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美酒佳肴  作者: 乙賛


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第32話 理不尽って誉め言葉じゃないよね

その後オークの上位種の肉をあてに、チェスターと女の子たちで大いに飲んで食った。


「いやあ、ごちそうさまでした。まさかこんなに上位種が食べれるなんて思わなかったですよ」

「喜んでもらえたならそれでいいさ、次は美味い酒と肴を期待してる」

「おまけで情報もですよね」

「ああ、おまけだな」

「ははは、貴方には敵いそうもありませんよ。情報は喉から手が出るほど欲しがる者ばかりですからね

 希少な情報なら金に糸目をつけないのが普通なんですよ?」

「3国の立ち位置を見れば大体何を仕掛けるかは想像が付くだろう?」

「いえいえ、そんなことが出来るのは貴方か大賢者くらいでしょう」

「大賢者がいるのか?」

「ええ、王国にいるはずですよ。確かかなり高齢だったはずですが亡くなられたとは聞いていませんから」

「ふぅん、あんまり年寄りだと一緒に酒を飲むって訳にはいかんか」

「貴方にかかると大賢者も飲み友達の様ですね、それではそろそろ失礼させていただきます」

「ああ、気を付けてな」

店の入り口まで見送ると、チェスターは結構飲んだにもかかわらず、足取りもしっかりしたまま店を後にした。



「なにか難しいお話でしたわね、キョウスケ様って何者なんですの?」

席に戻ると奇麗に片づけられていて、ヒルダが酒の用意をして待っていてくれた。


「そんな大した話はしてないぞ?美味い酒と肴が手に入るように適当に話しただけだ」

「ふふっ、そういうことにしておくわ」

「そういや奴と話していて気になったんだが、ひとつ聞いてもいいか?」

「ええ、私で分かることなら」

「たいしたことじゃない、この世界に宗教はあるのか?」

「宗教というと神様にお祈りをするのよね?王国ではそれ程主流ではないけど帝国にもあるし、共和国は国教があったはずよ」

「なるほどな…ありがとう参考になった」

「こんなのでよかったの?ふふふ、変な人」


そのあとは取り留めのない話をし、途中からアデーレも交じりいつも通りの時間を過ごした。





「想像以上の奴だったよ、力だけの奴という想定で話を持って行ったのがそもそもの失敗だ。

 うちの情報部の奴らより下手をすると頭が切れる、理不尽とはあんな奴のことを言うんだろうな」

チェスターは娼館を出て少し先に止めてあった馬車に乗り込むと、ついさっきのキョウスケとの会話を思い返した。

馬車は4人掛けで、チェスターの他にもう一人女がはす向かいに座っている。

女の名はグローリア、チェスターの首席秘書官である。


「チェスター様がそこまで言うとは、それ程の男だったのですか?」

「ああ、おそらくこちらの動きどころか目的にまで薄々とだが気が付いているだろう」

「まさか?情報部の事前調査では彼は転移者で現在冒険者Cランク、同時期に転移してきた自称勇者立ちの能力が非常に低かったことから同レベル程度の実力

 娼館に入り浸っているため、直接の接触はできませんでしたが、オークキング討伐をしたとのことでその能力は上方修正しています。

 ただ転移者ですのでこちらの情勢には疎いと想定されていたはずです。」


「そのあたりは何とも言えんが、少し話しただけでこちらは丸裸にされた気分だよ。それも鎌をかけるのではなく事実の確認といった風に来られるので、

 誤魔化しがほとんど効かないんだ。どうやってその事実に至ったかがこちらで把握できないから迂闊なことを言えば、騙そうとしていると取られるか、余計な情報を与えるかになりかねない。

 本国で司祭連中と遣り合っている方が遥かに気が楽だよ」


「そこまでですか…面倒な相手になりそうですので、早期に消してしまいましょうか?」

「そう簡単にいくかな?オークキングを単独討伐するような相手だぞ、しかもそれ以外にも上位種を同時期に複数体倒しているようだ。

 単純な戦闘能力ならば、こちらの駒よりもはるかに高いことになるぞ。それに戦闘手段についての情報がない」


「そちらについては、追加情報がありました。先日ギルド内でBランクの冒険者2名と昇格試験を行ったらしく、その時の情報を入手する頃が出来ました。

 まず最初に剣士との対戦、一撃で相手の腕を切り落とし勝利しています。その際相手をした剣士は彼の動きが見えていないようだったと居合わせた冒険者が言っていたそうです。

 次に魔法ですが、戦闘形式ではなく目標破壊の形式で試験が行われたそうです。最初は盾、おそらく訓練用のものでそれ程高性能なものではなかったと思います。

 こちらを彼は詠唱も無しに塵に変えたそうです」

「ちょっと待て、塵に変えたとはどういうことだ?詠唱無しで魔法は使えるものなのか?」

「その点に関して試験担当の冒険者が試験後にしつこく彼に問い詰めたようですが、一切の情報は得られていないようです。さらにその冒険者はギルマスから彼への接触禁止を言い渡されています。」

