記憶を取り戻して元の関係に戻ってしまった
数日ぐらい経ち、力輝の意識が回復する。
結果はしばらくしないと分からないということで様子見となった。
学校に関しては公欠扱い(事情を考慮)となった。
記憶は消えてはいなかったが、研究所に初めて来た日のことに関してはよく分からないという。
可能性が低いという前提での記憶回復。誰もが失敗だと思い込んでいた。
その翌日のことである。
今日も雪村が病院へとやってきた。
「おはよう」
「・・・」
「ん?どうしたの?変な顔して」
「変な顔って失礼ですね。私そんな顔してません」
「っ!?」
「私、なんでここにいるんですか?・・・黒井博士に過去に飛ばされて・・・」
驚いた。彼女が初めて会ったときの彼女に戻っているのだ。
「って、聞いてます?」
「聞いてるよ。ところでいくつかあんたに質問してもいい?」
「・・なんですか?」
「過去に飛ばされたことを知ってるなら、あんたと僕との関係も覚えてるんだよね?」
「・・・それに関してはノーコメントです」
「現実逃避するな。覚えてるんでしょ?」
「・・・はい」
「それであんた、記憶取り戻したけどどうするの?これから」
「どうもこうもありません。私とあなたは他人です」
「兄妹なのに?」
「兄妹という他人です」
立場が逆転した。あの時は雪村が困惑していたが、次は彼女が困惑する番となってしまった。しかし・・
「まぁ、確かにそうかもね。言葉でいうならば」
「えっ?どういう意味?」
「僕らは兄妹であっても、血縁上は他人だってことだよ」
「・・・はっ?」
「説明すると長くなるから省くけど、これが証拠だね。DNA鑑定した結果、僕達は兄妹じゃないことが判明した」
「ちょっと待って。DNA鑑定って・・兄妹じゃないって、でも私達は」
「いいたいことは分かる。でも聞いて。僕達は兄妹になろうとしていたんだよ。つまりあんたが僕の親があんたを養女として引き取る予定だったんだ。でもあの事件のせいでできなくなってしまった。あんたと僕とは血のつながりなんてまったくなかったんだ」
「・・・そう。よかったじゃないですか」
「よくないよ。こっちはどれだけ悩んだと思ってるんだよ」
「そんなこと知りませんよ」
彼女にとっては迷惑な話だった。でも彼にとっては大迷惑な話だった。
それは次第にわかるとして・・・こうして、力輝は記憶を取り戻したのでありました。




