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転移者が問題を起こしすぎたので、ぐーたら天使と共に駆逐します! ~ 闇の賢者が行く多重異世界討伐記  作者: オカノヒカル
第二章 【めぐりあい異世界】

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■転移者のバトルロイヤル(3)


 なんとかカトゥーを説得して魔法で森を焼いてもらう。そして、唯一の逃げ道で待機。


 その場所から出てくるのは煙だけではなく、火だるまになった虫たち。火に弱いやつらは身体が燃え始めた時点で終了だ。


 あとはたまに、ほ乳類の動物が逃れてくる。鹿や熊や猪。かわいそうだが見捨てるしかない。せっかく凶暴な虫から逃れて生き延びられたというのに、森に火が放たれて生きながら焼かれる。我ながら鬼畜なことだ。


 今回は転移者の保護という役割ながら、やっていることはいつもと変わらない。卑劣、鬼畜のオンパレードである


 しばらくすると、火だるまになった人型がこちらに歩いてきた。よく見ると小さな虫が無数についている。それらは燃え尽きながら剥がれ落ちた。だか、その下にも無数の虫が見えている。なるほど、防火服代わりに虫を纏わせているわけか。


 けど、甘いな。


 中身がノダマサキだというのは丸わかり。スミカの転移者探知の位置とも一致する。


「ノダマサキさんですね」


 打ち合わせ通りスミカが彼の前に出て、戦闘態勢を取る。といっても、彼女には取り立てて特化したスキルがあるわけではないので、それらしい魔法杖を持って、それを相手に向けるというポーズをとるだけだが。


「おまえはゲーム参加者だな。味な真似をしてくれたじゃねえか。ムシたちの恨みを込めておまえを全力で葬ってやる」


 そんなイキッている男の肩を後ろからぽんぽんと叩く。蟲が付いているで直接触れるのは嫌だから木の枝でだが。


「あ?」


 振り返ったその目の部分にモラルタをぶっ刺す。蟲を貼り付かせているとはいえ顔全体を覆っては視界が遮断されてしまう。目の周りは視界を確保するために開けておくのが常套だ。だから、刺すのは楽であった。


「はい。終了!」


 なんの感慨もなく仕事を終える。ほんと、盛り上がりも何もない戦闘だからな。


「すごい! すごいすごい!」


 とスミカが再び腕に絡みついてくる。この子はほとんど好感度マックスだな。最初に助けたのが影響してるのか? とはいえ、スミカとはこの世界だけの関係だ。異世界を渡り歩く俺に好意を持たれても困る。


「……」


 あと、カトゥーの機嫌が悪くなるのがちょっと憂鬱であった。こいつ、ホントに俺に好意持ってねえよなぁ? 勘違いしてもおかしくないんだぞ。


「スミカ、他の転移者の位置を探ってくれ」

「うん。……あれ? 数が六つしかない」

「六つ? 俺たちが倒したのは三人だからあと七つのはずだけど」

「えっと……私以外の残りの人の名前を言うね。カザマキヨミさん、イイダリュウヘイさん、アネガサキツヨシさん、あとサカガミコウさんにウチノシュウジさん、残りはハシモトシゲルさんかな?」


 物覚えは悪いので、カトゥーにそのまま話しを振る。


「カトゥー。今ので俺が倒した三人以外で上げられてない名前はあるか?」

「んー、ヒガシダヒロユキさんかな。彼の能力はレベル百に達するとマイクロブラックホールを生み出すというとんでもないもの」


 マイクロブラックホールって、人類を滅ぼすどころか宇宙規模で影響を与えるやつじゃねえか。あっぶねえなぁ!


