あっさり解決...するわけがない
安心しきってゆっくりと進めていた歩みを加速させる。村長の家までは100メートルほど。とにかく色々と聞きたいことは山積みだ。村人達の表情を無理やり変えてしまうような魔法使いについても早急に手立てをうつなり、しっぽを掴むなりしたい所だが...
「勇者様ご覚悟を!」
急に背後から叫び声がしたかと思えば、短剣を持った少女が飛び出してきた。少女にしては余りにも速すぎる足の速さに雅も対応が遅れる___
「あーあ...」
次の瞬間ヒビキは脇腹に剣を刺され地面に崩れた。
首の次は脇腹で、これまた違った痛みがする。胃腸は突然のアクシデントに痛々しく悲鳴を上げた。血管は年中無休が仇となり、血液はいとも簡単に吹き出した。崩れ落ちた瞬間にさらに深く刺さった短剣が肉を抉る痛み、だがそれらもあまりの痛さをカバーするために脳が異常な量のドーパミン等を分泌したであろうタイミングまでのほぼ一瞬でしかなかった。
本能的な最期を悟り、せめて苦しまないようにという人体最期の自身への最上級のケア。最上級であり最後の手である。そのシステムを使い果してしまった以上、もう死はすぐそこということだ。
ボスタルからこの大陸に渡ってから2度目の死を体験することになってしまったが、異世界に来た時点で分かっていた。どうせ何十回、何百回と殺されてしまうのだ。それが『死んで生き返ることのできる勇者』の使命であると。
僅かに残る意意識の中、駆け寄ってきた雅は能力をしっているため、とても落ち着いていた。
「次は...あの女の子を殺すってことかしら?」
その言葉には『殺さねばならないのか』という半信半疑の意味が込められていたことにかろうじて気づくことができた。
周囲では村人達が勇者殺害の恐怖に混乱する中、俺は死に様としては最上級の見送り方である『ヒロインの膝枕』というシュチュエーションで絶命した___
~~~~~
さて、俺はあと何回死んでこの地方を攻略できるのか。それは神のみとは言わず、未来予知の達人なら大まかであれ前後の数くらい当てられるのかもしれない。
『あなたは何回だと思いますかっ!?』
復活するまでの間の意識の中、第三者へのインタビューのつもりで宙に話しかけてみる。
現在死数カウンターは02!見事に当てた方には抽選で1名様にボスタル旅行&クリスタルなヒビキ君が送られます!
そんな偽番組があれば楽しいかな...と思いながら、遡った先の身体へと意識が繋がる___
~~~~~
「うわっ!」
突然戻ってきた身体の感覚、さっきぶりなだけに少し違う人の身体ようにも思えて一瞬寝ぼけたように驚く。さっき死に際で膝枕してくれた雅さんは大体お察ししてくれていた。
「何?また死んだ?」
ええと...状況を整理するとこの雅は能力が発動したということを知らされだ後の雅だ。
生き返りという非現実的現象、それは便利に見えるかもしれないが『人としての感覚を狂わされること』も同時に発生することも注意しなければならない。
さっき俺が死んだ時、殺しに来た女の子は酷く焦ったような動きをした。さらに村人達は俺の死をしっかりと恐れた。ということは真犯人はあの一見何処にでもいそうな女児ということになる...が、雅の最後の一言が引っかかった。
ヒビキ自身としても飛びつかれてものすごい力で短剣を刺された。あれは少女の持つ力ではないと思われる。となるとだ...
大きなため息をつかざるを得ない。
「操りかぁ〜」
これは悪魔3代卑怯戦法その2である『むやみやったら人間を利用する点』といえる。ちなみにその1は『手数』、その3はボス補正の『逃げられない』だ。
特にRPGのボス戦いをする度に逃げられないのはなんとも主人公達に対し、いたたまれない気分になってしまう。よりによってコイツかよと言わんばかりにデカくてドロドロしてて臭そうなボスをなぜ勇者が倒さねばならないのか。別に王様の兵隊に頼ろうが、勝手に抜けやがた某ナッツ泥棒に頼ろうが勝手なはずなのに。
だか俺は『尊敬する人物は誰ですか』と言われる度に『RPGの勇者御一行!』と答えそうになってしまう。実際はまぁ王道の非差別を説くような名言をお残しになられた福沢さん(と言っておけば)間違いないだろう。まぁその方がお作りなさった学び舎は人の上に立つ者しか入れない点はこの場では考慮しないものとする。
これから先はこれまで以上に厄介だ。動き始めたソールを操り人形と認識したうえで戦うのとは別であり、まずあの群衆の中で少女を発見し、かつ安全に彼女を気絶させるのが1番だろう。
なんたって鍛えられたゴリラと村の幼女とでは防御魔法をかけたメタルな属性と梱包されていないワレモノのような、天と地程の差があるのだから!




