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アニメイト歩いてそう

今回は習作のつもりで、昔話のパロディ小説を書きました。

面白かったか、つまらなかったか、また、文章は読みやすかったか、

おかしな部分はなかったか、など教えていただけたら嬉しいです。

よろしくお願いします。

昔むかし、あるところに、いつまで経っても子供の出来ない老夫婦がおりました。おじいさんは常におばあさんに「この石女(うまずめ、子供を産めない女性を罵倒する言葉)」と罵り、おばあさんは「黙れ種無しインポ野郎」と罵り返すという、殺伐とした日々を送っておりました。そんなある日、おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯へ行きました。お互い、子供がいれば手伝ってもらえるのに、と思っているのは一緒でした。おばあさんが川でおじいさんの小汚いふんどしを、手は嫌なので足で踏んでいると、どんぶらこ、どんぶらこ、と大きな桃が流れてきます。しめた、とおばあさんはすぐに手に取り、皮をはいでむしゃむしゃと食べます。甘い、おいしい、この桃はじいさんには絶対にあげない、と一人で全部食べてしまいました。

さて、洗濯も終わったし帰るか、と家路を歩いていると、大きな木の根元に、泣いている赤ん坊がいるではありませんか。おばあさんの両目が光りました。捨て子ゲットォオオォォと即座に抱きあげました。そして、家に帰って土間に寝かせた後考えました。いくら捨て子でも、拾ってきたというのはちょっとまずいか。よし、桃から生まれたことにするか。帰ってきたおじいさんは、桃から生まれた赤ん坊を持って帰ってきた、というおばあさんの話を聞いて、そんな馬鹿な、ついに耄碌もうろくしたのか、と思いましたが、おばあさんの意味ありげな表情を見て、

「なんと! 桃から生まれたのか! なら誰も親権を名乗ることは出来ないな!!」

 とわざとバカでかい声で叫び、次の日から率先して村中に桃から生まれた子供を拾ったと言いふらすのでした。


 桃太郎はすくすくと育ちました。それもそのはず、元気で健康であってもらわないと、将来的なニーズに応えられないわけで、幼少期は手塩にかけて育てられました。が、7歳になったある日。氷のような眼をしたおばあさんが、

「今日からはしっかり働いてもらうよ」

 と、言ったかと思うと、庭に引っ張り出して、大きな斧を持たせ、薪を割らせるのです。その姿は、レ・ミゼラブルに出てくる少女コゼットのようでした。体に似合わない大きなホウキ、ではなく斧。

「お母さん、重いよ」

 と言ったとたん、火の出るようなビンタが飛んできます。

「ふざけるんじゃないよ。誰に今日まで飯を食わせてもらってたんだい」

 仕方なく桃太郎は重たい斧を必死に振り回すのでした。

 ある日はおじいさんとともに狩りに出かけました。山へ入ると、ウサギがいました。

「あれを捕まえてこい。捕まえるまで戻ってくるな」

 桃太郎は必死に追いかけましたが、逃げ足の速いウサギはさっさと逃げてしまいました。すごすごと戻ってくる桃太郎のお尻を、おじいさんは猟銃で引っぱたきました。

「誰が戻ってきていいと言った。いかんか」

 桃太郎は泣きながら、日が暮れるまで山の中でウサギを探し求めるのでした。


 それから、またたく間に八年が経ちました。十五歳になった桃太郎はどうなったのでしょうか。村の茶屋に、一人のたくましい大柄な若者がいます。虎の皮を身に着け、腰には大小の日本刀を差し、ザンバラ髪を後ろで結い、口にはパイプをくわえ、ドッカーッと長椅子に一人で座り、斜に構え道行く人を威嚇しています。

「桃太郎様、持ってきました」

 気弱そうな若い男の子が、何枚かの銭を差し出しました。桃太郎は当たり前のような顔をして受け取った後、腹に蹴りを入れて追い払いました。そして、

「おいオヤジ。キビダンゴ持ってこいや。はよせぇアホンダラ」

 と大音声で怒鳴ると、また道行く村人にガンを飛ばすのでした。店のオヤジが震えながらキビダンゴを持ってくると、たちまち平らげ、

「キビダンゴだけはうちのババアが作ったもののほうがうまいな。あの死にぞこない」

 などと言いながら渋茶をすすっていると、離れたところにいる旅人の会話が聞こえてきました。

「鬼ヶ島の鬼退治の賞金、ついに五百貫(現代でおよそ5千万円)を突破したぞ」

「おったまげたな。まあ、人をさらってばっかりで、幕府も手に負えないものな」

 桃太郎、この話を聞いて、唇を歪めてにやりと笑いました。その五百貫をいただいて、ハーレムでも作るか。決めたが早いか、桃太郎は家に戻り、おばあさんに

「今すぐキビダンゴを三日分ほど作れ。今すぐだ」

 と命令しました。桃太郎が怖くて仕方ないおばあさんは、大急ぎでこしらえました。一時間後、できあがったキビダンゴを袋に詰める桃太郎。おばあさんは恐る恐るたずねました。

