112-霊峰エリガミヨ
レンさんが将軍と交渉を始めてから約一ヶ月……。やっと条件付きで日本人村の許可が降りた。
まずは外道丸さんの件から始まり、青鬼契約なるものを新たに作り契約するまでに10日ほどかかる。それから日本人村の交渉だがこれは難航していた。
開国すら賛否が別れているのにそれを飛び越えて居住を認めるのはいかがなものかとずいぶん揉めたようです。しかしカクドウセイの手記の日本語部分を見たアリッサが「神の力を思い知らせてやる!」とカルラ様を召喚して交渉の場に乗り込むというとんでも行動をしたおかげで、許可がないものは建築許可地域から出れないように結界を張る事と、外国人が問題を起こした場合は赤鬼と青鬼で対処することで許可を得た。
アリッサとレンさんから交渉事に置いて足手まといの烙印を押された私は、交渉に一切かかわれなかった。なので条項に盛り込まれたのを聞かされたのは全て決まった後でした。
交渉が終わるまで暇だった私は魔道具開発で暇をつぶしていた。両国の技術を合わせていろいろな考えた物を作ってみた。実用レベルまで行ったのは2つだけでした。
まず初めに完成したのが[転移書]ですね。これはゴチャゴチャして間違えやすい[記録板]を管理するもので、闇の魔石を使い記録板と金属札を収納をする。
文庫本サイズの本を開くとページ上部に[記録板]を入れる場所あり下部には場所の名前と詳細を書き込める空欄がある。そして一番下には転移の金属札を発動させる[転移ボタン]がある。
転移の魔法が使える人は[記録板]に触って転移や転移門を唱え。転移が使えない人はボタンに魔力を流し込むと内部に入れた[転移金属札]を使って転移ができる優れものです。闇の魔石で薄く平べったい空間を作りいくつも入り口をつける回路を組んだことにより1ページにつき1枚で合計20個の[記録板]が収納できるようにした。さらに裏表紙に記録板の生成から収納までする[記録]ボタンと金属札の投入口を作った。
欠点はページの間に金属で回路を作ったので紙が分厚くなってしまって20個が限界だった事と、少し重くなってしまったこと。
これの開発はすごく早かった。なぜなら邪竜伝プレイヤがー待ち望んだけど結局実装されなかった魔道具なので構想は常にあった。
外道丸さんから[転移金属札]と[記録金属札]を大量にもらったお礼に[転移書]を差し上げたら「神アプデ来た!」と言って大変喜んでくれました。アリッサは「天才!」と褒めてくれて、レンとサキさんは金属札が流通してないと嘆いていました。
そしてもう一つ開発したのが[ヒヒイロカネ探知機]ヒヒイロカネ鉱石の魔力を感知して音がなる鈴です。これの開発には不眠不休で2週間以上掛かった。ヒヒイロカネ鉱石から出る魔力に引かれてヒヒイロカネインゴットが合流しようと微動する性質を利用して風の魔石に音を出させる回路を組んだ。
残念なことに鈴の見た目なのにビーー!ビーー!と警告音のような音しか出せなかった。完全に技術不足です……。魔石オルゴール回路の勉強をきちんとしておくんでした……。
そんなこんなで、ついに邪竜討伐の日を迎えたのです。
メンバーはこの討伐の立案者のガオゴウレンさん、そして止めるガオゴウ家当主を叩きのめして参戦を決めたサキさん、契約により参戦する外道丸さん、アリッサ、そして私の計5人で邪竜と戦うことになった。
エリガミヨまでの道中はエードとツマシュウから来た精鋭が護衛をしてくれるとのことでした。
私達はエードの転移門広場に集まった。出発式を見守る住人たちに囲まれながらレンさんの出陣の挨拶を聞いていた。
「3年間の留学により私は力を増した……。そしてレイグランドにて赤鬼であるマルレリンド嬢とこの度タカオで神の祝福を受けた光魔法の名手アリッサ嬢に出会い協力を求めた!」
下心を利用したようで心苦しかったのですが討伐協力のために推薦してくれたのですね!(すっとぼけ)
「そして行方不明となっていた超越者である青鬼の外道丸!我が父を退けた姉上を加えたこの5人で必ずや邪竜を討滅してみせましょう!」
サキさんお父さんを倒したのって、まさか贈り物のせいだったりして……。
