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美酒佳肴  作者: 乙賛
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第10話 ゆうしゃギルドに立つ

「ようこそ冒険者ギルドへ、新人登録ですか?」

正面のカウンターにいた美人さんが、4人に対して営業スマイルで声をかける。


「おぉ、やっぱ受け付けはきれいなねぇちゃんなんだな」

「勇者パーティーに対して、新人扱いはどうかと思うけどねぇ」

「勇者といえど、この世界では新人なのは間違いないか。奇麗な女性には優しくしないとな」

「あっ、横でご飯が食べれそうだぁ」


「新人登録なら、こちらの書類に記入いただけますか、代筆が必要ならこちらで記入することもできます」

美人さんは4人の発言を何事もなかったようにスルーし、事務的に話を進めていく。


「俺たちは勇者パーティーだぜ、最高ランクで登録してくれや」

頭の悪い発言を恥ずかしげもなく堂々とする。


「規則ですので、新人の方は最低ランクから始めていただくことになります」

「いや、だから俺たちは勇者パーティーだっての!それなりの待遇は当たり前っしょ」


「規則ですので、そういった特別待遇は致しかねます」

「ちょっと奇麗だからって、調子乗ってるんじゃないわよ。あたしたちは異世界からの転移者よ!」


「どういった事情があるかわかりませんが新人は最低ランクからのスタートという規則ですので」

「わかりにくかったかな?俺たちは異世界から来た勇者パーティーなんだ。それを最低ランクからなんて、後であなたが叱られることになるよ」


「異世界とか勇者とか言われても規則は規則ですので」

「めんどくさいなぁ、何でもいいから最高ランクで登録をとっとと終わらせてよ、お腹がすいて仕方がないのよ」


受付の美人の言うことなどろくに聞きもせず、好き勝手言う4人。


「おい、何をもめているんだ」

カウンターの奥から渋めのおっさんが、騒いでいる4人のもとに向かってくる。


「俺たちは勇者パーティーだってのに、このねぇちゃんが最低ランクで登録とかふざけたこと言ってるんだよ!」

「お前たちは勇者なのか?それをどう証明できるんだ?」

渋めのおっさんは騒動を起こすものに慣れているのか冷静に聞き返す。


「そんなの異世界から転移してきたイケメンのいるパーティーなんだから、勇者パーティーに決まってるでしょっ!」

「お前らは転移者なのか?」

そういって4人の格好を上から下までじっくり眺める渋めのおっさん。


「おい、女性をそんな目で見るとは失礼ではないか」

「うわぁ、まじきもい…」


「なるほど、その服装は異世界のものらしいが勇者ってのは誰から聞いたんだ?ステータスにでも書いてるのか?」

渋めのおっさんは転移者であることは認めたが、勇者のところで引っかかっているようだ。


「だぁかぁらぁ、異世界から転移したパーティーは普通勇者だろっ!」

「いや、そんなルールは聞いたことがないし、お前たちが勇者であるようにも見えない」


「ちょ、ふざけないでよ。どこから見てもあたしたちは勇者パーティーでしょっ!」

「どこから見ても、常識のない若者といったところか?」


「勇者に対してその口の利き方はどうかと思うが」

「いやだから勇者であることを証明できるのかって聞いているんだよ、俺の言っていることが理解できているのかお前たちは」


「面倒、どうでもいいから最高ランクにしておいしいものを提供して、豪華な屋敷も用意して頂戴」


会話のデッドボールが続き、周りにいた冒険者たちも興味をもって4人の周りに集まり始める。

「あいつら勇者なのか?」

「いやぁ、世間を知らないクソガキにしか見えないがなぁ」

「異世界ってあんなのしかいないのか、同情するわぁ」

「勇者ってことはとんでもなく強いんだろ、だったら訓練場で見せてもらえばいいんじゃねぇのか?」


冒険者たちも自称勇者たちにからかい半分で興味を持ったようだ。


「この底辺職どもが、俺たちになんて口をききやがるんだっ!」

「もう勇者の力で全員ぶっ飛ばしてもいいんじゃない」

「そうだな、一度勇者の力を見せておくべきかもしれないな」

「お腹すいたから、ぶっ飛ばすのは任せたぁ」

どこからその自信が出てくるのかわからないが4人は自信満々に冒険者に答える。


「・・・もういい。お前らそんなに自信があるなら訓練場に顔を出せ。自慢の腕を見せてもらおう」


「こいつらぶっ飛ばせば、最高ランクにしてくれるってことだなっ!」

「ふふふ、魔法でぶっ殺しても事故よねぇ」

「勇者として、守るべき民間人に手を出したくはないが仕方が無いな」

「めんどくさぁ…」


渋めのおっさんは4人を引き連れてギルドの建物の裏手に向かう。当然のように冒険者たちもそのあとに続く。


「ここが訓練場だ、勇者様の使う攻撃に耐えられるかは知らないが思う存分力を見せてくれ」

「ぶっ壊しても請求とかなしだぜ」

「ああ、かまわんよぶっ壊せるものならな」


「誰かこいつらの相手をしてくれる奴はいないか?」

渋めのおっさんは冒険者に向かって声をかける。


「私が行こう」

冒険者たちの奥から、シンプルだが性能は良さそうな装備の男が訓練場に向かって歩き出す。


「おぉ、ルッツさんが出るのか!」

「あいつら終わったな」

「4人がかりでも1分持たないんじゃないか」

どうやらルッツと言われた男は冒険者の中でも上位に位置するようだ。


「へ、一人で俺たちの相手をしようってのか?」

「弱い者いじめみたいで、やだなぁ」

「勇者として一人に対して全員でかかるのは対面に関わる」

「なんでもいいから早く終わらせてよぉ」

「ちょっとホノカ!あんたさっきからやる気なさすぎでしょ!」

「えぇ、だってめんどくさいじゃん」


「私の準備はできている、いつでも構わないし4人同時でも構わない、かかってきなさい」

ルッツは4人を挑発する。


「へ、かっこつけてると痛い目に合うぜ」


渋めのおっさんが奥から4本の訓練用の剣を持ってきて4人に渡す。

「訓練場での怪我は自己責任だ、たとえ命を落としても文句を言うことはできない。そのルールで問題ないなら始めるがいい」


「転移した日に人殺しとか、テンション上がるねぇ」

「まあ、自分で名乗り出たんだし殺されても文句はないっしょ」

「お前ら、弱者に対しては手加減してやらねば勇者の名がすたるぞ」

「剣とか重たいしシンちゃんとっとと終わらせちゃってよ」


ルッツは、4人の構えを見て明らかに初心者以下だと理解するが転移者であるとギルマスが認めたことから油断はしていない。

渋めのおっさんはギルマスだったようで、冒険者からの信頼も厚くまた畏怖される存在のようだ。


「よし、始めっ!」

ギルマスの声が訓練場に響く


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