「他の転移者にやられたか」

「そうみたいだね。早いうちに退場してくれて良かったかもしれない」


 レベル百に達していたことを考えると冷や汗が出てきそうだ。とにかく倒されていて良かった良かった。


「スミカ、一番近い転移者はどこだ?」

「イイダリュウヘイさんかな……あ、ちょっと待って。イイダリュウヘイさんとアネガサキツヨシさんの位置が重なった」


 スミカのその言葉にカトゥーが反応する。


「戦いを始めたみたいね。転移者同士でつぶし合ってくれるとマキくんもわたしも楽になるよ。仕事が」


 にっこりと笑うカトゥー。そりゃ楽な方がいいのは同意するけどさ、相変わらずあからさまだなぁ。



**



 俺たちはとある街の宿屋で外に出ず、部屋の中で隠れるように身を潜めていた。


「あ、アネガサキツヨシさんが負けちゃったみたい」

「勝ったのは誰だ?」

「イイダリュウヘイさんだね」

「……」


 カトゥーに話を振ろうとして目を逸らされた。


「アネガサキツヨシってどんなスキル持ってたんだ?」


 逸らされても動じずにカトゥーに問いかける。


「うーん、面倒だなぁ。考えてみれば、もういない転移者の情報なんて知ってもしょうがないと思うよ」

「おまえは説明するのが面倒なだけだろうが」

「えー、ちがうよぉ」

「じゃあ、勝者のイイダリュウヘイの情報を教えろ」

「えー、めんどいよぉ」

「ええい、面倒じゃない。依頼の為に必要な情報だ」


 と、カトゥーの脳天に手刀打ち(チョップ)をかます。目を逸らしていたこともあって、避けられることなく見事に決まった。


「いたいよぉ」

「おまえが情報を出し渋るからだ」

「お二人って仲いいんですね」


 とのスミカの問いに、


「違う」

「違う」


 とカトゥーと二人でハモってしまった。


「お二人って恋人同士とかじゃないですよね?」

「違う。ただの相棒だ」

「違うよ。ただの部下だから」


 またしてもハモりそうになるが、後半の言葉が違ったのでぐだぐだになる。


「仲いいんですね」


 再びスミカの声。さっきとは違って、僅かに寂しさを含んでいるようにも思える。


 俺に対しての好意に気付いていないほど、鈍感じゃないけどさ。だからと言って彼女の気持ちに応えることはできないだろう。


 となると鈍感系の主人公を装って、気付かないフリをするのが一番いいのかなぁ。


「マキくん、ちょっといい?」


 俺の手を掴んで、部屋の外へと連れ出そうとすカトゥー。


「何?」

「いいから」


 一瞬怯んだ俺を、彼女は力強く引っ張っていく。


「なんだよ!」


 階段を降りる途中でカトゥーに不満を漏らすように、声を荒らげる。


「スミカさんもいちおう転移者だからね」

「それがどうしたんだ?」

「今回は保護対象だけど、次はどうなるかわからないから」

「次ってなんだよ」

「次は次だよ。いつになるかわからないけど、まだ先の依頼でってこと」

「遠回しじゃ伝わらないぞ」


 本当はカトゥーの言いたいことはわかっていた。


「わかったよ。察しの悪いマキくんに教えてあげる。ただし、これはただの可能性の話。まだ決定じゃない」

「もったいぶるなよ」

「スミカさんは、今はこの世界の為になることをやろうとしている。けど、将来的にどうなるかわからないってこと。そうなったら、マキくんが彼女を駆除することになるんだよ」

調和神ラッカークが言ってたのか?」

「……言ってない。けど、あくまでも可能性の問題。未来は常に変動するの」


 ふぅと長く息をを吐くカトゥー。


「だから俺にはスミカと仲良くするなと?」

「それは自由。けど、距離を置いた方がいいと思うよ。依頼を受けたら、マキくんはそれを拒むことはできないんだから」


 それは俺を心配しての言葉なのかもしれない。カトゥーは変なところで気を遣う。


「おまえ、俺には仕事なんかやめて、その世界に住めばとか言ってるじゃん」

「依頼を完了した後なら猶予はあるよ。けど、一度依頼を受けたら、それを遂行するまでマキくんは拒むことはできない」

「拒んだら?」

「マキくんが処分されるよ」


 背筋を嫌な汗が流れていく。ただの駒だというのはわかっていた。だが、実際に口にされると怖いな。



**



「サカガミコウさんとウチノシュウジの戦いはサカガミさんの勝ち。距離は離れているから問題ないけど、それは別にカザマさんがこっちに向かっているみたい」


 スミカの報告に、俺はカトゥーに問いかける。


「カザマキヨミの能力は?」

「植物を自在に操れるみたい。植物はこの世界のものだからモラルタは効かないよ。あと、植物の根を共鳴させて、独自のネットワークを作成できるみたい。たぶん、これのせいで相手の転移者の位置がわかるんだと思うよ」


 器用な能力だな。転移者のチートっていうより、どっかのマンガのスタンド能力みたいじゃねえか。


「なるほどね。その転移者ってのは俺も含まれるのか?」

「ううん。スミカさんのみだよ。というか、今回のデスゲームの参加者のみ」

「だったら虫使いの時みたいに――」

「ダメだよ。彼女は勝つためなら手段を選ばないみたい。周囲に現地人がいようが、転移者の周囲数百メートルを一度に破壊するからね。前の方法だと、一緒にやられちゃうよ」


 戦い方が豪快だなぁ。だが、今のところそれほど脅威には感じない。もちろん、その脅威というのはこの世界にとってだが。


「ちょっとばかり乱暴だが、調和神ラッカークはなぜ彼女を駆除したがっている?」「彼女がこのデスゲームを生き残った場合、地上の生態系は大きく変化するよ。悪い方向にね。だからこそ、調和神ラッカークさまは始末を依頼したんだと思う」

「なるほど。じゃあ、虫使いの時と同じような不意打ちは危険ってことか」

「そうだね。同じやり方はできないよ」

「どうするんだよ」

「うーん、どうするの?」


 質問返しをされたが、本来転移者を始末するのは俺の仕事だ。カトゥーはあくまでもサポートなのだから、頼り切るわけにもいかないだろう。


「スミカ。カザマキヨミは今どこらへんだ?」

「十キロくらい離れてる。けど、二時間ちょっとでこの街に着いちゃうね」

「しゃーねえ。街からなるべく離れるか。無関係な人を巻き込むわけにもいかないしな」

 宿屋から出ると、急いで街を離れることにする。


「地図はどうなってる?」


 スミカの能力はかなり便利なので、利用することにした。相手の位置を探ると周辺の地形まで表示されるらしいので、カトゥーのアバウトな転移者情報より使える。


「北東の方からキヨミさんが向かってきてるから、逃げるとしたら西か南だよね。西に行くと山林地帯で、南だと海岸だけど」


 山林地帯で森の中に逃げるという手もあるが、それは他の転移者の場合だ。植物を操るのであれば、自ら火の中に飛び込むようなもの。ここは海に向かうとするか。


「南だ。そっちで迎撃しよう」

「勝機はあるの? マキくん」

「まあ、即行で考えた作戦はある。カトゥー。サポート魔法は俺以外も使えるんだろ?」


 ミイズの件で使ったことはあるので、できるのは知っていた。ただ、例外の魔法もあるかもしれないので確認の為に質問をする。


「うん、所詮サポート魔法だからね。敵に致命傷を与えられないけど、応用だけは利くよ。どの魔法でも」


 ならばこの作戦で行くのがいいだろう。またカトゥーに卑劣とか言われそうだけど。


「わかった。作戦を伝える。みんな、俺の言う通りに動くように!」


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