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怪力悪役令嬢は冒険者になりたい!  作者: タハノア
邪竜物語に首を突っ込む編
116/158

116-お祭り騒ぎ

評価とブックマークがまた増えましたありがとうございます!

 神の使いさんが消えるのを見送ると、レンさんとサキさんは話の内容を当たり障りの無い範囲で教えてほしいと私達にお願いをしてきた。


「ああ、俺は死んだらこの世界の用心棒になれって言われたよ、それと邪竜退治の褒美としてスキル限界値が95になった」


 外道丸さん……用心棒って、まぁ間違ってはいないか……。でも守護者と用心棒って意味は同じようなものだけど印象が全然違う気がするのは私だけでしょうか?


「確かに伝承の通りのようだな……。肉体が滅びたら魂を迎えに来て用心棒として雇われる。連れて行かれた先では過去の英雄たちと共に過ごすそうだ」

「へぇ……まぁまだ当分先のことだな」


 戦死しなければ人間の寿命でも60年以上あるし、もしかしたら鬼になった彼はもっと長いかもしれませんね。


「私達はクロービから出ても電報と荷物が使えるようにしてもらったよ~」

「なに!?それは本当か?ならマルレがレイグランドに帰っても連絡がとれるということか?」

「そうなりますわね」


 なんか知らないけどレンさんがものすごい喜んでいる……ちょっと嫌な予感がするわね。


「さて!邪竜退治も終わったことですし帰りましょうか!」

「は~い!じゃあ転移門出すよ~」


 ついに邪竜退治を終えた私達は転移門でさっさとエード街へ戻った。


 街についた瞬間あがる大歓声!どうやら国中を覆っていた雲がさっぱりと消え失せたことで、すでに街中の人々は邪竜が討伐されたことに気がついていたようです。


 そして街はまたたく間にお祭り騒ぎとなっていった。屋台の料理や酒は無料で振る舞われ、大騒ぎが始まる。いつの間にか組まれた櫓の上では、ふんどし姿の男たちが太鼓を打ち鳴らし、その周りで住民たちが踊り始めた。


 あっけにとられていた私達5人は、あれよあれよという間に神輿の土台に椅子がついたようなものに乗せられ「よいさ!よいさ!」との掛け声で、神輿のように担ぎ上げられ祭りの中を引き回された。


「ちょっと!恥ずかしいわ!おろして頂戴!」

「わ~凱旋パレードだよお姉ちゃん!」


 私が戸惑い恥ずかしがっているのにアリッサは範囲気力回復魔法を沸き立つ住人たちに掛けている。普段から広場で露店をやっていたアリッサは顔見知りが多いようですね。


「英雄様の魔法だ!ありがたや!」

「アリッサちゃ~ん!」

「よ!クロービ(いち)の光魔法使い!」


 アリッサはよく平気ね……平民育ちってすごいわ……。


「マルレさーん!」

「赤鬼様~」

「増強魔法の露天もっとだしておくれ~」


 恥ずかしいけど私の名前が呼ばれるとちょっと嬉しくなって小さく手を振った。すると「おおお!」っと盛り上がり予想以上の反応がありなんだか嬉しくなった。


 人混みの中を担ぎ回され数周した後に、私達は大きな机に屋台の食べ物が所狭しと並んでいるところに座らされた。


「さぁ!英雄の皆さん好きなだけ召し上がって下さい!」


 机にはたこ焼き、イカ焼き、焼きそば、お好み焼き、あんず飴、りんご飴、綿飴などの祭り屋台のメニューが並んでいた。


「おお!懐かしいな!流石にチョコバナナはないか!」


 外道丸さんはそう言うと食事を始めた。左手にイカ焼きを持って噛りながら右手の串ででたこ焼きを突いて食べるという行儀の悪い事をしていた。


 私は無言でお好み焼きと焼きそばを取り、慣れた手付きで半分に取り分けアリッサの皿から紅生姜を取り除き自分の分へと乗せる。そしてお茶を二人分持ってきたアリッサと交換する。


「はいお茶」

「他なもなにか食べます?」

「これ食べてから考える~」


 お茶を受け取り食事を始めると「本当に姉妹なんだな」とレンさんが呟いていた。なぜ急にそんな事を言いだしたのかよくわからなかった。


 しばらくするとレンさんとサキさんは将軍への報告をするということで二人揃って席を立った。その様子を見て外道丸さんは私達に近付いてきた。


「おい!マルレたちはこの後どうするんだ?国に戻るのか?」


 外道丸さんはあんず飴を噛りながらこれからのことを聞いてきた。これからどうするのかね……スキルも上げ終わり狭い島国のクロービなので見て回るところももうない。日本人村はまだ住民がいませんし。記録板を作りに一度レイグランドに帰るにしても、私達は避難という形でこの国へやって来たものだからいつ帰ればよいかよくわからない。


