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始まり

冒険者に命を助けてもらった。 それが私が冒険者を志した理由だ。


………

……


村がゴブリンとオークの混合部隊に襲われて人が次々に殺されていった。

オークに吹き飛ばされて、朦朧とした意識の中で『次は私の番か』と死を覚悟したときだった。

砂埃と共に太陽の光と私の視界を遮る影が現れた。

私の目に映っていたのは斧を振り上げたオークではなく、大きな盾でオークを弾き飛ばした男の姿だった。

「人間、そんな簡単にあきらめるモンじゃねぇぞ」

男は背中越しで声を発する。

すると私の後ろから別の男の声がした。

「まったくですね。 誰が言ったか『死んで花見が咲くものか』と言うやつです」

さらに別の、今度は女の声が聞こえた。

「なーに言ってんだ。 人間死んでも花見を咲かせなくちゃいけねーんだぞ」

後ろから聞こえた2つの声の主は目の前の盾を構えた男の両脇に付く。

「おい、シャル。 そいつは華々しい英雄様の死に様だぜ」

「ですね。 私たち冒険者は生き汚く、這いづくばって、泥を啜ってでも生きねばなりません」

「グリフもアーヴィンも華がないね。 だから女が寄ってこないんだよ」

「大きなお世話です」と「でっけぇお世話だ」がハモる。

漫才のようなやり取りではあるが、互いに信頼しているような雰囲気が3人から出ている。

「雑談は置いといて、仕事すんぞ。 ぱっと見、ゴブが20とオークが7ってところか」

「まあ、もうチョイ居そうな気がするけど、誤差の範囲だと思う」

「もしかしたら、ゴブリンソーサラーとかオーガとか居るかもしれません。 魔法には警戒して置いてください」

「とろっくせぇ魔道士に遅れを取るかよ。 オークは俺が抑える。 てめぇらはゴブを処理してろ」

「それは構いませんが、今回の勝利条件はどうします?」

「スコアが高いヤツが勝ち。 スコアはゴブが1でオークが3、ゴブサラで2、オーガで5でどーよ」

「オーケー。 じゃあ、スコアアタックだ。 制限時間は10分だな」

盾の男がそういうともう一人の男が両手剣、女の方はバトルハンマーを構え、皆別々の方向へ走り出した。

それからは圧巻だった。

盾の男は攻撃を盾で弾き、片手剣で致命傷を与える。

両手剣の男は流れる様な動きで一刀の元に次々と敵を屠る。

ハンマーの女は敵の鎧や兜の上からハンマーを振り下ろし文字通り、『叩き潰し』ていた。

その光景を見て助かったと思い、私は完全に気を失った。


………

……


「なるほど、なるほどー。 それでココに来たわけねー」

冒険者の宿ティガー。 その宿の女将に私がここに来た一部始終を語る。

噂でこの街にある冒険者の宿に彼らが居るという話を耳にした。

「何か知っている事はないでしょうか?」

髪の毛をくるくると弄びながら女将はなにやら考えているようだ。

「話を聞く限りじゃ、ウチで泊まってるコ達だと思うけど……」

「ホントですか!?」

「多分ねー。 夕方には戻ると思うよー」

いきなり当たりだ。 私の勘もそう捨てたものじゃないと思う。

「ところでなんだけどー」

「はい? なんでしょうか?」

「見たところ魔法職みたいだし、あのコ達のパーティに入ってみない?」

あの3人に駆け出しの人間が付いていけるわけがない。

「む、無理ですよ……」

「大丈夫、大丈夫ー。 あのコ達もルーキーでも構わないって言ってたし」

あの人達に助けれれて、あの人達のようになりたいと思った。

正直、あの人達と同じように戦う自分の姿はこれっぽっちも想像できない。

だけど、憧れて目標とした人達と一緒に冒険したいという気持ちもある。

「じゃあー、お試しに一ヶ月だけやってみるってのはどう?」

「一ヶ月?」

「ええそうよー。 一ヶ月やってみてダメそうなら別のパーティ紹介してあげるわー」

「なるほど。 それでしたらお願いします」

「はい、決まりねー。 じゃあ、冒険者登録するからこの紙に記入お願いねー」

特に考える必要もなく、書き込んでいく。

「はい、書き終わりました」

「ありがとー。 じゃあ、一応確認ね」

「えーと、名前がエチカさんで出身が東のタナーク村ね」

「はい。 ただ、タナーク村はなくなってしまいましたが」

「大丈夫よー。 冒険者って家柄とか出身なんかより現場での能力で評価されるからー」

とりわけ気にしたふうでもなく、次を読み上げていく。

「ジョブが神官さんねー。 それで信仰している神様はー……。 ……エイジス?」

女将は何度か私の顔と紙をと視線を往復させる。

「……なにかまずかったですか?」

「いえ、まずくはないんだけど。 エイジスっていうと三つ首のエイジスのこと?」

「はいそうです。 私の祖父がエイジスさまの神官でしたので私もそうなりました」

「なるほど、なるほどー。 ごめんなさいね。 このあたりじゃ珍しい神様だから」

三つ首のエイジス。 石造でもほとんど魔物みたいな風貌で作られているし、人気がないのはわかる。

逸話も大賢者や剣聖と比べると月とすっぽんである。

ただ、私も祖父が神官だからで信仰はしていない。 私も祖父同様にエイジスさまが好きなのだ。

「世界は救わないが、この村は救う」そう言って救ったのが東のほうにあった村らしい。

そのおかげで東の私の村周辺では比較的エイジスさまを信仰している家が多かった。

「うん、問題なさそうねー。 それじゃ、あのコ達が着たら教えてあげるから部屋で休んでてねー」

女将から105と書かれた札付きの鍵を貰った。

「部屋は二階の右奥だからねー」

「はい、ありがとうございます」

彼らが来るまで3時間くらい。 少し仮眠を取って休んでも大丈夫かな。

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