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怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!  作者: タハノア
王立魔法学園3年 魔道具研究科編

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039-裁判

 卒業式が終わり卒業生がパーティを楽しんでいるころ、ひっそりと準備は進んでいた。


 ◆アーク陣営


 裁判所を模した集会所の控室では、アークとファーダが最終確認をしていた。


「さてマルレの厄介事も今日が最後だ、うれしいような寂しいような不思議な気持ちだな」


 アークはこの三年間に思いを巡らせている。


「そうですねお嬢の世話も最後だと思うと……」


 一番付き合いが長いファーダも同意する。


「傍聴席を任せた劇団は大丈夫ですか?」

「ああ、私が主催のサプライズ送別会だと説明したら、喜んで協力してくれたよ。稽古にも熱が入っていたようだ」


 会場と人員は、ドレストレイルからの資金提供と、アークの仕切でおこなっている。準備は万端で、あとは主役の登場を待つだけとなっていた。


 ◆アリッサ陣営


「ラーバル! 警備の人員はどうなりました?」


 アリッサは、自分の作戦で本当の裁判が起こったと信じている。この後アークを振って、マルレの後を追うという計画までしていた。


 彼女は、まだ不安を拭いきれておらず神経質に何度も確認している。


「先程も言いましたが、これ以上ない最高の人材を充てました。」


 アーク陣営とも連絡をとっているラーバルは、4度目の確認にうんざりした表情で答える。準備は万端これ以上ないほど適切な人材を確保できたと自負していた。


「後はマルレが到着するのを待つだけね」

「ええ……。連行はお兄様がうけてくれましたので問題ないです」


 騎士団長が引き受けてくれた事にアリッサはひとまず安心した。


「ではそろそろ裁判所に行きましょうか……」

「そうですね、行きましょう」


 ◆劇団員


 裁判所のセットを組んだ集会所には役者がそろっていた。通し稽古にアドリブ対応とやれることはやったと落ち着いた雰囲気だ。アークとアリッサは原告席へと座る。二人のピリッとした雰囲気に劇団員たちは、役者魂を感じ気を引き締めている。


 実の所は、アリッサが放つ空気は本物の裁判に向かうという勘違いの緊張からだった。


 あとは主役である悪役の令嬢が来るのを待つだけだ。


 ついに彼女は現れた。きれいにロールされた赤い髪を振り乱し、キッとにらみを効かせた赤い目は鋭い。少女が放つ迫力とは思えなかった……。


 サプライズの始まりだ。さぁ! 泣き崩れるか! 無実を訴えて反論するか! 数パターンのアドリブ対応の稽古を積んだ彼らは身構える。


 裁判が始まった! 仕掛け人たちによる証言が終わると、ついに判決が下る。


「ここに宣言する。私はマルレリンド・ドレストレイルとの婚約を破棄。そしてドレストレイル家より追放とする」


 裁判官役のアークが判決を下す。


 すると悪役の令嬢が語りだす。


「そ……その決定は、いかなる事があっても、覆されないのでしょうか……」


 悪役の令嬢は、おびえた様子だ……。


「もちろんだ。このような下卑たことをしたのだ。決定は覆らない」


 罪が確定したことをアークが知らせる。


「やったよ! アリッサー! 協力ありがと! ラーバルもありがとう! 私はこれで自由よ!」


 協力? 自由? 何のことだろう? 悪役の令嬢は私たちの想定外のことをしている。傍聴人はどう反応するべきか? 考えている間は無反応になってしまう。しかし主催者たちはそのまま進行していく。


「おめでとうマルレ!」

「頑張ってね! マルレ!」


 何がめでたい? がんばった? 卒業の話か? ますます混乱する劇団員たち。


「それでは皆様、私は侯爵家の人間ではなくなりました! 自由に生きます!」


 鎖を引きちぎった? なんて怪力だ! ん? どうやら会場から出ていく様子だぞ? これはまずい! ネタばらしする前に出ていかれるのはまずい! そうだ衛兵役に指示を出せば!


「取り押さえろ!」


 そう思った劇団員は今日の初ゼリフを力いっぱい叫ぶ!


 (うそ)だろ……衛兵が壁に(たた)きつけられて気絶した? いや金属製の防具がへこんでいる……死んだかも……。


「罰に拘束は含まれていないはずです! 邪魔しないでいただきません?」


 事故だ……サプライズがとんでもない事故に……。


 会場を後にする()()()()()()を止めるものはいなかった……。


 ◆終劇


「皆の者お疲れ! 無事に演劇を終える事ができた。皆の協力に感謝する!」


 アークが劇団員たちをねぎらう。


「ちょっと! アーク! 演劇ってどういう事!?」


 本物の裁判だと思っていたアリッサは、アークに詰め寄る。


「アリッサ、おちついてこれは裁判じゃないの。あなたとマルレを納得させるために開いたお芝居なの……」


 なだめるラーバルの後ろで、壁に(たた)きつけられた衛兵が起き上がる。


「いてて! 俺じゃなかったら死んでたかもしれないよ! お嬢ってば、怪力すぎ!」


 ファーダがヘルムをはすしながら、輪に加わる。


「え? 衛兵はファーダくんだったの?」

「最高の人材を充てたと言いましたでしょ?」

「そうですよ、知らないのはお嬢とアリッサちゃんだけです」

「ええ? マルレが家を追放されたのは?」

「もともとザロット様からマルレが冒険者になる許可は出てるから安心してね」

「じゃあもしかして……この裁判やらなくてもよかった?」

「やらないと、お嬢も君も、海外逃亡しそうだったからね。君たちの計画に載っただけだよ」


 はは……。はははははは……。アリッサの乾いた笑いで舞台は幕を下ろした。


 そしてマルレの冒険者という新たな舞台の幕が上がる。



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