「魔法に関しては未知数ということになるのか」


「はい、続けますと試験担当は盾を塵に変えた後の目標をアストラルストーンにして実施させています。」

「おいっ!アストラルストーンってあのアストラルストーンか?」

「どのアストラルストーンかはわかりませんが、一切の物理接触を無効にする利用用途のない未解明の物質のアストラルストーンです」

「…続けろ…」

「はい、結果からお伝えしますとアストラルストーンを真っ二つに割ったそうです。」

「はっ?アストラルストーンを割ったと言ったのか?物理無効どころか触れることすらできないんだぞ、一体どうやったんだ?」

「こちらも先ほどと同じで情報は得られていません。状況としてはアストラルストーンを囲むように何かが展開され、室温が急上昇した後、囲んでいた何かが消えたときにはアストラルストーンは真っ二つになっていたということです。」

「彼が何かをしたのは間違いなさそうだが、何をしたのかそれだけではさっぱわからないな。その囲ったのは見せない為なのか別の意味があるのか?室温が上がったのはなぜか?

 どれ一つとっても理解不能で結果のみは明らかなんだな…」


「ええ、こちらでも情報をもとに考察させましたが、説明できそうなものは何一つ挙げる事が出来ませんでした。」

「まあ、専門家でもわからないなら私が考えても答えは出ないだろう。

 わかったことは、Bランクを軽くあしらうだけの剣を使い、理解不能な魔法を無詠唱で使いこなすということか…

 こんな相手に対して手を出すリスクと、暗殺に成功する確率とからどう判断する?」

「暗殺は控えるべきと判断します。剣はともかく魔法については我々の使うものとは異質なものです、

 どのような攻撃や防御の手段を有しているのか検討すらできない相手に対しての暗殺は、成功率が算出できません。

 さらにチェスター様が直接話した結果、相当頭も切れる方の様です。暗殺の失敗から此方まで辿られることも考慮しておく必要があり、反撃を受けた際の被害も想定できません。

 最悪の想定では、暗殺に失敗した後に共和国へ反撃を行われる、その際の標的により被害規模が変わるといったところでしょうか?」


「それだけだとまだ甘いと思うよ、おそらく彼のことだ共和国の裏にいるモノまでを反撃の対象とするだろう」

「まさかっ、それは一般には秘匿されている情報ですし、全て把握しているものも一握りの人数のはずです。私でもチェスター様から伺った程度しか把握できていません。

 この様な状況から、たどり着けるとは思えません」

「彼に直接会って話していないとそう思うのも仕方がないか。彼は会話を始めて数分で私が共和国の人間と見抜いたんだよ、私は商人として挨拶したんだけどね

 つまり我々が思う以上の洞察力を持つと考えておく必要があるということだよ」

「理不尽ですね、力もあって頭もそこまで切れるなんて…」

「だから最初に言ったろ」


馬車は暗い雰囲気に包まれるが、急にチェスターは明るく話し出す。


「でも、彼とは知己を得れそうな感じがするんだ、それに共和国に敵対するような行動はしないと約束もしてくれた。

 代わりに要求したのがなんだと思う?美味い酒と肴だよ、おまけで情報が欲しいとも言っていたけどね」

「それを先に言ってくださいっ!説得に失敗したのかと思ったじゃないですかっ!

 なんですかっ?その内容はっ、ほぼ最初の予定は達成しているじゃないですかっ!」

「ははは、ごめんごめん。

 でも、彼が非常に厄介な駒であるとこ間違いないよ。ひょっとしたら駒扱いされているのは我々の方かもしれないと考えるくらいにはね」

「そうですね、失礼しました。確かに先ほどの話が無ければ彼の重大性についての認識が甘いままだったと思います」


「なので継続して彼の監視を頼みたい、ただし彼に気が付かれないことを最優先で、それによって情報が入手できなくても仕方がない」

「了解しました、すぐに手配いたします」

グローリアは、チェスターが失敗しなかったことと、自身のやるべきことが明確になったことに安心したように笑みを浮かべた。


その笑顔を見ながらチェスターは思い返す。

彼は「共和国」の「邪魔をしない」と言った、つまり共和国として動いている間は味方はしないが邪魔もしない、ということだ。

だがその先で共和国ではなく、チェスターの属する組織が前面に出た場合はその限りではないともいえる。


これから先しばらくは、彼の動向からは目が離せないなとチェスターは、少しワクワクしながら考えていた。


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