118-帰国
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10/15日地図を手書きからinkarnate.comで作ったものに変更しました。
「王族がいなくなった?いったいどういうことです!?」
机の上に置きっぱなしだった紙に目が行く。その中で[王族の全滅]という項目が打ち消し線を引かれずに残っているのが目に入ってしまい首を横に振り嫌な想像を振り払う。
「詳細は、不明だが先ほど港に入った定期船の船員からの報告だ。出港直前に騎士団員がそう言っているのを聞いたらしい」
「帰らなきゃ!レイグランドの記憶板はないのですか!?」
「すまないマルレ奇跡魔法の才があるものはここ20年ほど生まれていないのだ……」
「でしたら船を……船をお願いします!」
ラーバルやアークは無事でしょうか?一刻でも早くレイグランドに行かないと!
「落ち着くんだマルレ!準備はもうしている。明日の朝一番で出港する手はずだ。邪龍退治の疲れもあるだろうから今日は休め!」
レンさんの言う通りですね。もう準備はしてくれているのなら私ができることはない……歯がゆいですが待つしかありませんわね。
「マルレ!私達も荷造りしてから明日に備えて早く寝るよ!」
「わかりました」
私達はガオゴウ家の自室に戻り散らかしてあった私物を整理不要の次元リュックへと押し込めるとすぐに布団に潜り込んだが目をつぶると嫌な想像が次から次へと浮かび眠れなかった。
朝日が上り部屋が明るくなるとアリッサが「寝れなかった」といって布団を蹴り飛ばした。「私もです」と言葉をかわし。私達はいても立ってもいられず着替えて港に向かった。
港には徹夜で準備して今まさに最後の荷物を積み終わり船員さんたちが乗り込んでいるところでした。
「お二人さん!ちょうど準備が終わったところだ!あんたら急いでるだろ?今すぐにでも船を出せますぜ」
船長さんの言葉に従いレンさんたちに挨拶もせずにこのまま船を出してもらうことにした。船はすぐに出港し一泊二日の航海が始まる。甲板から遠くなっていくクロービを見つめ少しの間寂しさを感じたが、<電報が届きました>と通知が3度脳内に響いたのですぐに電報を読み始めた。
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外道丸:まったく挨拶ぐらいしていけよな!まぁいいけどさ!日本人村の下準備は任せろ[結界師]スキルを取って日本人村全体に強固な結界を張り出入りをできなくした後内部に転移門を立てる予定だ。そうだ!俺があげた[転移金属札]があるんだいつでも気軽に来てくれよ!レイグランドの記録板ができれば船旅も必要ないし毎日だって来れるだろ?まってるぜ!
ガオゴウレン:一言ぐらい掛けてほしかったが仕方がないな。私もレイグランドの皆のことは心配だが、霊峰エリガミヨの再生に手が離せなくなるので国を離れる訳にはいかない。どうかまた素敵な笑顔を見せに来てほしい。国のことが上手く静まるよう願っている。
ガオゴウサキ:緊急事態なので無作法は許します。私は、誘い人様から頂いた力で[奇跡魔法]と[魔道具技師]を新たに習得します。そして転移と記録の金属札を流通させることにしました。では、またいつかお会いしましょう。レイグランドに平穏が訪れることをお祈りしています。
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私は半透明の板をそっと閉じてつぶやいた。
「そうですよね、いつでも会えますものね。そのためにも自国の問題を片付けてしまいましょう」
私はこの先必要になるかもしれない増強魔法の金属札を鉄がある限り量産した。そして王都に行く際の変装用に顔が完全にわからなくなる面頰と呼ばれる顔を覆う防具付きの日本風の甲冑の[当世具足]と150cmほどある[背負い太刀]と呼ばれる大きな刀を鋼鉄で作っておいた。
アリッサは机にかじりついて想定できそうなことを紙に書いては「ちがうかな」と消したり「これはあり得るね」などといいながら、到着したら何をするべきかをまとめていた。
気を張りっぱなしだった私達は夕食を食べるとすぐに眠気に襲われ長い眠りについた。
航海二日目、ぐっすり眠ってしまった私達は昼前にやっと目を覚ました。
「おはようマルレ、ぐっすり寝たらだいぶ落ち着いたよ」
「私もですわ、一日置いて上陸できるのは逆に良かったかもしれませんね」
冷静さを欠いたままレイグランドに到着していたらきっと空回りして酷いことになっていたかもしれないと思う。
「さて!情報がなにも無い以上ここからは最悪の想定で動くよ!」
アリッサの最悪の予想は魔術師団が王都を襲撃し王族を殺すか捕らえるかして、王都が敵の手に落ちているというものだったのでそれに沿って行動することに決めた。
私達は船が陸の見える位置までたどり着いたら小舟に乗り換え人気のない海岸から上陸し情報収集した後に魔術師団の敵対勢力と合流するという流れになった。
レイグランドの地図を広げて上陸地点を考える。
アリッサと相談の末に上陸するのは王都から西にある川の河口付近の海岸に決まった。ここは南にクロービとの海峡がありそこに両国の監視船が常駐していて南の海上防衛が完璧でもし敵が来るなら北側の王都付近なので、河口付近は外からの驚異がない場所なので監視船がいなく、近くに村すらないため漁船すらほとんどいない地域なので誰にも見られず上陸できる可能性が非常に高いはずだ。
船長さんにその事を伝えると「クロービからの侵入者を想定していない事を突いた良い案ですね」と快く了解してくれた。何かあった時のために待機してようかと提案されたが、転移があるのですぐに逃げられるのでこの船はすぐに安全なクロービに戻ってくださいと伝えた。
そして昼食を食べ終わった頃に大陸が見えたので私は[当世具足]に身を包み[背負い太刀]を背中にくくりつけた。
大量の縦ロールは兜に収まりが悪くなんども兜の中に手を突っ込み隙間に髪を詰める。お母様への愚痴が思い浮かび今度こそ呪いを解いてもらおうと決意する。
「髪が見えたらすぐバレるからちゃんとしまっておいてね!」
そう言うアリッサはいつものローブの上から白いフードマントをかぶり顔にはクロービで購入したと思われる狐面をつけていた。
着替えが終わった私達の見た目は外国から来た冒険者のようになった。
「マルレ私達の設定は?」
「ええと、外国から来た冒険者でギルドに登録に行く最中だったわね」
「そう!この設定ならキョロキョロしても変なところに入り込んでも多少はごまかせるからね~」
[転移書]や本名で登録したギルドカードなどの貴重品を次元リュックからインベントリに移動してあるのを確認した後に、私達は船員さん一人を加えた3人で小舟に乗り人気のない海岸に向かった。
小さな船は波に揺られながら進んでいく。最悪の想定が外れてくれることを祈りながら海岸の着くのをじっと待った。幸い誰にも見られることなく無事に着岸した。
「私はこのまま戻ります。どうぞご武運を!」
「おせわになりました」
「ありがとうございました」
船員さんと別れ小さくなっていく小舟に背を向ける。
アリッサが数枚[記録板]を生み出しその中の一枚を私にくれたので[転移書]に収納する。
いったい国がどの様な状況になっているのか早く知りたい……
辺りの様子をうかがいながら街道まで出ると冒険者のふりをしながら堂々と王都へと足を進めた。
クロービ編は今回でおしまいです。次回からは最終章「自分の物語に決着をつける編」になります。これからも宜しくお願いします!