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美酒佳肴  作者: 乙賛


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第36話 続きはCMのあとってストレスだよね

俺は床に腰を下ろすと、保管庫から適当に串焼きとグラスを取り出した。

運動した後はやはりビールかと、グラスになみなみと冷えたビールを創造すると、さっそく串焼きを肴にビールを呷る。


最近は一人で飲むことがなかったので、少し人恋しいがたまには手酌でまったりというのも良いものだ。

保管庫から次々に肴を取り出し、ビールを呷っていると影が回復したのか話しかけてきた。



「貴様何者だ?貴様の使う魔法は人の使うものを超えている」

「そんなこと言われてもなぁ、俺はこの魔法しか知らないんだ。属性魔法ってやつは使えないというか使ったことがない」


「なんだと、人は属性魔法しか使えないように制限されているはずだ」

「俺のはただの「魔法」ってスキルだな。」


「ありえんことだ、それは人に与えられるスキルではない、万一付与されても使いこなせるはずがないものだ」

「いや、さっきも見た通りそれなりに使えてただろ?そんなこと言われても使えるもんはどうしようもないぞ」


「うむ、ひょっとして貴様は転移者か?」

「ああ、よく知ってるな。先月ぐらいかなこっちに転移してきたんだ」


「やはりそうか、貴様は転移者にして適格者の資質を持つものなのか」

「なんだそれは?」


「聞いておらぬのか?なるほどでは我からは伝えることはかなわぬ」

「なんだそれは、言いかけたなら最後まで話せ、思わせぶりな態度は小物のすることだぞ」


「しかし、神が伝えなかったのならば、そこに何か理由があるはずだ。我から伝えることは神の意志に逆らうことになる」

「神って、あの渋い声のおっさんのことか?資質が高いとかどうとか言っていたがそのことか?」


「聞いておるではないか、それと神をおっさん呼ばわりはするな」

「そりゃすまないな気を付けるようにするが、「我は神だ!」みたいな自己紹介はなかったんでな」


「まあ、神と知らなかったのであれば仕方がないだろう。それでは改めて説明してやろう。


 転移者とは貴様のように別世界から呼び出されたもののことだ。


 転移者は「資質」の高いものが選ばれることになっている。

 

 そして適格者とは転移者の中でも「資質」が高いものを指す、

 

 そして「資質」とは、・・・・・」



「おい! 影! 良いところで勿体ぶるなよ! 続きはCMの後とかストレスがたまるだけの嫌がらせなんだからな」

突然黙り込んだ影、勿体ぶっているのかと改めて見ると、影の瞳らしき赤い光が消えていた。


「ちっ、「資質」とやらは相当やばいものらしいな。俺に聞かせたくない奴がいるってことか」

俺はそう呟くと、残っていたビールを一気に呷った。


影はある程度回復していただろうから、あのタイミングで急に息を引き取るとは考えづらい。

となると、第三者からの介入を疑うことになるが、情報が少なすぎる。


影からは色々新しい情報は得ることが出来た。俺のスキルは表沙汰にしてはまずいものだとわかっただけでも良かったとするか。

もうここに居ても仕方がないと、先に進むことにした。




影から話を聞いた後は雑魚しか現れず、10階まで下りることにした。

中途半端な情報、しかも途中でぶった切られたことでイライラしていたのだろう俺は全力で使い階段らしき気配を察知すると一気に10階まで駆け下りた。

途中ですれ違った冒険者は、突風のように過ぎ去る俺に驚いただろうが俺の気にすることではない。


そして今10階のボス部屋の前にいる。

想像していた順番待ちの行列はなく、ボス部屋の扉を開く。

中は学校の教室程度の狭くはないが広くもないと言った中途半端な広さだった。

奥の方に入り口と同じような扉があるので、あそこが転移装置のある部屋と思う。


そういえば部屋の真ん中にちょっと大きめのオークがいる、多分上位種ではなくオークリーダーとでも言えばよいのか

一般のオークよりもちょっとだけ強い程度のオークだろう。

わざわざ鑑定するのも面倒なので、唐竹割りにしてしまう。

ドロップはオーク肉と魔石、これまで拾ったものよりも大きいが結局小粒な魔石に違いはない。


いまさらオーク肉をもらってもと思うが、ドロップのオーク肉は食べたことがないと思い返し保管庫に放り込んでおく。


そして奥の扉を開けると、予想通り入り口にあったものと同じような転移装置があった。

先に進んでもいいが、気になるので転移装置を起動してみる。


周りの空間がぶれたような感覚があり、一瞬でダンジョンの入り口にあった小部屋に戻ってきた。

どういう仕組みでこの距離を移動しているのだろう?体の再構成だとちょっと怖いな、ハエ男になったりしたらシャレにならない。



折角戻ったので、ひとまずダンジョンを出て外を見るとすでに深夜と思われる時間で日は変わってそうだった。

ダンジョンに入って8時間以上は経過していることになるか。


酒場はまだ開いているようで、喧騒がここまで聞こえてくる。

だが、あの中に入っていくには少々気持ちがささくれ立っている。


影からは中途半端な情報しか得られず、良いところで邪魔が入った為だ。


まず、問題は邪魔をしたのは誰かということだ。

影には触れることが出来ないはずだが、簡単に息の根を止めたように見えた。

少なくともあんな大技を使わないと干渉できない俺よりも強力な存在だろう。

相手がやる気だったなら、俺もあの場で殺されていたかもしれない。



影が神と呼んでいた、渋い声のおっさんがやったとは思えない。

おっさん、いや神と呼んだ方がいいか。神はなんにでも質問には答えてくれていた。

おそらくあの場で資質について聞いていたら答えてくれたと思う。



まだ俺の知らない何者かがいて、俺に情報を与えたくないということになるのか。

しかもそいつには俺の行動は筒抜けのようだ。あのタイミングで干渉してくるということは、常時監視されている可能性もある。


だがそうすると今この時点でも監視されているはずなのだが、その様な気配は全く感じない。

俺に気が付かせないほどの監視ならば、手の打ちようがない。


他に考えられるとしたら影のいた場所から何者かが監視している可能性か。

こちらからは物理的に手出しできない場所、意図的にこちらからは姿が見えなく出来るとしたら、

気づくことは不可能だろう。


だが、そんな場所から常時俺を監視してるストーカーがいるとも思えない。

影が俺にやられた事に気が付いてあの場にやってきたという方が納得がいく。


しかし結局、誰が何の目的でという肝心なところにはたどり着けそうもない。


俺は思考の迷宮から抜け出せずイライラする。

こんな精神状態では碌なことはしそうにないと思い、一旦娼館に帰ることに決めた。


佳い女と美味い酒肴で気分転換が必要だ。

おれは深夜の闇の中、シュヴァルツヴァルトに向けて駆けだした。



2時間もかからず町に戻ってきたが、当然門は締まっており門番の姿もない。

壁を飛び越えるのは簡単だが見つかると面倒なことになる。


門のところまで行き門番の待機所のあたりで声をかけてみると、寝ぼけ眼の門番が出てきてくれた。

登録証を見せ、こんな時間に起こしたことを詫びだと銀貨数枚握らせると通用門から町に入れてくれた。


門番に礼を言うと、そのまま娼館に向かう。

さすがに深夜も過ぎ明け方が近い時間なので、人通りもなく一部の店はもう閉店している。

だが、ヒルデガルドはまだ開いているようだった。


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