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脳筋トリオ

昼過ぎの大衆食堂。 ピーク時は戦場さながらになるが、今はずいぶんと落ち着いている。

その食堂の隅のテーブルが彼らの特等席だ。

彼らの武器が大きく、邪魔になるためその席以外店員が通してくれないのだ。

「しっかし、どーすんよ?」

行儀わるく、スプーンをくわえて上下させてアーヴィンがうなっている。

「どう、とは、あの遺跡のことですか?」

食後のお茶を楽しみながらグリフがたずねる。

「いやー、私達だけじゃ攻略できそうにないじゃん」

シャルロッテもお気に入りのナイフをもてあそびながら口を開く。

「エンチャントのスクロールを大量に持ち込めばいけそうですけどね」

「……で、その金はあるのかい?」

「ありません」と「ねーな」がきれいにハモる。

「なんだよー。 せっかく盗賊ギルドから買った情報だってーのに、これじゃ他のやつらに取られちまう」

「だから、魔法職で募集してんじゃねーか」

「僕らも結構無茶やってきましたから、今冒険者やってる人たちはまず来てくれないでしょうね」

「……だから、ルーキーでもいいって書いてるじゃんよ」

「一応言っとくけど、私達って『そこそこ』の冒険者だからね? 私達がよくても向こうが断ると思うよ」

「あー、ちくしょう。 八方塞じゃねぇか」

3人がうなっていると店員が近づいてきた。

「もう、食器を下げてもよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です。 ところで今夜は空いています? お洒落な酒場を見つけましたので一緒にどうでしょうか?」

「ごめんなさい、夜もお仕事入れてるんですよ」

軽くあしらい、店員は食器を持って奥へ帰っていった。

「あんたって……」

「……ホント見境ねーな」

「かわいい彼女がいけないのです。 僕はわるくありません」

「まあ、かわいいは正義だけどねぇ」

「……そーいや、お前も道具屋の丁稚にこなかけてたよな」

「かわいいは正義!」

「かわいいは正義!」

2人はいえーいといいながらテーブルを挟んででハイタッチをしている。

「ったく、馬鹿が2人もいると世話ねーぜ」

「あなたにだけは言われたくありません」と「お前にだけは言われたくない」がこれまたきれいにハモった。

「この前の依頼主の領主をお前がぶん殴って、ただ働きになったのは結構痛かったんだぞ!」

「ホントですよ! アレがなければ3日間水だけってのもなかったんですよ!」

「……だってむかついたんだからしゃーねーだろ。 お前らだって気に食わないって言ってたじゃねーか」

「まあ、そうですけど。 あの領主は人種差別的な発言が多くて隕石でも降ってきて死なないかなと何度も思いましたね」

「……やばい。 思い出したらイライラしてきた。 どーすんだよ、アーヴィン!」

「知るか! そんなにむかつくなら今からまた殴りにいくか!?」

そういうと、3人とも口が止まる。

皆が何かを考えてるような感じで口を閉ざし、しばらく静まり返る。

店員もさっきまで喧しかった彼らが暴れださないかひやひや遠くから眺めている。

そこにぽつりとアーヴィンが口を開く。

「……俺、今すげー良い事言わなかったか?」

「……ですね。 おかげで、良い感じのサンドバッグが見つかりました」

「……流石に殺すのまずいから途中で木剣買っていこうぜー」

3人が立ち上がると物陰で見ていた店員が引っ込んでいった。

「親父、勘定だ!」

食堂の店主は慣れた風に対応する。

「お三方、今からベルモルトの領主さんの所へ御用時ですかい?」

「はい、日ごろの鬱憤を晴らそうかと」

「ついでに親父さんの分も殴ってきてやるよ」

「カッカッカッカッ。 それじゃ一発お願いしましょうかね」

「任せておけってんだ。 んじゃ、朗報をまっててくれや」


………

……


彼らが去った後に店員が店主に話しかける。

「あのー、よかったんですか? あれ」

「まあ、よかねぇだろうな」

「え、じゃあ、なんで止めなかったんです?」

「あー、そういえばお前さんは最近こっちに来たって言ってたか」

「はい、西の方から出稼ぎで」

「あいつらは、ある意味、盗賊ギルドよりやべぇぞ」

店主がにやりと顔を歪めながら答える。

「……そんなにやばいんですか?」

「『並み居る魔物を薙ぎ倒し、気に入らないやつらを踏み潰す。 奴等が噂の破壊魔だ』ってな」

「え!? あの詩は彼らの話なんですか!?」

「まあ、そう言うことになってるわな。 どこまで本当かは知らんがな」

「……アレが噂の脳筋トリオ……」

名声というか悪行というか、彼らの名は『そこそこ』一般人の間でも知られていた。

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