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3-2レタブレット

レタの紙にスマホのキーボードのようにキーが黒線で浮かび上がる。やったら上の方に出ていること以外に変わったところはない。


「なんでこんな上なんすか...」


『ドアホ!レディーの髪の毛触れるだけマシと思えデリカシーナシ男!』


いきなりの辛辣なコメントにものすごい精神的ダメージを食らったんだが、もしやこれはネット通信の副作用なのだろうか?いくら親しくなったからといってこんなに言葉を荒らげるレタは初めて見た。とりあえず顔に巻き付かれて窒息死する前に手早く検索しよう。


最初は髪(に当たる部分)を弄られ、不機嫌そうだったが、紙に検索結果が現れてからが地獄だった。少しでも触ればレタがプルプル震えている。


「(うっわぁ、いくら女でも紙だから嬉しくねぇ...)」


すかさず検索エンジンに『エロガキ ぶっ█す』と書かれて慌てて検索の手を早める。


『ヒビキ〜コレ!』


マンゴーに渡されたのは、例の(ただ間抜けだった)自分が苦しめられた錬金釜、『まぜーるくん』で作っていたレタ用の紙だ。サイズはレタにピッタリで、再生紙のようにくすんだ色の見た目とは裏腹に表面はツルツルしている。試しにそっと上から掛けてみるとかなり落ち着いたようだ。


なるほど、これが服みたいになってんだな。それでも動けない女性の体を一方的に触り続けるなんて気が引ける。流石にコレでゲームしてもいいと言われてもする気にはなれない。


「それで?良さそうなのは見つかった?」


「うーんと...これだっ!」


ようやく新魔法として使えそうな演奏記号を発見した。


その名も『トレモロ』。『トリル』という演奏記号でも良さそうだが、こちらの方が一~二音に効力を発揮する上で使いやすそうだ。今回は単に音符を震わせるだけだからトレモロで大丈夫そうだもしこの先仲間が二段階攻撃や三段階攻撃を身につけたら『トリル』でもいいかもしれない。トリルは必ず複数の音符に作用する演奏記号だ。...なはず。


効果はその音を急速に(複数の場合は交互で急速に)半復させるというもの。主に弦楽器で使われるようだがそこいらは気にしないでおく。今回は単に『音符を反復≒震わせる』だけだからトレモロで大丈夫そう。


検索が終わった瞬間レタは落ち着いたらしく、口調が悪かった自分の行動履歴を見てげっそりしている。


村から出発宣言してはや30分、移動距離0メートル...


とりあえず急いで馬の石像にピアノ&トレモロのかかった音符を当ててみた。後ろのボスタル村では農婦がこちらに向かって数人組で小話をしている。モタモタしていては勇者としての威厳が危うくなってきたみたいだ。


繰り返される細かな振動によって石はひび割れ、崩れてゆく___


一回り小さくなった馬の像は白く輝き、ぬいぐるみのような子馬が現れた。



「輝くように真っ白でさらさらとした毛並み...透き通った目、ぬいぐるみのように大きな胴体に短い足...間違いない、これは天馬の子供だわ!ジジ様の書斎におかれていた資料にあったものにそっくり!」


「へ〜天馬かぁ、名前からしてもいかにも珍しそ〜」


軽く頭を撫でてみると気持ちよさそうに目を細めて手に頬ずりをしてきた。なんと愛くるしいのだろうか...もふもふ感もマンゴーといい勝負をしている。


やーけに雅は目をキラキラさせている。かなり興奮しているみたいだ。


「珍しいも何も絶滅種よ!?」


「えっ、こんなモッフなフレンズが...」


「ええ、本来ほぼ永遠の寿命を持つ天馬は高度な魔法まで使うことが出来た。ただ外部からの力にはそこまで耐性はなかったから大量に狩られ、薬として珍重されていたらしいわ。個体数の減少に焦った人々は他の馬との交配もしてみたものの、失敗。最後に魔界へと走る数匹が目撃されたのは数百年前のことよ。」


「ふーん、つまり今は魔界にいると。」


「可能性は高そうね。向こうも住んでいるのが悪魔なだけであって平和らしいわ。人間がちょっかい出さない限り知能を持つ高等悪魔が攻めてくるなんてことはないらしくて、たまーに人間界に紛れて来たのが魔界でもトップクラスに強い場合がある。それがいわゆる魔王よ。」


「じゃ、あの地下の悪魔は?」


「あれはたまたま言葉を話す種族なだけであって強さは下の上〜中級の下ぐらいじゃないかしら?」


なんてこったい。まさかあんなのが地獄にうようよいるとは...この世界に住みついてるのは穏やかな奴ららしいが、今回のように近くに強い悪魔がいると影響されて変化するらしい。


「可哀想に...魔界で捕まって何百年と石に閉じ込められていたのぬ...」


「お前も大変だったんだな。」


気づけば俺は無意識に気持ちよさそうにする天馬の頭を撫でながらこう呟いていた___



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