「桃太郎様、どこへ行くのですか」

「鬼退治。鬼ヶ島まで行ってくる」

 いうなり桃太郎は風のような速さで掛けていきました。おじいさんとおばあさんは、鬼に殺されてしまえ、クソ野郎、と出口のほうへ中指を立てて罵るのでした。


 桃太郎は鬼ヶ島への道をずんずん歩きながら、よく考えたら鬼って一人とか二人とかじゃないよな。いっぱいいるんだったら勝てないかも、などと思っていると、前方から大きな犬がやってきます。桃太郎の目の前まで来ると、

「おめぇ、一人で行くのは危ないぜ」

 と言うので、桃太郎は、

「い、犬がしゃべった!」

 とびっくり仰天しましたが、犬はフッと目を閉じて笑いながら

「そんな事より大事なことは、俺が鬼退治に協力してやってもいいということだ」

「お前が? 何故だ?」

「俺の恋人は鬼に金棒で無意味に殴られて死んだ。許せると思うか?」

 犬の目は烈火に燃えているようです。桃太郎は「使える」と踏んで、即仲間にしたのでした。

 さらに歩くと、山に入っていきます。と、一本の木の上から、一匹の猿が下りてきました。

「俺を置いていくなんて道理はないだろう」

「さ、猿がしゃべった!」

「今さら何を驚いている。鬼のクソ野郎どもは、俺たちの住み家を襲撃し、一族に代々伝わる秘宝『酔虎笛』を盗んでいきやがったんだ。……生き残ったのは俺一人だけ」

 と言うと、猿は大きな声でウワアー、アーと泣きだしました。桃太郎は猿を強く抱きしめ、仲間にしてやるのでした。


 桃太郎と犬と猿は鬼ヶ島の対岸までついに辿り着きました。荒れ狂う海の遥か向こうに、鬼ヶ島が見えています。

「どうやって渡るんだい、桃の兄貴」

「……海が収まるのを待って、漁師の船を分捕って行こう」

 と桃太郎が言うと、それには及びません、と上のほうから声が。

「うおおおーーー!!」

 と三人、いや、一人と二匹は絶叫しました。そこには、巨大なきじが、神のみ使いのような厳かさで待っているではありませんか。

「でで、……でかい」

 地上に舞い降りたキジを見て、桃太郎は唾を飲み込みました。こんなにも大きな鳥を彼は見たことがありませんでした。彼の十倍以上の大きさです。

「乗りなさい」

「俺たちを乗せてくれるのか?」

 と犬が聞きましたが、キジは返事はしてくれません。桃太郎はこいつの気が変わらないうちに、とさっさと背中に乗りました。やわらかふわふわ、猫バスかよ、という快適さで、一人と二匹は鬼ヶ島に連れて行ってもらうのでした。


「ところで桃の兄貴、聞きたいんだが」

 猿が難しい顔でたずねます。

「なに?」

「鬼ヶ島に何人ぐらい鬼がいると思っている?」

「さあ……」

「俺の住み家に襲撃してきただけで五十人はいたぞ」

 桃太郎は、思わず落ちそうになりました。

「そ、そんなにいるの?」

「甘いな。倍の百人ぐらいはいると思っておかないと」

 犬は覚悟を決めたような表情です。桃太郎、予想と段違いの多さに、考え込んでしまいました。

「そこでだ、兄貴。一つアイデアがある」

 猿の話した作戦は、即座に受け入れられました。果たして、成功するでしょうか。


 鬼ヶ島の海岸に、見張り小屋がありました。一匹の鬼が空を見ていると、大きな鳥が飛んできます。

「なんじゃありゃ」

「でかい鳥だな。何か背中に乗ってるぞ」

「すぐ鬼の王様に報告だ」

 やがて大きな鳥は、鬼ヶ島中央部の広場のようなところに舞い降りました。降り立ったのは桃太郎と犬。キジは空を旋回しています。

「やあ皆様。レディースアンドジェントルメン。私は吉備の国からきた桃太郎。今日は皆さまに不思議な不思議な芸をお見せしに来ました」

 一斉に取り囲んだ鬼たちは、どいつもこいつも頭が悪い上に、暇を持て余していたので、何だ? と思いつつもみな見入っています。桃太郎、すらっと腰の短刀を抜き、真上を向いて、口に突っ込んでいきます。ハッタリのために夜な夜な練習していたのですが、やっぱり痛い。しかし、見事に奥まで飲み込みました。鬼は盛大な拍手を送りました。


