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炎奏曲『桜吹雪』

第2章『ハジメテノデアイ編』、最後の決戦です!

1曲目...といっても超簡単で、題名らしきものは見当たらない。長さも『練習曲ドレミファソラシド』と同じで、さらに和音も少なく演奏記号も無い。但し、指示には見覚えのある字で『ペダルベタ踏み』と表記されている。



本気で踏んで最初の音を弾いた瞬間、単なる四分音符とは桁違いのまばゆい光が雅の耳飾り目掛けて飛び出した。



「なるほど...めちゃくちゃ魔力を消費するってワケね。」



まぁ道具に『魔力草』が存在した時点である程度察しはついていたが、魔法を使うと魔力が消費されるらしい。同じ四分音符でもピアニッシモ・レジェーロにしただけで直感的にペダルを踏み込んだのにはそれだけ”魔力”を消費すると思ったからだろう。



1つ音符を奏でるだけで魔力はごっそり削られ、貧血のようなめまいや立ちくらみは目に見えて悪化する。



悪魔が視界を取り戻した瞬間、最後の音符が雅の元へ到達した。



「ようやく終わったな...あとは...任せ...た」



横にいたマンゴーが無理やり口に魔力草を押し込んできたため、めまいや立ちくらみが瞬時に回復した。意識がはっきりとしてくる___



「(いや死んだらやり直しじゃねーか!)」



しかも宿で復活済み、その後一睡もしていない...つまり...



『なんと今なら野宿した次の日の朝の丘の上まで遡れます!』という最っ高に嬉しくない条件に『もう一度あの毒ボールコントを!』という史上最悪の特典付きだ。何としてでも回避しなくては...



[おのれ勇者!よくも高貴な俺様を侮辱したな!許さん!]



だがそんな願望今更できたところで悪魔は攻撃モーションに入っている。さらに衣装のせいで関節が動かしにくい。



あっ、これは死にましたわ(確信)



オタクに耐久性を求めてはいけない。スライムにも敗北を喫することができるレベルの貧弱さを誇る。ご丁寧にフード女が肉体強化してくれたなんて話は聞いていない。我が2回目の異世界生活fin。大人しくスタートに帰りましょう。



「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏...アーメンアーメンアーメン...仏説摩訶般若波羅...」



多方面の宗教関係者から苦情が来るでしょうがなんとなく尊いとされる言葉を思いつく限り唱えときゃ救われるでしょうというクソ安易すぎる考えでございます。どうかお許しください。



色々お察しして両手を合わせて無抵抗で殺されようとしたが、ここまで腹を括ってから世界は俺を裏切るみたいだ。



悪魔の背中から血飛沫が飛び散る___



「なに勝手に悟ってんのよ!」



呆れ顔の彼女は燃える剣を手にしていた。



日本刀___



侍の時代劇で最強の武器、アメリカンなジャパニーズファンが大喜び、やたら観光名所のお土産屋に置いてあるミニチュア、人を切る以外にも将棋の碁盤へ漆を付ける作業にも使われる。



俺の経験上見聞きしてきた数あるシーンの中で【銃】の次に登場頻度が多い【刀】だけどさすがは異世界、燃えていて柄はピンク色というこれまた真剣ガチ勢に怒られそうなデザインだが。



服装も動きやすそうな和服...だろうか?何処ぞの空飛ぶ巫女さんみたいな感じで袖は申し訳程度しか無く、まさに最軽量デザインだ。



『Oh! Japanese! Kunoichi!』



そう言えば日本文化を知りながらもこの世界と現実の間で10年間暮らしていたウサギとか仲間にいましたねぇ。骨抜きメロメロウサギは雅の足元を一瞬何回か回った。



「なーんかコレ使いやすいのよね。そりゃ短剣振ってもしっくりこないわけだわ。」



[ぐっ...今のはかなり痛かったぞ!]



「チッ、しぶといな」



「アイツ地味に硬いわよ。どうにかして動きを封じないと...」



そう呟きながら雅は素早く回り込み、力を込めて悪魔の両足を切り落とした。



[うぉっ!?だがじきに治るぜ!]



丸太のような腕で逆立ちしながら超高速で移動し、こちらと距離を離して数秒で足が生えてきた。



「ひっ...」



雅が青ざめている理由は悪魔のタフさより再生する見た目のグロテスクさだろう。



青ざめる雅の方へこっそり腕を回して雅の剣にそっと指を触れてみると鋭い痛みが走った。



「あっち!これ熱持ってるのかよ!」



「あ、そうなの?私が使用者だからか全く感じなかったわ。」



[はぁ...そろそろ死んでもらおうか?]



興奮した怒りとは別の冷酷な苛立ちを感じ始めたようで、敵を雅か俺ではなく、雅と俺という認識にチェンジし、身体中に力を込め、筋肉をフル稼働させたいかにも最終形態みたいな感じになった。



だがノープロブレム!ウチの剣士が魔法の剣ですっぱり切り落としてくれるからね!



