洞察力
なんだかほかの家と比べて少し暗い雰囲気がする。
あぁ、こんなに天気がいい昼なのに2階の向かって右側の部屋にカーテンがかかっているからか。
「あれがソールの部屋。実は彼は三日前から行方不明なの...ジジ様に相談したら秘密にしろと言われたわ...探そうともして下さらないなんて...あんまりよ...」
ついにこらえきれなくなった雅は静かに泣き始めた。客として招かれる身であるヒビキがするのもおかしな話ではあるが、ヒビキは雅を家の中へとそっと促した___
・・・・・
雅はだいぶ落ち着いたようで、奥の部屋で何かを取り出してきた。
「これがこの村周辺の地図よ」
手書き感溢れる地図ではあるが、ぱっと見かなり正確なように見える。丘の向こう側には小さな森があるようだ。
「この丘のボスタル村の方向以外は木が生えているのをヒビキも見たと思う。その木が生えている方面以外に森を抜けた先には3の村が点在している。ソールに聞いた話によればそれらの村のほとんどが魔物の被害を受けているらしいわ。」
『え?さっきジジさんに私は知らなかったって言ってたよね?』
村長の家の扉の外でちゃっかりマンゴーも話を聞いていたらしい。まさに壁に耳ありである。
「『知らなかった』とは言ってないわ。私はなぜ秘密にしたのかと聞いたの。下手に相手の予想外なことをわざわざひけらかして反感をかったら大変だからね」
つまりこの女は自分にしか知らないと思っていた状況で、村長も同じ情報を持っていたということを知っても顔色一つ変えず、無知な女を演じたわけだ。俺なら「えっ!村長さんもご存知でしたか!」って言ってしまいそう...冷静な女は恐ろしい。
「ソールが行方不明になったのは三日前の朝方、あの人のことだから無言で出ていくことは無いし、仕事で泊まり込みになったとしても二日で帰ってこれる。だから私も今日の朝初めて村長に相談したわけ。」
「遅れているって考えられなくないか?」
「彼の仕事はさっきの地図にある村で1週間に1回1日かけて丘の下の森の外を一周して手紙とか小さな荷物を届けたり、受け取ったりするの。今彼の仕事で回る3つの村のうち南方面は壊滅的な被害を受けて数少ない生き残りの方々はその隣村に避難しているそうよ。森がかなり小さいから等間隔に東西と南に位置する村を回っても1日で簡単に回ることができるわ。」
やはり異世界なだけあってかなり変わった地形のようだ。
「他の2つの村の同業者さんに聞いても一本道なのにすれ違ったり、宿に泊まったりするのは見ていなかったの。」
「つまり、何処にも居ない。か...」
「そういうこと。森の中は通ることが禁止されているわ。言い伝えで森の中央にそびえる屋敷は魔物の巣だという噂があるの。」
「だから雅は俺たちを見ていたのか?」
「違うわ。今朝起きたら丘の上にテントみたいなのが見えたから兄かと思ってジジ様に会った後急いで向かったの。そしたら見慣れない旅人だったから観察してたの。」
続けざまに「でも_」と言いながら少し視線を落としながらもじもじと話した。
「あなた達が魔物や賊だとは思わなかったの。なんとなくだけどね...あぁ!それであの武器なんだけど、音が出るから楽器っぽいけどこの世界では見たことが無いから貴方異世界人でしょう!?」
後半少し興奮気味に目を輝かせていたが、この女やけに鋭いな...
「ははっ...そういうことになるのかな...?」
ちょっとびっくりして乾いた笑い声を出してしまった。