「実は私は観光や留学ではなく、レイグランドで内乱が始まりそうで危険だということで避難してきたのですわ」

「マルレが危険て、お前の国は一体どんな化物がいるんだよ……」

「うちの家族が過保護なだけよ、私は和食に飢えてたからそれに乗ったの!」

「へ~お前の国も大変なんだな」

「外道丸さんはどうするんですか」

「あーもちろん日本人村の運営はするだろうけど、それよりジャオンのワールドクエスト第二段のこと覚えてるか?」


 ワールドクエスト第二段……大型アプデート[対人戦]


 開国推進派のツマシュウ軍と開国否定派のエード軍で戦争が起こりプレイヤーは好きな軍勢を選び参戦する。そして最終的にはどちらかの都市が壊滅し次のワールドクエストである生産者向けの復興イベントにつながるはずだ。


「この国で戦争が……?」

「そうだ、俺はそれを防ごうと思う……。日本人村を使って開国と鎖国の中間のような状態に持っていこうと思っている」


 いつものダラダラズルズルの酔っぱらいとは違い真剣な表情で話している。ゲームなどのシナリオに沿って誘導されるこの世界に真正面からぶつかる気のようです。


「きっと出来ますわ!私の国も私の死をきっかけに焦土と化す話でしたがそれはすでに食い止めましたので」

「は?それどんな乙女ゲーだよ?令嬢が死んだら破滅する……ん?なんか聞いたことあるな」


 外道丸さんはうんうんと急に悩みだした。なにか思い出そうとしてるのかな?アリッサから聞いた話ではSNSで話題になっていたから[終末の楽園]について知っているのかもしれませんね。


「あ!思い出した!SNSで回ってきたあの胸糞悪い勇者物語だ!」

「勇者物語ぃ?」


 私はつい変な声が出てしまった。勇者物語って一体何のことだろう?


「ちょっとその話詳しく!」


 アリッサが外道丸さんの話に食いついた。その勇者物語とやらがいったいどんな話だったのかを根掘り葉掘り聞き出した。


 登場人物の名前は詳しくは覚えていなかったようだけど話しのあらすじはこうだった。


 令嬢を殺された貴族が悪魔へと姿を変え魔王と名乗り一夜にして国を滅ぼすところから始まる。滅ぼされた国からかろうじて逃げ延びてきた魔法使いの女と女騎士が辺境に流れ着き主人公と出会う。


 そこで国の惨事を聞いた辺境の領主が勇者を選ぶ儀式をして主人公が勇者になる。一日遅れて魔法使いが聖女に選ばれ魔王軍に戦いを挑み魔王軍を討伐する話しらしい。


「それがさ!ラストで魔王を倒した後に呪術師の呪いによって、勇者に魔王や冥王の記憶が流れ込み国の奴らがでっち上げで令嬢を殺したことや魔法使いが勇者の幼馴染を殺して聖杖を奪って聖女に成り代わった真実を知るんだよ」

「ひどい話ね!何の目的で作られた話なのかしらね」

「そして狂った勇者が聖女の首をはねた後に自殺する。そして勇者の死体を見下ろす半透明のおっさんが「全ては上手くいった」と言ってENDというわけわからん話だったよ」


 なんかとんでもない話だわ、誰も救われないひどい話ね。その話を聞いたアリッサは真剣な顔で何やらブツブツと呟いていた。


「トレイルに私とラーバル?それにアロイーン?とすると聖杖……。リーシャーを私が殺す?半透明のおっさん?黒幕がいる?」


 思考が口から漏れてるときは放置しておいたほうが良いのだけど、何やら私の知る名前が出てくるので気になった。


「アリッサどうしたの?」

「あのさ……さっき神の使いさんが言ってた英雄譚の終わりって私達の国は迎えてないよね?」

「たぶんそうですね」

「私が知らないレイグランドの3つ目の話がるのかも……」

「もしかしてさっきの外道丸さんの話ですか?」

「たぶんそう……私なりにこの世界について考えてみたんだけど二人共聞いてくれる?」


 真剣なアリッサ様子を見て私と外道丸さんは互いの顔を見合わせて軽くうなずく。覚悟を決めてアリッサの話を詳しく聞くことにした。


 ちょっと不穏な話が出てきましたね


 次回も引き続きこの世界についての推測の予定です

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