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4話 誕生日と告白

 投稿遅くなり申し訳ありません。


 言い訳をすると、模試や修学旅行その他リアルの諸々の関係により、執筆に時間を割けなかったことですね。ちなみにこれを投稿している現在も、修学旅行の真っ最中でございます。



「「「リサ、たんじょうびおめでとう!!!」」」


 今日は、私の誕生日、並びにこの収容所に来てちょうど3年目になる日です。


 ここでは誕生日に豪華なものを食べたりは出来ませんが、そのかわりに皆が盛大に祝ってくれて、とても賑やかな誕生日になります。


「ありがとう、みんな。」


「ねぇねぇリサー、早くご飯食べようよー」


 4歳の子が、私の袖を引きながら


「コラ、リサの誕生日なんだぞ!」


 

 それを7歳の子がたしなめます。


「えー、でもおなかすいたよー」


「それでも今日の主役はリサなんだから、リサが口を付けるまで食べちゃダメだよ!」


 小さい子同士がこのんなやり取りをしているのを見るのは、とても微笑ましいですね。


 それを眺めてほっこりしていると、笑顔を浮かべたロイさんがやって来ました。


「リサ、誕生日おめでとう」


「はい。こちらこそ3年間育てていただいてありがとうございます」


 この世界では、誕生日には自分を産んでくれた親や育ててくれた人達にお礼を言うのが習わしです。


 しかしロイさんには、そういうのは関係なくお礼を言いたい気持ちが自然に沸いてきました。


「ああ。んで、このあとパーティーが終わったら、ちょいと事務室まで来てくれねえか?話がある」


 先ほどまでの笑顔とは一転、キリッとした商人モードで話しかけて来ました。


「子供達を寝かせてからじゃいけませをか?」


「あー、話が長くなりそうだから、なるべく早くしたいんだが…」


「分かりました。子供達は年長の子に任せておきます」


「そうしてくれると助かる」


 そういうと、ロイさんはそのまま自分の席について、目の前のご飯を食べ……


「ロイ!今日はリサが主役なんだから!先に食べちゃダメ!!」


 …ようとして、6歳の女の子にしかられ、頬を掻いていました。


 …やっぱり締まらないロイさんなのでした。




 その後、みんなが席についてから、私はいつもと同じように食事の挨拶をします。


「この食材を買って来てくれたロイさんと、私達の血肉になる食材、そして私の誕生日を祝い、この料理を作ってくれたみんなに感謝して。


 いただきます」


「「「いただきます」」」



 みんなが作った料理はお世辞にもおいしいとはいえなかったですが、それでも皆の想いが籠もった料理を食べて、お腹よりも胸がいっぱいになりました。


 奴隷としてここに来る前はついぞプレゼントなどもらったことはありませんでしたが、今感じているこの想いが私の人生の最初で最高の誕生日プレゼントになったのだから、それもよかったのかな、と思いました。


 しかしいつまでも余韻に浸っているわけにはいきません。この後ロイさんに呼ばれているのです。


 7歳の男の子と女の子に子供達を任せて、私は事務室に行きます。


 しかし一体何の用事なのでしょうか。


 ロイさんの話は唐突過ぎるきらいがあります。ここに来たばかりの頃など、いきなり孤児を連れてきて、「新しい仲間だ。仲良くしてやれ」といい、まるで台風のようにすぐに飛び出して行きました。


 そしてまた3日後くらいに孤児を連れて戻ってくるのです。


 それだけなら慣れようもありましたが、ひどい時は出て行ったっきり1ヶ月も帰って来なくて皆を心配させたあげく、孤児を20人近く集めてひょっこり帰って来て、その子供達を全員私達に任せて出て行こうとしたことすらありました。


