これがすべての始まりで、彼女が最高傑作と呼ばれるようになった出来事だ
逃げ回っていた私は、いつの間にかその生き物を戦闘不能にさせていた。
先ほどまで追いかけていたでかい物体が、目の前で倒れている。それをみた黒井博士は「素晴らしい・・大成功だ!!」と大きく喜んでいた。
しかし、肝心の本人は自分が今何をやったのかまったく覚えてもいない。
そんな自分は幼いながらも、自分自身に恐怖を覚えた。
この恐怖体験はその日だけで留まらず、彼女を精神的に追い詰めることになる。
「いやだ!いきたくない!!いきたくないよ!!」
「君以外ほかにいないんだ。我慢したまえ」
「こわいよぉ・・・」
「大丈夫。君は強いからあんなのすぐに倒せるさ」
「やだ!もうたたかわない!お母さんの所へ帰して!!」
「それはこまったね~君にはいてもらわないと困るんだよ」
「いやっ、帰りたい!」
それを聞くと黒井博士は黙り込む。しばらく沈黙したうえで、「あっ、そうだ!良いこと考えた。
僕ってやっぱり天才だ!すぐに取り掛かろう」
彼が何を考えたのか、ほかの研究員もよく分からなかった。
黒井博士はしばらくの間部屋に閉じこもって出てこなくなり、実験は一時中止となる。
それから数週間がすぎたころだった。
「さぁ。はじめよう」
「いやだ!!たたかいなんてやりたくない!」
「じゃあ~それ、消しちゃおうか」
「えっ?」
彼の魔法は過去操作・検索という魔法を持ち、それを利用して逆に過去してきたことを消去することを思いついた。閉じこもっていたのは、これを改良するためだった。
そこから、私の記憶は黒井博士の改良魔法によって大切な人たちとの思い出がすべて消えてしまったのだった。
過去の記憶がリセットされた私は黒井博士の思いのままに実験を行う。
怖いこともなくなって迷いもなくなり、もはやあの頃の自分はいなくなっていた。
「じゃあ、これはどうかな~」と黒井博士は新たな生物を投入した。
今度は今までよりも違うものであり、攻撃もかわされてしまう。素早い動きで攻撃するため通常では歯が立たない。そこであの力を使って攻撃をかわしながら・・・バシッ!!と思いっきり真っ二つにした。
「素晴らしい!君は僕の最高傑作だ!!!!」
これが・・・レッドアイの覚醒した瞬間だった。




