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美酒佳肴  作者: 乙賛
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第22話 厄介ごとってワクワクするよね

結局あの後、アデーレと個室に湿気込むことになり朝まで寝られなかった。


「おはようございます、キョウスケ様」

身だしなみを整えアデーレに腕を取られながら、ラウンジへ降りていくとヒルダに声をかけられた。


「ゆっくりお休みには…なれなかったようですね、ふふふ」

「キョウスケ様って、すっごいんだから。ねぇ」

女同士の会話は聞かなかったことにし、あたりを見渡すと俺と同様な男たちがラウンジで朝食をとっている姿が目に入る。


「おはよう、ヒルダ。朝はここで食べれるのか?」

「軽いものならご用意できますわ、少しお待ちくださいね」

アデーレも席までついてきて、結局かいがいしく朝食の世話をされたのだった。


「じゃあ、また寄らせてもらうよ」

「お待ち申し上げておりますわ」

「キョウスケ様、また呼んでくださいね」

美女二人に見送られ娼館を後にする。とりあえず宿に戻ってひと眠りだな。



結局目が覚めたのは夕方ごろだ、ダメ人間の生活リズムになってるな。

娼館に通うのも悪くはないが、毎日だと宿に戻るのがめんどくさいな。


宿で軽め夕食をもらうと、町をぶらつくことにした。


この町もほとんど知らないからな、何か面白いものはないかと適当に賑やかそうなところをぶらぶらと回る。


武器や防具は、ギルドにいた冒険者たちが持っていたものと大して変わらず、それ程良い材質には見えないが丈夫ではありそうな剣や、何の皮かわからないがごつい皮鎧、

所々に金属の板を当てたような皮鎧の上位版か?などが一般的なもののようだ。

俺は装備は買う気はなかったので、単なる冷やかしで彼方此方の店を覘いたがどこも代り映えはしなかった。


雑貨屋は皿やコップ、カトラリーといった食器類、後は水筒や鞄といった明らかに対象を冒険者に絞ったような店だった。

泊りで依頼を受ければこういったものが必要になるのかと、ちょと欲しいかもと思ったが保管庫があれば特に必要ないかと思い返す。

食事は弁当のようなものや、屋台で売っている立ち食いできるようなものを買い込んでおけば食器は不要だし、水は魔法で出せばよい。


そういえば、魔法で出した水って飲めるのか?

純水は毒だったはずだが、飲料水をイメージすれば大丈夫なのかな?

この辺りは確認しておく必要があるな。

俺のことだから水を出すぐらいならビールでも出すだろうから、急いで確認する必要もないのか。


食料確保のため、店を回るが遅い時間なのでほとんどの店が店仕舞いをしている。

売れ残りなどはないかとぶらぶらするが、店仕舞いのためか埃が舞う中に残った商品はちょっと遠慮したいとあきらめることにした。

まあ、急ぎではないので見かけたら買い貯めるようにすれば問題ないか。


結局何も買うことのないまま、宿にそろそろ戻ろうと人通りの少ない住宅街を歩いていたときだ。


「こちらの作業はすべて完了しました」

「ご苦労、後は放っておけば魔物が溢れて混乱を巻き起こしてくれるだろう」

「はっ、魔物を誘導するための餌も設置済みです。」

「よろしい、我々は早々に退散するとしよう」

どう解釈しても、悪意以外の何物でもない会話が裏通りから聞こえてきた。

しかし、人影は見えないので距離はそれなりに離れているはずだ。


そうか、これが身体強化の恩恵という訳か。


声の聞こえた方にそっと忍び歩いていくと、服装こそ一般庶民の格好だがその纏う雰囲気がどう見ても堅気ではない男2人を見つけた。

裏路地の建物の陰に隠れるようにして2人は話し込んでいる。


俺は2人の背後から見つからないように鑑定を仕掛ける。


ちっ、厄介なことになっているようだ。

2人は帝国の軍人で特殊工作部隊の上官と下士官だった。


このまま放っておけば、男たちの仕掛けた作戦通りこの町は魔物に襲われるということになる。

特にこの町に義理立てする必要はないが、こんな奴らのせいで町を移動するのも癪に障る。


この世界では好きにすると決めたんだ、気に入らない奴を見逃す必要はない。


こんなところで暴れると面倒なので、奴らには眠ってもらうことにするかと、吸入麻酔薬をイメージする。


数秒で男たちはふらつき崩れ落ちるように地面に横たわった。



こんな処で話していたということは、近くに隠れ家があるのではと付近の気配を探る。

身体強化のおかげか、気配を察知する能力も驚くほど向上している。

男たちの居たすぐ横の住宅から、こいつらと似たような雰囲気を察知する。


その住宅の裏の勝手口らしき戸に耳を近づけ中の様子を探る。

「隊長たちえらく遅いな、何か問題でもあったのか?」

「いや、作戦は問題なく完了しているはずだぞ」

「こんなつまらん町からは、とっととおさらばして帝都に戻りてぇよな」


当たりのようだ、騒がれると面倒なので2人と同じように眠ってもらうことにする。


住宅の中に吸入麻酔薬を充満させると、どさどさと人の倒れるような音が聞こえてきた。

続けて換気をイメージし吸入麻酔薬を除去した後、足元で倒れている二人の襟元をつかみ勝手口から住宅に運び入れる。


さあ、これからどうするかだな。

衛兵に突き出してもいいが、それではおそらくこいつらの作戦は成功してしまうだろう。

取り調べか拷問かで時間を使っている間に魔物がやってきて、こいつらが巻き込まれる以外は作戦通りの結果となる可能性は高い。


魔物に関しては俺自身の身位は守れると楽観視しているが、娼館に被害があると美味い酒が飲めなくなって結局町を移動する必要があるかもしれない。

それに何が目的かは知っておく必要があるので、こいつらから情報を引き出すとしようか。



まずは、騒がれても問題ないように建物に防音効果を持たせる。そのあとロープを創造してこいつらを縛り上げた。

ほんとに魔法って便利なものだと改めて思う。


映画で見たような奥歯に毒を仕込むといったことも無かったので、舌をかみ切られないようにロープを噛ませておく。


さあ、取り調べの時間だ。

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