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怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!  作者: タハノア
王立魔法学園編 2年生
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026-はじめての悩み

 王都へと帰還する馬車はずっと無言で、重苦しい雰囲気に包まれていた。にらみ合うアークとガオゴウレン。その二人から一番遠い座席にされたマルレは、そんな二人に気が付かず顔色を青くしたり赤くしたりしていた。さすがのファーダもこの空気を打ち破れず、そのまま王都へとたどり着いた。


 盗賊団員すべてを生け捕りにし、味方の被害どころか敵の被害すらない。戦力差は圧倒的で王都では、ちょっとした騒ぎになっていた。しかしその当事者たちは、もっと別の問題に思い悩んでいた。



 2年生の締めくくりだった交流イベントが終わると、そのまま春休暇に入りました。馬車での移動の疲れを取るため、騎士団での訓練は休みだった。


 寮の部屋はアリッサと共同で中央には、ソファーとローテーブルがある。私はアリッサと家族だけに見せるダラッとした態度で座り。基礎魔道具理論の授業で作った魔力で回り続けるコマをボーッと眺めていた。


 先日の事が勝手に思い浮かぶ。


『ほれた! 俺と付き合ってくれ!』


 鮮明な記憶……。


『おい、貴様! マルレは、私の婚約者だ今すぐ手を離せ!』


 こちらも思い浮かぶ……。


 いったい何なんだろう……ガオゴウレンさんもアークも……。


 机に向っていたアリッサは、戦術関連の本をパタンと閉じた。そして、同じソファーに腰掛けて、ぐにゃぐにゃな私に、声をかけてきた。


「また考えてるでしょ~」

「ええ、こびりついて離れませんわ」

「アークはともかく、ガオゴウレンさんどうするの?」

「どうするも何も、冷静になってみれば理由がひどいですわ」

「たしかにそうね」


 盗賊たちに好かれていたアリッサと比べて、怖がられて自分にはうれしかった『強すぎだぜ!』の言葉も恋愛感情の元になることは、到底納得できないものだった。


 それに、私には……いいえ。この事は考えないようにしましょう。


 頭を切り替えて元の話に戻る。


「淑女への褒め言葉で強すぎって……」

「ないわ~」

「そうですわ! それにアークも世間体を気にしてのことしょうし」

「……そうかもね~」

「なら無意味に考えても仕方がないわ!」

「そうだね、なるようにしかならないからね」


 考えても仕方がない事を先送りにすることに決めて、その前の戦闘のことを思い出すことにする。


 ガオゴウレンさんの魔法は、初めて見るタイプでした。授業や本から得られる情報で当てはまるものはなかった。それに詠唱もなかったようだし、よく分からない。


 それに比べてアークの魔法はわかりやすい[ストーンウォール]と詠唱したら石壁がでてきた。そしてアリッサの[広がれ()しの光]は詠唱なのかもよく分からない。


「魔法のことで、聞きたいことがあるのだけど、いいかしら?」

「え? ああ! そっか私とガオゴウレンさんの魔法についてでしょう?」

「はい、書物で読んだ内容とは違うようでした……」

「マレルは、ノチド先生の授業出てないもんね」


 私は別部屋で流魔血の訓練をしていたので、魔法実技は一度も習っていませんでした。アリッサから詳しく聞いた所ノチド先生はすごい方でした。


 既存の魔法理論を覆し一般的な決まり文句と魔法の形をやめたそうです。なぜなら、自分がイメージしやすい言葉や動作をしたほうが、魔法の威力が上がる事を発見したそうです。


 例えば[ファイヤーボール!]と唱えれば火の玉がでます。ですが、以前に見た知識や実際の魔法にイメージを左右され同じ形や威力になるようです。


 [ファイアーボール!]と唱えるよりも、オリジナルでイメージしやすい[火の玉よ大きくなって飛んでけ!]の方が強力になったりするようです。


 それにより、アリッサはイメージを補助する言葉、ガオゴウレンさんは殴る動作が合っているそうです。けれどもアークは、すでに教育が行われていたことから、新しい方法に苦戦しているとのことでした。


 他にも変わった人もいて、ダンス、歌、ハンドサイン、それだけならまだしも、服によって威力が違う。なんてこともあり一般常識からは、かけ離れた状態になっているとのことでした。


「なんだか楽しそうですね……」


 素直な感想が口からこぼれ落ちた……。楽しそうに話してたアリッサの表情が暗くなったのを見て慌てた。私は魔法が使えないショックで倒れたんでした……。


「いや! そういうんじゃないわよ! ただそう思っただけで深い意味はないのよ?」

「うん、わかってるけど、少し無神経だったかもしれない」


 アリッサの表情がどんどん曇っていく……。自分から聞いておいて、これはまずい!


 とっさにアリッサをギューっと抱きしめる。


「いいの! 本当に気にしていないわ! 自分でも忘れて聞いてしまうぐらいですもの!」


 少しびっくりしているけど、いつもの表情に戻っていくアリッサに私は安心した。


「ありがとう、もう大丈夫! 私も気にしすぎてたみたい!」

「よかった! また聞くかもしれないけど、そのときはよろしくね!」

「うん! 分かった! いつでも聞いて!」


 暗い雰囲気になったけどなんとかやり過ごてよかった。



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