久しぶりの時間
雪村は黒井博士の取り調べに参加するため、しばらく研究所内では力輝と過ごす時間が減っていた。
その変わりに美咲さん・夜見さん・橋屋さんが時々様子を見に来たり、訓練に誘ったりとしていたため、寂しいという気持ちはそんなに感じなかった。
今回の件で雪村が取り調べに参加した理由は聞かされていない。
黒井博士が警察に身柄を引き渡すまで残りわずかであるため、何か聞きたいことがあるのだろうと自分に言い聞かせて、力輝は今日も平穏に過ごすのである。
~昼休み~
「あれから雪村先輩、学校に来てるの?」←南條
「最近会ってないから、わかんないけど」←力輝
「急にどうしたの?喧嘩・・はしょっちゅうってしてるかもだけど、本当になにかあったの?」
「ここのところ忙しいみたいで」←力輝
「塾とか?家庭の事情とか?バイトとか?」←南條
「詳しくは知らないんだ」←力輝
「そっか~」←南條
2年A組教室にて。
「お~い、大丈夫か?」←沼口
「・・うるさいな。ほっといてよ」←雪村
「飯も食わずに寝るなよ。ほんとどうしちまったんだ?」←沼口
「・・Zzzz」←雪村
「寝るな!まず飯食え」←沼口
そして放課後
「あれ?工藤さん、雪村先輩来てるよ」←南條
「えっ?」←力輝
南條さんにより、力輝は教室の外を見ると間違いなく雪村の姿が見えた。
力輝は慌てて教室から出て彼に駆け寄る。
「どうしたの?」←力輝
「別に。久しぶりに帰りたくなっただけ」←雪村
「そうなの?あっ、待ってて!すぐ用意するからっ」←力輝
「・・・・」←雪村
「先輩、ちょっといいですか?」←南條
「手短になら」←雪村
「工藤さんと喧嘩したんですか?」←南條
「してないよ」←雪村
「じゃあ、最近一緒に帰ってないのは?」←南條
「あんたには関係ないでしょ?」←雪村
「・・・先輩。工藤さんを泣かせるようなことしないでくださいね?」←南條
「あんたはあいつの親かっ。言われなくてもしないよ」←雪村
「おまたせっ」
「工藤さん、じゃあまた明日ね」
「うん、また明日」
「行こう」
「あっ、うん」
「南條さんと何を話してたの?」
「あんたを泣かせるなって話」
「泣かせる?どういう意味??」
「分からなくていい」
「えっ、なんで?」
「いいから」
久しぶりに一緒に帰ることができた。こういうのはいつぶりか全く覚えていない。
気まぐれなのだろうか・・・彼ならそんなことも言いそうな気がする。
力輝は今なら彼に聞きたいことを聞くことが出来るが、それを話してしまうと彼が
不機嫌になることを恐れあえて黙っていることにした。
今は、彼の作ったこの時間を大切にすべきだと、彼女はそう思ったのであった。