長年の問題が終りを迎えるかもしれない!と希望に満ちた住民達から暖かい声援を受ける。声援を背に[霊峰エリガミヨ]へと出発した!道中を両都市の精鋭に守られながらエードの森を抜けてゆく。
「邪竜討伐の作戦は外道丸さんが立てたもので間違いないのですか?」
不安なのかサキさんが外道丸さんに作戦の詳細を聞いていた。
「ああ、八塩折瓢箪も天羽々斬もある胴体と尻尾の両方の再生能力をこれで封じれるんだ。使うのはオレに任せてくれ」
邪竜はものすごい再生能力を2つ持っている。1つは胴体にある肝臓的な場所でもう一つは尾の付け根にある再生機関だ。その2つを潰すために2つのクエストアイテムが必要らしいです。
「そうよ面倒ごとは全部外道丸さんに押し付けて、私達はただ首を気絶させればいいのよ!気楽に行きましょ!」
「はぁ……気楽なのはマルレだけだよ……。死ぬかもしれないなんて1ミリも思ってないでしょ?」
「大丈夫よ危なくなったら私が邪竜を山ごと吹き飛ばしてあげますからね!」
「うわ~邪竜よりマルレのほうが怖くなってきたよ……」
やはりみなさんは不安のようですね、外道丸さんの強さからして私基準だと苦戦する気がまったくしないので緊張感がないのも仕方がないと言えば仕方がないですよね?
[エードの森]を抜け[河童湿地]で河童たちに「ちょっと!邪竜退治に行ってくるから今は襲ってこないで」とお願いしてらくらく通り抜けて[蜥蜴森]へ。
蜥蜴の森ではエリガミヨへ行かせまいと蜥蜴人たちに囲まれたが、私の姿を確認するとシャーシャー行っていた蜥蜴人たちはピーピー鳴き声を上げてなんども転びながら逃げていった。
一度も邪魔されることなく霊峰エリガミヨの結界がある場所まで到達した。
ツマシュウの精鋭の一人が憂さ晴らしをするかのように「護衛なんていらなかったんや!」と叫びながら結界を大きな斧で殴りつけていた。なんだか申し訳ない気持ちになったけど、謝るのもなにか違うような気がしてそっとしておいた。その後、蜥蜴森に留まるのは危険なので護衛の皆さんにはアリッサの出した転移門でエードへと戻ってもらった。
「さて……ついに邪竜と対決か……」
外道丸さんが手元をささっと動かすとPT申請が飛んできたので了承する。
<PT「エンドオブストーリー」を結成しました。>
「よし結界を解除するぞ!」
ーーーーーーーーーー
ワールドクエスト:最終決戦!復活した邪竜を討伐せよ![PT専用]に入場します。
許可/拒否
ーーーーーーーーーー
私が許可を押すとガラスのような音とともに結界が消え去った。それと同時に閉じ込められていた邪竜の放つ厚い雲が空を覆っていく。
「さぁ!中にはいるぞ!」
レンさんを先頭に皆で中へと踏み込んでいく。分厚い雲に覆われ続けた山はまるで死んでいるようでした。木々は枯れ大地は腐り異臭を放っている。崩れかけた石段を登り、邪竜が根城にしているという山の中腹にある大きな社を目指した。
社がある場所にたどり着くとそこには社などなく代わりに木材が積み重なった瓦礫の山があった。そしてその上に巨大な邪竜の姿があった。
大地を踏みしめる度に振動が起こる太い足が四脚、歩く度に大聞き振り回さられる太い尻尾は8つに分かれていた。そして尻尾の数と同じく大きな胴体から伸びる八本の首をゆらゆらとさせながら私達の前に現れた。
邪竜の体や首には苔や岩、杉の木などが乱雑に張り付いてる。ときおり見える鱗は泥で汚れている。大きな体の背中には背骨に沿って金色の筋が通っている。
「でたな八岐大蛇……」
「ああ俺たち超越者が倒すはずだったクソ野郎だ!」
「腕がなりますわね……」
「はえ~でっかいね~何たべて生きてるんだろ?」
「アリッサ私に緊張感がないみたいな事いってましたわよね!あなたも大概じゃない!」
邪竜伝オンラインのワールドボス、邪竜ヤマタノオロチが私達の前にその姿を現した!
[転移金属札]と[記録金属札]は外道丸さんが暇な3年の間にスキルを入れ替えて作り溜めした物で現在は生産されていない貴重品なので基本的にアリッサの転移門頼りです。
次回は邪竜戦です。