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怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!  作者: タハノア
古霊の尖兵編

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075-騒動の終焉

 いたぶるように続く挟撃の連打、それも終わる時が来る。


 私は連打の締めを表した型を取る。全力による最後の一撃……。


 これまでにないほど流魔血を全開にした。体の軋むような音を聞きながら溢れる力すべて拳に乗せて、かなり色の薄くなったターダへと放った。


 何かを突き破ったような感覚の後に今まで殴っていたものよりの数段抵抗のあるものに拳があたった。


 お父様と私の拳がぶつかり合ったのだ。


 拳を引き抜かれたターダの体には大穴が空き黒くドロドロしたものがボタボタと溢れ出し地面へと広がっていった。


「どうやら終わったようだな」

「そのようですわね」


 2人は微動だにしなくなったターダを見てこの騒動の終焉を感じ取っていた。


「マルレ~大丈夫?怪我は?」


 そこに私を心配したアリッサが駆け寄ってきた。


「私は無傷ですわ、それよりラーバルは?」


 先ほどまで死の淵をさまよっていたラーバルは、騎士団員に支えられながらも立ち上がった。私達を確認すると力なく片手を上げて意識を取り戻していることを知らせてくれた。


「あのとおりだよ~反動で動けないけど傷は完治してる」

「ふぅ……大事に至らずよかったですわ」


 私はあらためて周りを見回すとフードローブ姿のトレイルの方々はいつの間にか居なくなっていた。騎士団員は負傷した団員や市民を搬送している。


「しかしマルレは規格外だね……負けるところが想像つかないよ」

「ああ……同感だ、まさか私が力負けするとはね……」


 このとおりと示すようにお父様が上げた右手は曲がってはいけないところで曲がってぷらぷらと揺れている。


「まぁ!大変!アリッサ早く治療を!」

「うわ!すぐ治療します!」


 お父様の腕はアリッサによってすぐに治療されすぐに元通りになった。私は最後の一撃を放った右手に意識を向けてみた……しびれも痛みもなく全くの無傷だ……。私は本当にお父様より強くなってしまったのでしょうか?


「私をも超えていたか……。マルレも成人したことだしヴィクトルも一人前になったし……私もそろそろ引退かな」


 手を開いたり閉じたりして治療を受けた手の感覚を確かめながらお父様がこぼした言葉は、嬉しいようで寂しく、そしてなんだか申し訳ないような不思議な気持ちになった。


 そんなごちゃ混ぜの感情に浸っていたときでした。


「光の盾!」


 アリッサが突然私の後ろに防御壁を展開した。


 驚いて振り返った私の目に写ったものは黒い煙で出来た苦悶の叫び声を上げているような生首だった。


 生首は光の防御壁を中和するよう光を放ちながら通り過ぎ、完全に油断していた私の中に入り込んだ。


 私の心が2つに分かれるような、そんな妙な感覚を感じながら私の意識は闇へと引きずり込まれた。




ーーーーーーーーーー



 ふと目が冷めた……どれほど気を失っていたのだろう?


 気を失っていた?私は何ぜそんなふうに思ったの?ただベットに入って眠っていただけじゃないのよ。


 毎日寝ているベットから起き上がり、枕元にあるデジタルの目覚まし時計で時間を確認する。日曜日の午前中だ、そうか今日は日曜日か私はスマホをいじりながらPCを起動した。


 SNSでメッセージを確認し終わるとちょうどPCの起動が終わったのですぐにオンライゲームを起動した。


 さーて今日はどこに狩りに行こうかな~っとその前にメンツの確認だね。


 フレンドリストを確認するが日曜だと言うのに誰もinしていない。


 「珍しいこともあるのね」


 そうつぶやいてから仕方なくソロ狩りに出かける。


 私のキャラは回復メインの支援キャラだが多少の攻撃魔法も使えるので効率は落ちるが小銭を稼ぐには問題ない強さはあるのだ。狩場に到着すると敵に魔法を打ち込み雑魚をなぎ倒していく。


「やっぱり魔法が使えるっていいわ!」


 口から自然と出た言葉に違和感を覚えた。魔法が使えるって良い?私は魔法が使えないキャラなんて作った覚えがない……。


 なぜだか急に不安になった。そういえば静かすぎる……ゲームの音以外何も聞こえてこない……。


 ゲームをほったらかして自室から出て家の中を見て回る。トイレ、風呂、キッチン、リビング……そして最後に私の部屋の向かいにあるもう一つの部屋も確認した。


 いない!妹がどこにもいない!スマホで連絡も取れない……。もしかして出かけているのかな?いやそんなはずはない、用事はすべて下校時に片付けて、休みの日は家から一歩も出ない生活を続けている妹に限ってそれはない……。


 じっとしててもしょうが無い!外に探しに行こう!


 私は玄関の扉をあけ外へと踏み出そうとしたその瞬間に景色がないことに気がついた。


 外は真っ白だった……私の家だけがポツンと存在しているだけで、他にはなにもないただ白いだけで広いのか狭いのかもわからない奇妙な空間だった。


「何なのよこれ……」


 私は家の中に戻りリビングの椅子に腰掛けるとどうしてこんな事になったのかと記憶を巡らせた。


 私は、アシハラ・トモカ日本在住の16歳……あれ違う……マルレリンド?


 私は洗面所に駆け込み鏡を見た。黒髪黒目の少女……私だ……。


 でも違う!赤い縦ロールは?あのあまり好きじゃない吊目は?


 もしかしてあれは夢だった……?


「そうだあれは夢だ……もう一度ゆっくり眠るといい……」


 どこからともなく聞こえてくる嫌悪感のある男の声……でもそれに逆らう気がおきない……。


 そうだ……もう一度、眠ればいいんだ……そうすればまたみんなに会える……。


 アシハラ・トモカは自室に戻りベットに横たわると意識を薄くしていった。


 

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