夜中にやってきた男性
その日の夜のことだった。
いつものように眠れない夜を過ごしていた時のこと、外が騒がしかったために余計に寝ても
いられなかった。
「侵入者はまだ見つからないのか?」
「申し訳ありません」
「一刻も早く捕まえるぞ!」
「「はい!!」」
「侵入者?」
ガタン!
「っ!?」
突然の物音にビクリと反応する。「なんだ?」と扉の方へと近づくとガチャン!!
「ここは・・・部屋?」
「痛っ」
「誰だ?!」
「痛い・・・」と扉から出てきた私は鼻あたりを両手で抑えてうずくまる。
勢いよく扉を開けた反動で思い切り壁に身体を叩かれて、あげくのはてに扉の方に鼻をバシッ!となってしまっては、とても耐えられない痛みである。
「すまない。いるとは思わなかったんだ」と手を差し出して私を立ち上がらせた。
よく見ると大人の男性だった。いきなりのことだらけでなにがなにやらだった。
「君、名前は?この部屋でなにをしている?」
「おじさんこそだれ?」
「これは失礼。私は・・・ん?誰か来るみたいだ」と男は急に姿を消した。
すれ違いで、研究員たちが部屋の中へと入って来て「怪しいやつをみなかったか?」と話かけてくる。
「さっきまでいたけど、きえちゃった」と正直に話すと「そうか、ありがとう」と急いで部屋から出て行った。
すると、「やれやれ。参ったな」と後ろから現れた男にびくっとする。
「どうしてきゅうに消えたの?」
「ん?それはね~な・い・しょ」
「そう。じゃあいいよ」とそっぽを向いたら「実はこのマントを被ると消えたようになるんだよ」といいと言ったのに種明かしをする彼。
「まだ開発中だけどね。結構便利だよ」とニコニコと話す彼に私は「なんでもいいけど、にげなくてもいいの?おじさん」と言い放つ。
「ご心配ありがとう。でも、まだ逃げるわけにはいかないんだ」
「どうして?」
そう聞くと、私を見つめて「こんな可愛い子を一人にするわけにはいかないからね」と頭を優しくなでる。
「おじさんにゆうかいされてあげたいけど、わたしはここからでられないの」
誘拐はともあれ、彼はそれを聞いて「どうしてだい?」と私に尋ねる。
「わたしはあの人たちの実験に協力してあげないといけないの」
「君は、自分の意思でここにいるのかい?それともその人たちに言われて」
「・・わからない。なんでここにいるのかも、でもわたしがやらないとこまるって言われてたのは覚えてる」
それから彼は覚えている範囲でいいから教えてくれと聞かれて、私は彼にすべてを話した。彼はそれを聞いて思いつめた顔になっていくのがわかった。
「だからわたし、ここにいなくちゃいけないの」
「・・・・」
「おじさん。またあの人たちが来ないうちにかえったほうがいいよ」
わたしは窓の方へと走って、外に研究員がいないかと左右を見て回る。
「おじさん、外だれもいないよ。今のうちにはやく」
だが、おじさんは動こうともしなかった。ただベッドに腰かけたまま・・・じっと。
「おじさん?」
おなかでもいたいの?と聞こうとすると、いきなり両腕をガシっと掴まれてこう口を開いた。
「必ず・・・必ず君を助けにいく。だからもう少し待っててくれ」
「おじさん。わたしここにいないと「おじさんがなんとかする。信じてほしい」
それからおじさんは「また来る」と言って消えて行った。