「はぁーん??雑ぁっ魚そう!雅ちゃん!やっちゃって!」



「それは無理よ。」



「え?」



イキリ勇者の味方をこき使って自分はいいことを言った風による興奮は急激にしぼんだ。



「さっき足を切る時かなり本気で刀を振ったの。だからあんなに太いのは断ち切れない!」



雅もかなり焦り始めているみたいだ。ここは..もうアレをお披露目しちゃおうかなと思う。



「チッチッチッ、こんなこともあろうかと奥の手を考えてます。新曲発表〜!」



「こんなタイミングで何呑気に...四分音符飛ばしまくってもせいぜいかすり傷でしょう!?」



「まぁ戦いながら聞いてちょうだいな!」



俺がさっきから試したくてウズウズしていた2曲目がこれだ。スピード速めで曲も長いから音符も多め、更に特徴的なのが『演奏記号』の多さだろう。



ほぼ即興で『練習曲ドレミファソラシド』なんかと比べて難易度が数倍〜十数倍まで高い曲を弾くことになるので、内心一番緊張して焦っていたのは自分かもしれない。



炎奏曲【桜吹雪】___



初手からいきなりprestoプレスト(急速に)。次にfフォルテ(強く)。そして最後にpassionateパッショネート(情熱的に)の指示のついた数小節を弾けば終わり。



この作曲者さんはなかなか酷なようで、かなりの数の四分音符と八分音符が組み合わさってできている。だが勝つための手段がコレしかないのであれば、失敗に怖気付くわけにもいけない。



雅が悪魔に倒される前に、何としてでも演奏を届けなくてはと必死に弾きはじめる___



集中力を高めて緊張ガッチガチで弾いたため、長いのか短いのか分からなかったが。数十秒くらいの演奏になっているはずだ。



そもそも文句を言いたいのだがprestoはかなりの速さを誇る。prestoは♩=166~200で、1分間で166回〜200回四分音符が弾かれる速さ。どっかの方角みたいなシリーズ名のメイドさんのテーマソングのアレンジ曲が♩=180くらいだったはず。



弾き終わって手がクタクタで文句をブツブツ言ってしまった。だが戦闘の方は心配ないようだ。



雅のスピードは跳ね上がり、剣の斬れ味等も上昇している。


完全にこちらのペースへと引き込み、敵は切られては再生を繰り返す消耗戦となる。



だが、敵の再生速度に適応能力が働き、回復速度が上回る。数秒でとうとう悪魔の四肢を切り落としてもバランスを崩すことなく新しい手足が出来上がる状態となってしまった。



[げげッ...ここまで早く回復しても攻撃のスキが無いとは...]



悪魔は人間離れした反射神経で、風に舞う大量の桜吹雪のように絶え間ない剣の太刀筋の合間を縫い、廊下へと駆け出す。慌てて阻止しようと足を切るが、次の瞬間に回復してしまう。



[もう時間のかかる計画はおしまいだっ!今から人間を殺していく!]



「お待ちなさいっ!」



その瞬間、最後の数小節のpassionateの部分が雅の身体に当たった___



「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」



叫びと共に放たれた、燃え盛る剣による1本の太刀筋は悪魔の身体で1番太くなっている脇腹を捉え反対側まで一気に切り裂いた___



断末魔と共に悪魔の身体は燃えながら地面へと落ちる。



[ギャイィィィィィィィィ!!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!]



「はぁ...はぁ...そりゃ生きたまま身体を焼かれるんですもの。痛いでしょうね。」



俺も恐る恐る悪魔と雅の方へ近づく。



「まぁ武器の覚醒を手伝った術者が言うのはなんですけどコレえっぐいですね...」



雅の剣の火は傷口に塩どころではく、傷口をそのまま豪快にグリルしてしまう訳だが、悪魔の身体を燃やし尽くそうとする訳では無い。ただ傷口を永遠と熱し続けるのだ。その証拠にいくら経っても火は広まらず、弱まりそうにもなかった。



だが腹部から上下に切断され、傷口を燃やされながら尚も生き続ける悪魔の生命力にも目を見張るものがあった。もしこんなのが地上で殺戮の限りを尽くすとなればこの地方は人間にとって悲惨な結末を迎えるだろう。



ちなみに...だが、俺の奥の手(仮)とは音符に演奏記号を織り交ぜて味方に当てるというものだった。幸いなことに対象を倒すという意思がない限り味方に音符が当たった瞬間の衝撃は無いようで、一時的ではあるが、選ぶ演奏記号によって味方の様々なステータスを細かく調整することが出来る。



別に1種類ずつ演奏記号+音符飛でばしてもいいのだが、どこからともなく現れたこの曲こそが雅のための最適な曲なのだろう。



だがこの魔法や楽器にはまだまだ研究が必要そうだ。



「でもどうして再生しないのかしら?」



「あまりの痛みで再生に意識が回らないのか、それともここが弱点だったのか、はたまた傷口が燃え続けて細胞が再生できないのか。ハッキリとは分からんけど無力化できたっぽいな。」



かくして最初のボス戦は終結、この地方の裏で密かに進められていたおぞましい悪魔の計画は阻止された___

昨日寝ぼけてTwitterで「これで2章完結!」なんて呟きましたが、実際は明日投稿の『その後』まであります(w)。

2章を終えるまで2ヶ月近くかかりましたが、ようやく自分が書きたいと思う状況のスタートラインに立つことができます。つまりここまでは私の脳内空想の”前置き”に過ぎないということです。どうかこれからも末永く『死んで始めた異世界前奏曲』をよろしくお願いします!

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