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3-4勇者、石焼き芋体験をする

砂漠から森に走り込むと、そこは逆に凍えそうなほど寒い針葉樹林だった。


「はあっ!はあっ!ヒビキ!着いたわ...よ?」


「...」


「ヒビキ?」


恐る恐る背後を見るとヒビキが消えている。一瞬石焼き芋ならぬ砂焼きヒビキを作ってしまったのではと通ってきた道を見渡すが、見当たらない。


だが次の瞬間ロープが揺れた。


不自然な程に砂漠と森林が別れている境目は見事にロープの中心に跨がれており、ヒビキはまだ砂漠ビーチに取り残され、生き埋めになりかけている。


「ごぼぼぼぼ...この砂っ...!深いっ!...」


「今引き上げるからね...!」


くたくたの身体にムチを打ち、最後の力で引き上げる。


「ごぼっ!ごぼっ!」


救出されたヒビキの口からはすごい量の砂が吐き出され、鼻や耳からもザラザラと乾いた砂がでてきた。


「(砂地で溺れるのは川よりも危険だっただとっ...!?)」


やっとあらかたの砂を出し切ったようで、喉に片手を当て、涙目で喘鳴(ぜんめい)のような音をたてながら呼吸を繰り返す。まだ少しずつ口からは砂が出ている。


「だ、大丈夫?」


「死ぬかと思たで...」


ヒビキはMではないので苦しいのは嫌いだ。ハッキリ言って今回はグリーンサイバーボックススカイダイビング(名前長いなおい)の転落死よりもっとタチが悪かった。


『(この写真は脅しに使えるわね。)』


シャッターチャンスを逃さないレタは...


【男の子好きなおじさんが好きそうなシーンの写真を手に入れた!】


『(舌まで出して嘔吐くようにして涙ぐんでるのはGoodよ。性癖の歪んだ上級者からの価値は跳ね上がるわ。)』


不意にレタは背後に視線を感じたが気のせいだろう。


こんな極寒の森では案の定、レタの空間分析でも人影らしきものの反応は出ていない。悪いことを考えている時は決まって何者かの視線は感じるものなのだ___


*****


「ん〜で、ここってこんな変な土地なのか?」


この余りにもハッキリとした熱帯(乾燥帯)と寒帯の境目の存在は

現実世界では考えられないことだ。


「ここは至って普通の土地で強いて言うならボスタルよりも少しだけ寒いってぐらいだと思うわ。これは異常事態よ。」


『雅はよく知ってるわね。それで合ってるわ。』


「本を読むのが好きなだけよ。」


照れる雅の後ろでマンゴーはげっそりとしながら忘れ去られたグリーンテントボックス(破壊済み)についてどう修復しようかと思い悩んでいた。


(あとでよしよししてあげなくちゃな...)


少し黙って考えていたレタだが、結論には達することが出来なかったようだ。


「結論はそんなに急がなくてもいいと思うわ。まずはあそこの村で話を聞いてみましょう。」


雅の指さす先に、何百メートルか先にボスタルよりも小さな村があった。外から見ただけでは曇天の影響からか、全く活気が無いように見える。


冷たい風が吹く度に、薄着の2人の肌は悲鳴をあげるように寒さと共に痛みを脳へと伝えた。脱水を免れた次は凍死もありうるほどの寒さ、急がなくてはと2人は歩みを進めた___


〜〜〜〜〜


「これはこれでキツいわね...感覚が無くなってきたわ。」


「あーもう無理!マンゴーボックス!」


『がってん承知!暖を取りやすいように小型ボックスにするよ!』


「中で取り敢えず焚き火だ〜!」


どっかの海産物の名前のアニメのように2人とウサギと紙はなだれ込む。


空腹と寒さで完全に野生のチンパンジー化しつつあるヒビキは小さな箱の中で袋からキャンプセットを出して無造作に木を積み上げ、火を放とうとした。


『おのれ勇者め!我々まで燃やす気か!』


思わぬ主人公の裏切りかと全員が身構えたが、目が逝ってしまっているので完全に混乱しているだけだとわかる。


とりあえずヒビキからマッチのような道具を取り上げ、代わりに雅が剣をテントの中央に置く。


「少しだけ魔力を込めて発熱させたわ。」


一瞬で発された熱は部屋を適度に温め、残りの熱はじわじわと剣から発されている。


「あ〜助かった〜。今日はソール兄さんから貰った加工肉とペェアンにすっか!」


実はここでキャンプするのには訳がある。そろそろセーブしておきたかったのだ。意図的に繰り返し死ねば何日も遡るが、予期せぬ死でうーやん酔いや砂漠溺れは体験したくないからだ。


そう、こまめにセーブ。まさにチキンプレイということさ。




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