表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法師Mの物語  作者:
第一章 新たな生活と力輝の過去
7/222

教育係というものは味にもこだわる人だった

受験まで残り日数を切りました。

 工藤さんの授業から今では自習へと変わって、今は会議室ではなく部屋で行っている。

 

 授業がなくなったからと言って気を抜くわけでもなく、ただ一人でひたすら工藤さんの課題に取り掛かる。

 


 時刻は昼の12時になろうとしていた。

 「うっうーーーーっ」

 さすがに目が疲れてきたので、休憩することにした。

 今日は工藤さんがいないから少し気が緩むのかピーン!としていない。

 

 「食堂、行こう」

 ググググっーーーーー


 ちょうど腹の虫もなったところだし、と私は部屋を出て食堂に向かった。


 

 食堂はお昼ということで少し混んでいたが、なんとか席を取ることに成功し

 サバの味噌煮定食を頼んだ。

 工藤さんの和食を食べてからすっかりご飯は和食派となってしまった。

 洋食も食べたことはあるが、最近では彼の作った和食が印象的でつい和食に目が止まってしまうのだ。


 手を合わせて「いただきます」をしようとした時だった。

 「ここにいたか」


 その声に身体がピクッと反応した。そこにいたのは工藤さんだったからだ。

 「部屋にいないからさぼりかと思ったが、昼飯か」

 「うっ。午前中はしっかり課題をしてました。今日は来ないと聞いていたので・・・お昼食べに・・」

 「わかっている。予定が変わったから様子を見に来ただけだ」

 「・・・そうですか」

 

 「どうだ?受験まで残りわずかだが、いけそうか?」

 「・・・ぼちぼちです。苦手分野を一からまたし直している最中で」

 「それはいいことだが、他の分野をおろそかにするのもよくないぞ」

 「・・・はい」

 なんかしょぼん的な空気になってしまった。


 「サバの味噌煮か」

 ここで工藤さんが話を変えてきた。

 「あっ、はい。ここへ来たときちょうど味噌煮頼んでる人見てたら食べたくなっちゃって」

 「ここの味噌煮は美味しいぞ。俺はまだここの味噌煮には勝てないんだ」

 「かっ、勝てない?」

 

 「なんど挑戦してもここの味噌煮の味に近づけない。くっ・・・・なんどレシピを教えてくれと頼んだが、口が堅くて開きもしない」

 なんか知らないけどここまで悔しがっている工藤さんを見るのは、初めてだった。

 いつも上から物を言う感じなのにそんな人の悔しそうな顔を見るのは、意外と珍しいのかもしれないと思った。


 「よし、今日の夕飯は味噌煮にしよう。材料買ってくる」

 「あっ・・・はい」

 「課題終わらせておけよ。6時は戻る」

 「えっ・・・」

 「いいな」

 「はいっ!」

 

 まっ、まさか・・・・・・・


 それから課題を終わらせて、復習やらをしていると6時きっちりに工藤さんはガチャ!と部屋に入ってきた。

 

 そしてなぜ6時にしたのかというと、食堂の味噌煮に近づくにはまず材料からときっちり選んできたためらしい。

 

 課題を終わらせたことだけを伝えると「できたら呼ぶから、それまで自習しろ」と言われて工藤さんは味噌煮準備へ取り掛かって行った。

 

 数時間後に呼ばれたが「やっぱり近づけない」と悩んでいた。

 味噌煮は美味しかったけど、工藤さんの言うとおり食堂の味にはほどとおかった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