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第7話 食べるお薬

ここから、書き残しているものの、どう公開したのか……そもそも公開したのか?と言う作品になります。

エルブームの時と投稿順が入れ換わっているかもしれませんが……ご容赦ください!

「なんか、調子が悪いな……これが未病って言うのかな?」


 未病。東洋医学の用語で、まだ病気ではないけれど、気だるい状態で病気にかかる寸前の状態を指す。

 若葉は、ふとテレビコマーシャルで得た知識を思い出していた。


「東洋医学と言うと……ここは医食同源を実行しないとね♪ 食欲増進と言えば、ビールよね。 ビールに合わせて……薬と言えばスパイス。スパイスと言えばカレーね♪」


 物は言いようである。


 ウキウキとしながら、スーパーに掛け込み、食材を調達する。

 単にカレーと言っても、何の肉を使うかでも変わってくるし、肉以外にも海鮮だったり、野菜のみだってある。


「ハンバーグ用のあら挽きのミンチが美味しそうね」


 手にしたのは『ハンバーグにオススメ』と書かれた牛と豚が七対三のあら挽き肉だ。

 牛肉が多い方が旨みが強く、豚肉が増えるとジューシーになると言われる。

 実際は牛肉だけでも牛脂を混ぜ込んだり、パン粉等を使ってジューシーさを出すことは出来るのだが、単純に合びき肉は合びき肉の良さもある。


「ミンチ肉なら、キーマカレーね。だったら……」


 と、家にあるストックを思い出しながら不足している物を買い足して行く。


「玉ねぎはまだあったから良いとして、人参は買わないといけなくて……ガルバンゾの缶詰はあるけど、レンズ豆もも欲しいかな。乾物コーナーにあるかな?カレー粉も心許なかったし、オールスパイスとターメリックも買っておこうかな?あ、無臭ニンニクも欲しいけど……」


