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美酒佳肴  作者: 乙賛


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第31話 干物は炙ると美味いよね

「お楽しみのところお邪魔して申し訳ありません。

 私はチェスターと申す商人でございます。先日は非常に珍しいものをご相伴にあずかり誠にありがとうございました。」

「丁寧なあいさつをありがとう、俺はキョウスケ、見ての通り遊び人みたいなもんだ」

「ふふふ、オークキングをほぼ無傷で討伐される方が、只の遊び人ですか。シュヴァルツヴァルトは恐ろしいところの様ですね」


「まどろっこしい挨拶は抜きだ、用件を聞こうか?」

「たいした用事ではないのです、先日のお礼が申しあげたかったのと、知己を得たいと思いましてね」


「初対面の人間に知己を得たいって、ずいぶん自信があるんだな」

「商人としてはまだまだですが、それなりのものは提供できると思いますよ」

「なるほど、知己というより利害関係という訳か」

「出来れば知己を得たいというのは本心ですよ」

「で、その商人さんは俺が何を欲しがっていると思うんだい」

「情報ですね、特に最近きな臭いとお思いでしょうからそのあたりの情報がお望みかと」

「なんで俺がきな臭いと思ってると考えたんだ?」


「オークキングを討伐されたでしょう?通常ならこの辺りにキングレベルの上位種は現れることはありません。

 それにもし現れたたとしたら、もっと町は大騒ぎになっているでしょう。

 つまり、貴方はオークキングを自身で発見して討伐された、しかもその情報は冒険者ギルドまででそれ以上は秘匿されている。

 ギルドが秘匿する理由はオークキングが通常の上位種への昇格で生まれたものではなく、人為的に放たれた可能性があるためでしょう。


 そして人為的なものとしたら目的はおそらくこの町の壊滅か王国の混乱でしょう、それでこの町以外でも同様な状況があるのではないかと、あれから少し調べてみたんですよ。


 予想通り冒険者ギルドの動きが明らかに通常と違っていましたね、普段は行っていない哨戒任務を行っていたり、

 他にも、通常は発生しない魔物が現れたという情報も入手できました。」


「なるほど、それをこれだけの期間で調べたってことか、勤勉なんだなお前は」

「それはオークキングを単独討伐できるような方の知己を得るためですからね」


「で、俺が喜びそうな情報ってのは何だ?」

「帝国の情報などいかがでしょう?」


「なぜ帝国なんだ?」

「オークキングを使って混乱を生むことで利益を得る国だからですよ」


「帝国は南下政策を諦めて内政に力を入れているんじゃないのか?」

「一般にはそのように宣伝されていますね、皇帝も実際内政に力を入れています。

 しかし南下政策で旨味を得ていた輩は、そろそろ限界を迎えて火種を撒き始めているようです」


「つまり、皇帝の意志ではなく一部の死の商人たちが暗躍し始めたということか」

「ええ、しかし商人たちだけではなく一部の軍の上層部も商人たちに抱き込まれているようですね」


「王都周辺の件はそいつらの暴走の結果ということか」

「おそらくは」


「で、その情報を俺に伝えてお前に何の得がある?」

「貴方と知己を得たいと始めにお伝えしたと思いますが」


「質問が悪かったかな別の聞き方をしよう、俺に何をさせたい?

 子供じゃないんだ、お友達が増えて喜ぶような年でもあるまい、オークキングを倒せるレベルの人間を何に使おうとしている?

