第2話・生姜は女性の味方
当時、岩下の新生姜とのコラボ企画をしていました。
実はコラボを始める前に、コラボの下準備交渉などをしていたのですが……実は、この作品を構想した時点で岩下社長に名商の使用許諾をしたのがきっかけでした!
キッチンDIVEとエルブームと岩下食品の三社コラボ……仕掛け人だったんですよねぇ♪
「唐揚げ弁当……かぁ」
テーブルにぽつんと置かれた唐揚げ弁当は、若葉が仕事現場で頂いたものだった。
イベントPVの撮影立ち会いだったのだが、制作会社の人が「ロケ弁が残ったので是非に」と渡してくれた物である。
基本的にロケ弁と言う物は余る。足りなくなるより余るくらいの方が良いからだ。
それにしたって若手のスタッフが持って行くので、その場で無くなる事がほとんどだ。食費を抑えるために2、3個持って行く人も少なくない。
それでも余ったのは、単純に発注ミスであろう。
若葉としては、唐揚げは嫌いじゃない。
(そのままレンジで温めて食べると言うのも芸が無いかな?)
瞬間的に頭に浮かんだのは、炒飯だった。
ある有名タレントが「幕の内弁当炒飯」なるものをテレビで紹介していたが、唐揚げ弁当でやってもちょっと面白くない。
ご飯と唐揚げ以外の付け合わせがしば漬けときんぴらごぼう、そして梅干しがあるだけだったのだ。
(とってもジューシーそうだけど……ちょっと工夫しよう)
気合いを入れるとまずは準備に取り掛かる。
「さてと……う~ん、卵と長ネギと……ん?新生姜か。 そう言えばおつまみ用に岩下の新生姜を買っておいたんだっけ」
おもわずにんまりとする。メニューが決まった瞬間だった。
(最近気温の変化も激しいし、身体の調子を整えるのに生姜が良いよね。身体がだるいとかないけれど予防ってことで♪ ここでガッツリ食べるのは身体の為なのよ)
別に言い訳する必要は無いのだけれど、晩御飯に唐揚げ弁当を食べる理由を並べつつ、完成を想像して気分が高揚しているようだった。
食材は、唐揚げ弁当(ご飯、梅干し、きんぴらごぼう、しば漬け)と卵と長ネギと新生姜。調味料は、ごま油と塩コショウと香り付けの醤油、顆粒の鶏ガラスープと片栗粉。
まずは食材の下拵え。
唐揚げをクッキングペーパーを敷いた皿に並べ、レンジで軽く温めておく。
その間に、ネギをみじん切り、新生姜を細切りにする。
フライパンに手を伸ばそうとしたところで、レンジの終了音が鳴った。
そのまま取り出し、今度はオーブントースターにクッキングペーパーごと突っ込んで、適当にダイヤルを回す。
(レンジで温めただけだとベタベタしちゃうけど、この一手間で違うのよね)
改めてフライパンに手を伸ばす。
金属ヘラでも傷付かず、焦げ付いた時は水で流すだけで汚れが取れると言う触れ込みの逸品である。ちょっと重いけれど、この厚みが炒め物をするのに素晴らしい仕事をしている……らしい。
フライパンを強火にかけて温めてる最中に、ミルクパンに水と顆粒の鶏ガラスープ、そして新生姜の細切りと漬け汁を加え、片栗粉を入れてミルクパンからはみ出ない程度の中火にする。
混ぜてる間に充分温まっているので、油とみじん切りのネギを入れると、ジュッと良い音がする。
急ぎ卵をカツンと叩き割り、フライパンに落したらスピード勝負。
すぐにごま油を入れてお玉で軽くかき混ぜたら、すぐにご飯を入れてとにかくご飯を解す。
お玉の底で押し潰してはカンッカンッカンッと切っていく。
(私のお玉捌きが上手なのかは知らないけど、炒飯を作っている気分が盛り上がるのが良いよね♪そのためにこのフライパンを選んだのだから)
人の為に作るわけじゃないから、気持ち良く料理するのが大事である。
手際、そしてそれっぽい仕草。気分だけは一流の料理人。
程良く馴染んで炒飯っぽい姿になったら、少々の塩と多めの胡椒を振り、
味は食べる時に調整しても良いので、味見もしない。
鍋肌に醤油を垂らし、仕上げのひと掻き混ぜをする。
炒飯の片手間にミルクパンを菜箸でかき混ぜて加熱して行くと、最初は白っぽいかったのが、徐々に透明度を増して粘りが出てくる。
鶏ガラ生姜餡、と言ったところか。
充分火が入ったら両口の火を止め、トースターを無理やりチンと鳴らせて終了させる。
唐揚げはレンジで温めてあるので、表面が香ばしくなれば完成。コロッケと同じ要領だ。
トースターから漂う香ばしい香りを楽しみながら、大皿を取り出し盛り付ける。
極めてシンプルな炒飯と唐揚げ、そこにどばっと豪快に出来たての餡を掛ける。
「名付けて、炒飯と唐揚げの生姜餡かけプレート♪」
付け合わせに、きんぴらごぼうとスライスした岩下の新生姜を添える。
味気ない唐揚げ弁当が、立派なディナープレートになった。
いつもなら缶のまま飲むビールを、グラスに注いで並べる。
「それでは、頂きます♪」
一人飯で大事なのは、美味しさよりも楽しさなのである。
それにしても……
「……餡かけの唐揚げとビールだけでも良かったかな?」
口を付けてしまってから、ふと思った。
この料理は当時エルブームで「つくってみた」としてレポートを掲載して頂きました。
実際に作ってみて下さい。
難しくないですよ♪