 医食同源の下、理由があれば財布の口も緩くなる。そうすればあれもこれもと手が出てしまう物。

 しかし、料理をするのが楽しい人間にとって食材を選べるという事は幸せなことなのだ。


 簡単に作れば、キーマカレーは比較的安上がりな料理と言える。

 極端な説明をするならば、ミートソースにカレー粉を入れればキーマカレーと言える。

 しかし、カレーは元々インド料理の中でもスパイスを用いた煮込み料理を指した言葉で、意味としては『おかず』である。


 そんな自由度の高い、懐の深いとも言えるカレー、その中でも挽きキーマを用いたカレーを若葉が作る。


 用意したのは、牛豚合挽き肉のあら挽きに、玉ねぎ、人参、セロリ、ニンニク、生姜、マッシュルーム、トマトホール、豆(ガルバンゾ(缶)とレンズ豆(乾燥))。

 調味料は、塩、カレー粉、オールスパイス、ターメリック、黒コショウ(あら挽き)、白コショウ、ローリエ(葉)、トマトピューレ(4倍)。


 まずは乾燥レンズ豆を戻すことから。

 ぬるま湯に浸して、しばらく放置。

 その間にみじん切りタイムである。

 最初はニンニクとショウガ、そして玉ねぎ、人参、セロリ、マッシュルームをとにかくみじん切りにして別のボウルに入れる。

 気をつけたいのが、挽き肉の下拵えである。塩を振ってはいけない。

 肉汁が出てしまい、美味しさが抜けてしまうのだ。


「フードプロセッサーを使えば簡単なんだろうけれど……この無心に刻み続けるのって、ハマるんだよね……ふふふ……」


 ボウルに積まれたみじん切りの野菜たち。

 見た目の量で言えば挽き肉の倍くらいある。

 火が入ってしまえばちょっと多いくらいまで嵩が減るので、これでも肉々しい仕上がりになる。


 そんな野菜に塩を振りひとかき混ぜする。


 その頃になるとレンズ豆も随分と戻っていて、2度程濯ぎ洗いをしてからざるに上げて準備完了。


「まずは、っと♪」


 底の深いフライパンに適量のオリーブオイルとみじん切りのニンニク、生姜を入れて、火を付ける。


「臭ってしまったら嫌だけれど……ニンニクは出来るだけ多い方が美味しいよね」


 ぱちぱちとニンニクが始めるようになってきたら、挽き肉を入れ黒コショウをガリガリと入れる。

 ちょっと強めに胡椒を効かせているようだ。


「この匂いが悪魔的よね……肉の食感を残したいから、つぶさない様にしてっと」


 ヘラで肉を切るようにかき混ぜていく。

 概ね肉が白くなったら、その他の野菜の出番だ。


 塩を振ったことによって水分も出ているが、それも一緒に入れていく。

 そして暫くかき混ぜながら炒めていく。


「人参のベータカロチンは油に溶けだすって言うし、マッシュルームに肉汁を吸わせたいと思ってこうしてるんだけれど……正解なのかな?」


 色々試行錯誤して今の作り方に落ち付いたのだが、煮込んでる間にちゃんとベータカロチンは引き出されるし、だったら玉ねぎのみじん切りだけ別にして肉と一緒に炒めるべきかも?と、これも正解じゃない気がしてしまう。

 そんな悩みも料理の楽しみだったりもするのだが。


「とりあえず、マッシュルームに肉のうまみが染み込んだ気がしたら……トマト缶!」


 ホールなので、ボトンと果実が丸々落ちていく。

 缶の内側についているジュースが勿体無くて、三分の一ほど水を入れて綺麗にしてフライパンへ入れる。

 それを補うかのようにトマトピューレを入れる。


「カットのあの酸味も嫌いじゃないけれど、肉を楽しむならやっぱり潰す手間はあるけどホールに限るわ」


 ヘラでしっかりとトマトを潰したら、最後にレンズ豆とガルバンゾを入れて、パキッと折り目を入れたローリエを添えて煮込んでいく。


「さて、スパイスを焼いていこうかな♪」


 小さいフライパンを取り出し、カレー粉、オールスパイス、ターメリック、そして塩を混ぜ合わせ火にかける。

 塩も入れるのは、フライパンで振って火にかける時に量が多い方が楽だからである。塩がパラパラになる以外に効果はないのだけれど、振って掻き混ざり易く分スパイスが焦げにくくなるのだ。

 香りが立って来たところで、混ぜ合わせる。


「あーもう駄目、我慢出来ない……先にビールを飲んでも良いよね?」


 カシュッ!っと良い音がキッチンに響く。


 誰に訊くわけでもないが、断りを入れてからキッチンドランカーになる。

 しかし、カレーの匂いは暴力的であるわけで、赦して欲しいところだ。


 ビールをちびりちびりと飲みながら、煮込み続ける。


 カレーなのだからご飯も良いけれど、今日はビールを飲むために作ったのだから、バゲットをスライスしてトースターで焼くことにした。


 カリッとしたバゲットにあら挽き肉がゴロゴロしたキーマカレーを乗せて、乾燥パセリを塗して……


 ……想像しただけでビールを飲む速度が速くなった気がする。


 トースターがチンッとなったら、ローリエの葉を取り出しキーマカレーも完成となる。

 味は塩気をちょっと控えめにしてある。

 たっぷりとバゲットに載せたいからだ。


 お皿にバゲットを並べて、イメージしてた通りにカレーを乗せパセリを振ったら、改めてビール(二本目)を取り出してダイニングテーブルに並べる。



「ビールで食欲増進、カレーは薬♪ では、いただきまーす♪」


 若葉の治療が始まった。

カレーって良いですよね!

我ながら『極端な説明をするならば、ミートソースにカレー粉を入れればキーマカレーと言える。』は暴力的過ぎたかもしれませんが……これを教えてくれたのは母でした。

ある意味、母の味です。

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