 お前ら共和国は何を狙っているんだ」

「ふっ、怖い人ですね。これだけの会話でそこまで洞察されますか」


「俺を駒にしたいなら手の内を明かすんだな、そのうえで見合うだけの利益を提示しろ」

「転移者とはそこまで切れるものなんですね、わかりました貴方を敵に回すのは悪手だと理解しました」


「俺が転移者というのは別に隠しているわけじゃない、同郷の馬鹿が言いふらしてくれたからな

 だが奴らはただの馬鹿だと思うぞ、転移者として一括りにされるのは気分が悪い」

「それは失礼しました、王都に向かった連中はそんな奴らなんですね。今は公爵の庇護のもと厳しい訓練を受けているようですよ」


「転移者は成長に補正がかかっているらしいからな、公爵はそこに目を付けたんだろう」

「つまり貴方も成長に補正がかかっているということですね」


「ちっ、いちいち嫌らしい奴だな。まあ目立ってろくでもない面倒ごとに巻き込まれたくないから公けにはしていないがな」


「では、改めて自己紹介させていただきます。私はチェスター、カレリア共和国の議員で共和国の未来を憂うものです。」


「やはり共和国の人間か、経済では他国と並ぶことが出来ても軍事力がはるかに及ばないんで何とかしたいってところか?」

「ええその通りです、もう貴方には驚くのは諦めましたよ。そこまでお分かりなら私の目的も想像されているのでしょう」


「大体のところはな。王国と帝国を争わせて疲弊させて、その隙に共和国を強化させたいってところだろ?」

「やはり怖い方だ、共和国の議員の大半の認識はその通りです。ですがこれは当然表には出ていないはずなんですがね」


「勢力が3つあれば漁夫の利を狙うのはよくある話だろ?しかもそれが最弱の国なら当然の戦略だ

 で、俺には王国の味方をせず、このまま娼館で過ごしていてほしいってところか?」

「ええ、話が早くて助かります。もちろんただとは言いません、金貨50枚でいかがでしょうか?」


「安く見られたもんだな、そんなはした金で俺が動くと思われているなら、逆に王国の味方をしようと思ってしまうな

 正確に見積もったことはないが金貨なら数千枚相当はするものも持っている、たかだか50枚で誰かの下に着くなんて思ってるのなら出直してこい」


「数千枚ですか…とんでもない方ですね…わかました。では金銭ではなく物ならいかがでしょう?

 例えば幻といわれ皇帝でも簡単には手に入れることが出来ない酒や、各地の珍味などを定期的に提供させていただきます。

 他にも言っていただければ可能な限り用意させていただきましょう。」


「最初からそっちの条件を提示していたら、すぐに乗ってやったんだがな。

 はした金で俺を動かそうとして結局高くつくことになるんだ。追加で情報を提供しろ、3国に関する情報なら何でもいい、酒を持ってくるときに一緒に持ってくるようにしろ」

「なるほど、これは高くついてしまいましたね。しかし私のミスですのでその条件も飲みましょう」


「よし、契約成立だな。俺は共和国の思惑を邪魔しない、代わりに酒と珍味、情報を提供してもらう。当然関係は対等なものだ。

 あと、俺の知らないところで勝手に動いて、邪魔することになっても知らんぞ、そのための情報共有だからな」

「ええ、もちろんです。こちらの戦略についても情報と合わせて共有させていただきますよ」


「じゃあ話は終わりだな、ヒルダ、上等な酒を用意してくれるか、それとキングじゃなかったが上位種の残りがあったろ?そいつも出してくれ」

「はい、かしこまりましたわ」

ヒルダが席を離れ、チェスターと二人になりかけるがすぐに別の女の子たちが駆けつけてくる。


「キョウスケ様、上位種を出してもらえるってホント?」

「おいおい、お客さんがいるんだ、もうちょっと言い方があるだろ」

「えへへ、ごめんなさい。前に頂いたオークキングを食べてから夢にまで見るようになっちゃたの」

「ふふふ、皆さん仲がよろしいのですね」

「まあ、半月も居続ければな」

「ねえねえ、私たちも一緒に食べさせてもらってもいい?」

「構わんが、ただ黙々と食べるだけなのは許さんぞ、食べたいのならきっちり仕事をしろ」

「「はーい!」」席に来た女の子たちが声をそろえる。


「お待たせしました、お肉はもう少ししたらお持ちしますわ」

ヒルダが新しい酒を持って戻ってきて席にいる女の子を見渡す。

「あなたたちいつの間に集まってるの?まさかお肉が目当てじゃないでしょうね」


「「・・・」」女の子たちはいっせいに目をそらす。


「ははは、貴方と居ると退屈しなさそうですね」

「ああ、おかげさまで毎日楽しく暮らしているよ

 じゃあ、契約成立を祝って乾杯といこう」

チェスターと酒を交わす。


「お前のことだから、何か良い肴でも隠し持ってるんだろ」

「かないませんね、内陸部では珍しい海産物はいかがです?といっても干物になりますが」

「是非頼む」

チェスターは鞄から油紙で包んだ物を取り出す、中は魚の干物のようだ。


「マジックバックか?肴を入れるには最高だな」

「いやいや、さすがに酒の肴のためにマジックバックは買いませんよ」

「そうか?俺なら酒と肴で一杯にしていると思うがな」

俺はさっそく干物を魔法で炙りながら話しかける。


「えぇっ!何をしているんです?干物を炙っているのは魔法ですかっ?」

チェスターは最初のころの女の子たちと同様に、俺の魔法の使い方に眼を剥く。


「ああ魔法だよ、干物は炙った方が美味いだろ?」

「いやそういう話ではなくてですね…もういいです、貴方に普通を求めた私が悪かったんです」


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