幼い少女に課せられた実験
私の現在の名前は工藤力輝と名乗っているが、本当の名前は別にある。
人は生まれてから3歳までの記憶は消えると言われているけれど、私はそれ以上の記憶が残っていない。施設で育ったということだけで、家族構成や施設でどのようにして過ごしたということさえも覚えていないのだ。
しかし、それは自分自身が覚えていないだけということもあるだろう。
記憶に残らないような過ごし方をしていたのかもしれないと。そう自分に言い聞かせて。
でも。それも今日明らかになるのだ。
今の私になった原点というやつを、そして自分はいったい誰なのを・・・。
これは、私が忘れている記憶、つまり過去の話になる。
飛ばされた私はそれを夢のようにその記憶を見ているのだ。魔法力のある子どもを保護して責任がとれる歳になるまで面倒を見てくれる施設に私はいた。
母が兄を連れて帰ったその夜に、施設は黒井博士らにやられてしまい子供達は連れ去られてしまう。
なにも知らない状況で、ただただ博士の手下(研究員)達に言われるまま実験の材料となる検査を受けデータをとられた。幼い子供にはなにをされているのかもわからなかっただろうに。
そして、ある程度子供達の魔法力を把握したあとに実験は徐々に徐々に進行していくことになる。たくさんいた子供たちがだんたんと減っていくのが分かり、帰れると思い込んでいた・・・。けれど
「いらっしゃい。はーいここに座ってね」
黒井博士のもとに連れてこられた私は、「またけんさ?」と聞いてみた。
すると「いいや。もう検査はしないよ。ある程度把握できたからね」と返される。
「君にはこの注射をさせてもらうんだ。すぐに終わるからね~」
「ちゅうしゃ!?いやぁ、こわい!」
逃げ出そうとするも後ろにいた研究員に取り押さえられ、無理やり注射をうたれる。
「よし。もう終わったよ」
この注射器の中に入ってあったのは・・・真っ赤な色をした血のようなものだった。
注射をしてから身体に異変が起き始めた。
汗をかき、胸が苦しくなるということが睡眠中の私を襲うのだ。
「たすけて・・・・っ。お母さん・・・・にいちゃん・・・」
数週間後。
「そろそろ、試してみたくなってね~わくわくしちゃって」
「わくわく?」
「そう」と私をある場所へと連れて行った。そこには・・・・
「どう?これ僕が作ったんだよ。すごくないかい!?」
自分より大きな生物がそこにはうじゃうじゃいた。今まで見たことのない生き物だった。
「今からきみにこいつらと戦ってもらうから、頑張ってね」
「えっ?どういうこと!?」
「まぁまぁ、やってみればわかるさ」
黒井博士は私をその場に取り残して、一体の生き物に信号を出した。
こっちを向いて私に襲いかかって来るのだ。私は怖くなって泣きながら逃げ回った。
「逃げ回っちゃ意味がないよ~ほら戦って」
もはやなにを言っているのかわからなかった。今に至るこの状況でさえも、唯一分かったのは…ここはとても怖い場所だったというだけだった。




