045-定宿とギルドカード
私はお腹の空き具合からしてそろそろ夕食時だろうと予約した宿屋うさぎ亭にやってきました。ウサギのシルエットが描かれたかわいい扉を開けると見知った二人があくせく働いています。
女将さんは私が来たことに気が付くと「待ってたよ」と迎え入れてくれました。2泊頼み100ラドを支払った。部屋の番号を聞きさっさと剣を置きに部屋に行きましょう。歩くたびに鞘の中でガチャガチャうるさいですからね……。
部屋はベットとサイドテーブルだけのシンプルな部屋でベッドに座ってみると柔らかく昨日泊まった所よりだいぶ質が良かった。いい宿を教えてもらったわね、私はここを定宿にすることに決めた。
剣をサイドテーブルに立てかけて夕食を食べるために食堂に戻りました。
「夕食をお願いしますわ」
私は適当な場所に座り食事を頼みました。
「今日はお母さんの特性ビーフシチューだよ!美味しいよ!」
「ありがとう ペトラちゃん」
配膳された目の前の美味しそうなシチューとパンとサラダを欲望のまま豪快に食べる。マナー漬けの日々から開放された私はわざと行儀悪く食べることにハマっていた。
「美味しそうに食べるねー」
「ちょっと!恥ずかしいからじっくり見ないでください!」
いつの間にか横に座っていたペトラちゃんに驚くと同時に恥ずかしさがこみ上げてきた。
「美味しいですわ」
「でしょ?お母さんのシチューは最高なんだから」
「そのようですわね」
彼女はなんだか嬉しそうだった。食事を終え食器をキッチンカウンターに戻し部屋に戻る。明日も稼ぐぞ!と意気込みベッドに横になるとすぐ眠りに落ちました。
柔らかいベットでぐっすり眠り爽やかな朝を迎える。食事の心配をしなくていいのはとても嬉しい。食堂へ行きすでに準備が整っていた朝食をのんびりと食べ終える。ふう、と一息つくとギルドカードを取り出し眺める。
本当に冒険者になったんだなぁ~という思いと同時に魔道具研究家としての疑問が浮かぶ。
これってどういう原理で動いてるのかしら?まず誰もが使えることから無属性の魔力で動くことは間違いない。裏面は黒く塗りつぶされているが目を凝らすと恐ろしく細かい魔力回路が彫り込まれてる事がわかる。白い表面は極小の魔石が隙間なく並べられているようだ。
操作方法も単純で、使いたい機能を思い浮かべながら魔力を流すだけで良い。原理がさっぱりわからない!こんな凄い無属性の魔道具があるのに学園では無属性魔道具の開発者が一人も居ないのか気になってしょうがない!前例があるのだから誰かチャレンジしていてもおかしくないと思うのですが……。
「カードが気になるかい?」
声をかけてきたのは女将さんだ。
「ええ、こんな凄いもの誰が作ってるのかな?と思いましてね」
「たしか古代魔道具から生産されるって聞いたことがあるよ」
「古代魔道具ですか……」
古代魔道具……遺跡などから発掘される未知の魔道具で現在では失われてしまった技術が使われているので解析もままならず下手に分解して使えなくなることを恐れて研究はほぼ進んでいない。無属性魔道具が放置されてたのは魔石ベースの開発な事もあるけど無属性魔道具=古代魔道具という先入観もあったからかしら?
「気になるならギルドで聞いてみたらどうだい?」
「そうですわね これから聞いてみることにしますわ」
善は急げ「いってきます」「行ってらっしゃい」と声を掛け合いギルドへと出かける。
「ギルドカードですか?それはですね!」
ギルドに行き受付嬢さんに聞くといきいきと説明をしだした。聞いたのをちょっと後悔するほど熱くそして長く語った。ぐいぐい来るので内容を覚えるので精一杯でした。忘れないうちにおさらいしておくことにしましょう。
ギルドカードは古代魔道具[カード製造機]が自動的に生み出す物だそうです。使用されるようになってまだ20年もたっていないようです。その構造は全く解明されておらず一台しかないため解析も禁止されているそうです。カードの方は複数あるのですが解体しても保護魔法がかけられているようで読み取ることが困難だそうです。機能は日々研究されていて現在確認されているのは以下の通り。
氏名の表示
クエストの管理(解体屋もクエスト扱い)
ランクの判定(自動評価)
現在地が確認できる地図機能
他にもまだ発見されていない機能があるようでテストが進めばもっと増えるかもしれいないロマンあふれる古代魔道具らしいです。
「地図の表示なんて出来たのですか?」
「言ってませんでしたか?」
「聞いておりませんわ」
「大変失礼しました操作は念じて魔力を流すだけですのでご活用ください」
地図の使い方を聞いた私は「いってらっしゃい」と送り出され今日も狩りに出発しました。朝からたっぷり時間が取れたので森と解体屋を5往復してロックウルフを5体納入して420ラド手に入れました。
何故500ラドではないかと申しますと……前世の漫画やアニメで見た首の後を手刀でトン!と気絶させるってのを真似してみましたら。勢い余って首を切断してしまい頭がどこかへ転がっていってしまったからです。
担いでるときに血は垂れてくるし牙がないから査定額は20ラドだし失敗でした。そして手刀が文字通り刀として機能することに少し驚きました……。最初に試したのが人間ではなくてよかった。
ごきげんようマルレです。
冒険者になって3週間たちお金も溜まったし
装備を整えて遠くまで行ってみることにしました。
次回「はじめての遠征」お楽しみに




