ぎた時刻のはずが、町の明かりがぽつぽつとかなりの速さで灯っていく様子が見える。


「見つかると面倒なことになるなこりゃ」つぶやくと慌てて町から反対方向に走り出す。

とはいえ身を隠せる場所はさっきの魔法で吹き飛んでいるのでとても見晴らしの良い状況、夜陰に紛れて距離をとるしかない。


俺は振り返ることもなく、夜の闇の中をひたすら走る続けるのだった。




どれ位走っただろうか、元の世界では息切れで動けなくなるような距離を走り抜けていた。

一時間程度は走ったと思うがすでに爆発の範囲は抜け、ひざ下程度の草が生い茂る草原の中で立ち止まる。


振り返るとかすかに爆発の残り火が見える程度で、ここまでくれば見つかることはないだろう。

走っている途中で塹壕で被った土砂はほとんど落ちてはいるが、服の中までは当然落ちていない。


保管庫の指輪から着替えと野営セットを取り出すと、下着一枚になって体中をふき新しい服に着替える。

脱いだ服はそのまま格納しておく。


ここまで町の者が来るとは限らないが、朝までおとなしくしておこう。



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