雪村真の悩み
それは、魔法力大会を終えてから翌日のことでした。
「田原先輩」
「あっ、雪村。訓練終わり?お疲れ様」
「ちょうど良かった。探しに行く手間がはぶけた」
「ん?私に何か用事??」
珍しいこともあるんだね。と美咲さんは、明日は雪が降るかもしれないとまで思ったのであった。
「相談があるんですけど」
「相談?!雪村が私に!?」
「そんなに驚かなくても」
「あぁ、ごめんごめん。いいよ、これ戻してからでいいなら」
「じゃあ、会議室Bで待ってるんで」と雪村はそう言って去って行った。
そして、美咲さんが会議室Bへとやって来た。
「おまたせ~さてさて、相談ってなんだい?」
美咲さんは雪村と向き合うよう、席を選び腰を下ろした。
「力輝のことなんですけど」
彼が「力輝」と呼ぶのは初めてだった。いつもは「あんた」とか「彼女」とか言っていたから美咲さんは一瞬「えっ?」と思ってしまったのだが、そこは心の内にしまっておいて・・・
「力輝ちゃんがどうかしたの?」
「・・認めたくないんですけど」
「ふむふむ?」
「橋屋先輩って、たぶん・・・力輝に好意持ってると思うんです」
これは・・・予想外の相談だった。
もっとなんか違うこと予想していた美咲さんは、とりあえず話を進めることにした。
「えっと・・・私知ってたよ」
「・・・・やっぱりそうですよね」
僕だけじゃなかった。と雪村は現実を今受け止めた。
「力輝ちゃんは気づいてないっぽいけどね」
「彼女が気づいてたら、たぶん・・普通に会話しないと思いますよ」
なんとなくわかる気がする。と美咲さんも雪村に同感する。
「雪村~だんだんお兄ちゃんになってきたね~」
「違いますよ」
「妹想いでいいお兄ちゃん」
工藤さんも好きだけど、妹のことも好きなんだね~とからかうと、雪村は顔が真っ赤になってきた。しかし、図星だったのか恥ずかしさのあまりに・・・
「もういいです!!帰ります!!」と会議室を出ようとした。
「あーまってまって!ごめんってごめんってば!」
また新たな彼の一面を見ることができて少々面白がってしまった美咲さんでした。
気を取り直して
「つまり、この間の魔法力大会で力輝ちゃんが橋屋と協力したあたりで気づいたと」
「いや。ずっと前から気づいてましたけど・・」
「う~ん~雪村は橋屋と力輝ちゃんをくっつけたいの?」
「いやだよそんなの!」と立ち上がって断固反対宣言をする雪村
そんなに嫌なのか・・・。美咲さんは驚くがここはあえて言わないでおく。
「じゃあどうしたいの?二人の仲を裂きたいの?お兄ちゃんだから??」
「そういうのじゃないですけど・・・」
「じゃあ、雪村にとって力輝ちゃんってどんな存在?」
「・・・」
なんか言いにくそうなので、美咲さんは質問を変える。
「じゃあ、雪村。橋屋のこと好き?」
「はっ!??嫌い、大嫌い!大大大大だーーーーい嫌い!!」
「そこは答えるんだね」
確かに橋屋は雪村に対してはきつくあたっている感じだからな~。と美咲さんは思う。
「それで、雪村は橋屋が力輝ちゃんに片想いしているのが気に入らないけど、どうした
らいいのかわからなくて私に相談したってことで・・・OK?」
「・・・はい」
ちょっと違うのか、とりあえずそう返事する雪村。
「まぁまぁ、これってあまり手を出さない方がいいと思うけどね。雪村の気持ちもわから
ないってわけじゃないよ?ただこういうのってどう扱っていいのかよくわかんないから
さ」
「・・・・」
「力輝ちゃんに思い切って聞いてみるってのもありだと思うよ?」
「橋屋先輩のことどう思ってる?って?」
「そそ。さりげなく聞くことが一番だよ」
「・・わかりました。本人に聞いてみます」
「ストレートに言うとばれる恐れがあるから、慎重にね!」
「いや、わかってますよ。それぐらい」
と、ここでこの日の相談は終了した。
翌日の夕方。美咲さんは雪村と研究所内で遭遇した。
「聞いてみました」
「どうだった?」
「ふつうらしいです」
「あらま~それなら大丈夫じゃない?」
「・・・」
雪村の悩みはまだまだ続く。




