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魔法師Mの物語  作者:
第二章 記憶喪失と兄妹関係
47/222

別に妹だって分かっても、全然嬉しくないんだからね

あれから雪村は、毎日病院を訪れていた。

 コンコンとノックして「どうぞ」と声を聞いてから、扉を開けた。

 

 「ゆきむら?」

 「調子はどう?」

 名前はこの間聞いたのを覚えただけで、記憶はないと思われる。

 いつもはこんなふうにはしゃべらない。本当は来ないつもりだったけど、気になってつい病院へと足を運んでしまったという。


 「ほかのみんなは?」

 「さぁ?そのうちくるんじゃない」

 「そうなんだ」

 あぁ。なんなのだろう、この普通の会話は。いつもだったら・・・。


 「今日は、いかないの?」

 「どこへ?」

 「えっと・・・どこか。学校終わったら・・・「今日は行かないよ。明日は行く」

 「そっか」

 研究所へ行かないのかって聞きたかったのだろう。と雪村は思う。

 

 「あんた、自分の名前覚えてるの?」

 「・・・・」

 すると後ろに病室番号と名前が書いてある方へと顔を向ける。やっぱり覚えていないのか。


 「皆、あんたを力輝って呼んでるけど」

 「・・・みこと。だった気がする」

 「下の名前だけ?苗字は?」

 「・・・・思い出せない」

 「あんた本当に記憶ないの?わざとじゃないよね」

 「うそなんてついてない」

 「じゃあ、早く思い出して」

 「急に言われても・・・こまるよ」

 「雪村」

 「っ!?工藤さん・・いつから?」

 「『あんた、自分の名前覚えてるの?』のあたりからだ」

 なんてベストなタイミングで聞いてるんだ、この人は。と雪村は思った。

 「そうあせっても力輝はお前の事思い出してはくれないだろ。あせらせてお前はどうするつもりだ」

 「・・・失礼します」

 「待て、雪村!」

 雪村は走って病室を出て行ってしまう。

 

 「すまん。気を悪くさせてしまったな」

 「・・・大丈夫です」

 「雪村のこと悪く思わないでやってくれ」と近くの丸い椅子を持ってきて腰を下ろす。

 「お前と兄妹だって知ってから、やけになってるんだ。許してほしい」

 「・・・そうですか」

 

 翌日、夕方ごろ

 コンコン。「どうぞ」


 「・・・昨日は、ごめん。いいすぎた」

 雪村は恥ずかしそうに横を向きながらも、最後は正面を向いて謝った。

 「くどうさんに、怒られた?」

 「別に…少しだけ、だよ」

 そう返事を聞くと「そっか」とくすくすと笑う。

 

 「なんだよ。笑うことじゃないでしょ!」

 「ごめん。なんか・・・おかしくて。つい笑っちゃった」

 「変なの…じゃあ、また明日くるわ」

 「あっ。うん」

 時間的にもう面会時間終わり。もしかして、走って来たのかな?息、切らしてなかったけど・・・・とそう思っていた時、病室から出た彼は

 

 「なんとか間に合ったけど・・きつい」

 雪村は走ったときに痛くなった脇を押さえながら家に帰りましたとさ。


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