 そのころ、別行動をしていた猿は、鬼ヶ島中央の城に潜り込んで、奪われた一族の秘宝「酔虎笛」を探していました。幸い、城内の鬼はことごとく出払っていてもぬけの殻です。

「あったぞ!」

 宝庫のような場所の棚に、無造作に置いてあります。早速猿は酔虎笛を手に取り、お城の見張り台に出ました。眼下に見える広場では、桃太郎と犬が組み合って、人犬風車などと言ってゴロゴロ転がって、鬼たちは大喜びしています。

「見てろ」

 猿はそう言うと、酔虎笛を吹き始めました。なんとも物悲しい音色が辺りに響き渡ります。すると、鬼たちに異変が起きはじめました。みんな座り込んだり、ふらふらになっているのです。

「この笛の音色を聞いた奴らはみんなグデングデンに酔っぱらっちまうのさ」

 曲を吹き終わると、猿は広場に向かいました。見事に全員が酩酊状態。そしてそこにはニンマリと笑う桃太郎と犬。桃太郎は、耳をほじると、耳栓を出して、その辺に捨てました。

「ポポリンチョの仇じゃああ!! どいつもこいつも殺すぅぅう」

 犬が片っ端から鬼の頸動脈をかき切っていきます。え、恋人の名前……。と思ったが、桃太郎は触れないことにしました。猿も張り切って短刀で鬼を刺しまくっています。と、そこへ。

「待ちな。俺様は酔ってなどいないぞ」

 鬼の王がお城の中から現れました。堂々たる体躯、右手の棍棒は7尺(2メートル10センチ)以上あるでしょうか。真っ赤な瞳がとっても怖いです。

「好敵ござんなれ。いざ勝負!」

 ケンカ自慢の桃太郎、この物語の主役は俺なんだ、と言わんばかりに鬼の王と激しい乱打戦を展開しました。しかし、いかんせん体の大きさが違うので押されまくりです。それを見た犬と猿は必死に援護に入ります。が、三対一でも分が悪い。

「ぐああぁっ!!」

 鬼の王の一撃が桃太郎の左足を捉えました。痛みに転がる桃太郎。その拍子に、持っていた日本刀も折れてしまいました。犬も蹴り飛ばされてグロッキー、猿は首根っこを掴まれて持ち上げられてしまいました。

「万事休すかっ……」

 と桃太郎がうなだれたとき、誰かが目の前に立ちました。

「傍若無人の鬼の王よ。私があなたを倒す」

 目の前にいるのは、キジの模様の服を着て、宝石のついた杖を持った、緑の髪の毛の可愛らしい女の子です。

「キミ、は……」

 桃太郎の問いかけには答えず、女の子は飛び上がり、鬼の王の脳天をぶっ叩こうとしました。

「ぬうっ!」

 鬼の王は棍棒で受け止めました。猿は地上に投げ出されました。女の子はそのまま空で止まっています。

「さっきの、キジなのか?」

 犬を抱え、桃太郎のそばに来た猿が目を真ん丸にして聞きます。桃太郎は、分からないけど、すんげえ可愛い子だ、と答えました。空に停止している女の子は、なにやら呟いているようです。

「……異界の獣王バハムートよ、その偉大な力で我を助けたまえ!」

 突然空が真っ暗になったかと思うと、その一部分が大音響とともに裂けました。一人と二匹が思わず抱き合って震えたほどです。雷鳴がとどろき、雲は飛び散り、空気が引き裂かれ、やがてそこに巨大な幻獣バハムートが姿を現しました。さすがの鬼の王も、驚愕の表情で見つめています。女の子の横に来たバハムート。

「メガフレア!!」

 の女の子の叫びとともに、灼熱の大火炎が口から吐き出されました。鬼の王、一瞬にして焼き尽くされ、あとかたもなくなってしまいました。やった、と喜ぶ一人と二匹。獣王バハムートは、何事もなかったかのように、空の裂けめの向こうに消えていきました。天気が戻り、ただ静かな夜に戻りました。女の子がこちらにやってきます。

「ありがとう。君のおかげでみんな助かった」

 と桃太郎がお礼を言うと、女の子もにっこり微笑んで

「さ、帰りましょう」

 と言うと、また元通りの大きなキジの姿に戻りました。桃太郎は内心チェッ、と思いながら、さっき下からパンツ見といたらよかった、などと思うのでした。


 都へ鬼退治の報告をした桃太郎は、大いに称賛され、大金と武家の称号を手に入れることが出来ました。なぜなら、桃太郎は、犬と猿とキジと中途で別れたのをいいことに、手柄は全部ひとり占めしたからです。そして、念には念を入れ、歴史家に頼んで、自伝まで書かせました。それが後年私たちに伝わっている物語、「桃太郎」なのでありました。(終わり)

今回は習作のつもりで、昔話のパロディ小説を書きました。

面白かったか、つまらなかったか、また、文章は読みやすかったか、

おかしな部分はなかったか、など教えていただけたら嬉しいです。

よろしくお願いします。

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