 流石にそのときは全力で引き止めて世話をさせましたが。


 とにかくそんな性格の為、何を言うにも唐突で、今回のように事前に何かを言われることは本当に稀であり、それだけに余計に展開が予想できません。


 少し不安になりながら、私は事務室の扉の前に着きました。


 意を決して、扉を叩きます。


 ――コンコン


「ああ、来たか。入っていいぞ」


「失礼します」


 事務室はロイさんのここでの仕事場です。


 事務室と言いながら、用途はデスクワークに止まらず、お客様との交渉などにも使われています。


 もともとは応接室もありましたが、奴隷の数が多く、応接室も子供達の部屋になってしまいました。


「とりあえず座ってくれ」


「はい」


 私はロイさんの正面に座りました。


 するとロイさんは笑顔になり、


「リサ、13歳の誕生日、おめでとう。とうとう今日で成人だな」


 ……忘れていました。13という数字が、どんな意味を持つのか。


「ありがとうございます」


 全世界共通で、結婚は15歳からですが、成人は13歳と決められています。


 この数字は、世界は神様に13年間をかけて作られたという逸話から、13年生きれば一人前であるという風に転じて、成人を13歳に定めたそうです。


 ちなみに結婚が15歳からなのは、成人してから二年間でお互いを知るため、共同生活をしなければならないからです。


 そのため15歳から結婚するにも2年間の同棲記録がなければ結婚は認められません。


 閑話休題


「んじゃ、成人祝いだ。ガキ共の前じゃコイツは出せねぇからな。ホレ」


 そう言ってロイさんが取り出したのは、赤いワインと小さなコップでした。


「…私、お酒は飲んだことないんですが……」


「ああ。だから口を付けるくらいでいい。そんなにキツいもんじゃないからそれで酔うことは無いだろう。俺も酒にはそんなに強くないから一杯でやめとくよ」


「じゃあ、お言葉に甘えて」


 お酒を飲むのは成人する際の一種の儀式と言うべきものです。別にしなくても成人出来ますが、ロイさんがわざわざ買ってきて下さった以上、むげに断るのは気が引けました。


 ロイさんがフタをあけると葡萄ジュースのような匂いに混じって、微かに鼻を突くような匂いが混ざっていました。ロイさんはあまりキツくないと言っていましたが、私は匂いを嗅いだだけで少しクラクラとしてきました。


 ロイさんはそのまま2つのコップにワインを注いでいきます。一つはコップの底にちょっと乗る程度、もちろんこちらが私のです。


 もう一つにはコップが溢れる手前くらいまでそそがれます。ロイさんはお酒に弱いと言っていましたが、実は沢山飲みたいのでは無いでしょうか。


「ロイさん、飲みたいのなら遠慮しなくてもいいですよ?」


「ん?あぁ、悪いな。まだ話すことがあるんだ。あんまり酔うと話せなくなっちまうだろ?」


「そういうことでしたか。分かりました」


「こっちこそ、気遣ってくれてありがとな。…んじゃ、リサの13歳の誕生日並びに成人を祝って」


「「乾杯!」」



 …初めて飲んだ(というより舐めた)ワインはおいしかったですが、頭がクラクラしました。


「うぅ…なんだかクラクラします…」


 これなら葡萄ジュースを飲んだ方がましです…。


「やっぱ13歳になったと言っても、まだまだ子供だな。安心しろ、俺も成人したてはそんなだったからすぐに慣れるさ。

 あー、やっと酒を飲む相手ができた。これからはとことん付き合ってもらうぞ。これまではガキ共に隠れて一人孤独に飲んでたからなぁ~」


「嫌ですよ。やっぱり私にはお酒は合いません」


「じゃあ飲まなくてもいいから、話し相手ぐらいにはなってくれよぉ」


「嫌ですって。飲んだくれの相手なんて面倒くさ過ぎてやってられませんよ。大体私がロイさんと話すなら、誰が子供達の面倒を見るんですか?」


 なんだかロイさんの絡み方がウザいです。酔ってるんでしょうか。だとしたらお酒に強くないというのは本当だったのかもしれません。


 そういえば私も普段は『面倒くさい』とか『ウザい』なんて言葉は使わないのに、何故か言ってしまいます。私も酔っているのかもしれません。


「…うん。これなら言えそうだな…」


「はい?何か言いましたか?」


「…いいや、なんでもない。こっちの話だ。ところで、そろそろ本題に入りたいんだが……リサ」


「はい」


「お前に伝えなければならないことがある」


「それは流れ的に分かります」


 思わず突っ込んでしまいました。やっぱり私は酔っています。


「あ、あぁ…悪い。んで、その伝えなきゃならないことは2つあって、一つ目はお前の値段がズバ抜けて高い理由だ」


「えっ…」


 それは、私が3年間ずっと気になっていたことです。同時に、これまで一度も、一部すら明かされることの無かったことでもありました。



「リサ、とりあえずお前は、学校に通っていたという経歴とその教養の深さ、それからその美しさにより、他の奴隷より遥かに値段が上がる。だがそれでも他の奴隷の百倍……ちゃんとした値段を言うと金貨100枚の値段を付けたのは、お前が将来スキルを持てる可能性、それもとびきりレアなスキルが手には入る可能性が非常に高いからだ。…いや、もう隠し事は無しだ。より正確にいうなら、これからの人生、どんな生活をしようと五年以内には確実に手に入る」


「……は?」


 一瞬、何を言われたのか分からなかった。


 呆けた理由は、自分が美しいと言われたことではなく。


「私が、スキルを持つ可能性がある?」


「ああ、その通りだ」


 ――スキル。


 それが使える者は、その分野でのエキスパートになると言われています。


 言い換えれば、スキルを得た者は一流であるということです。


「何故、そんなことが言えるのですか…?」


「昔言ったろ?商人のスキルを持ってるって。名前は鑑定。まぁスキル持ってるやつの中ではそんなに珍しくはないが、その能力だよ」


 私は唖然としてしまいました。開いた口が塞がらないとはこのことでしょう。


 てっきりスキルっていうのは、経験とかノウハウとか、そんな感じの意味だと思っていました。


「スキル『鑑定』の能力は一つ。商品の潜在的価値を見抜くことだ。あまり言いたくは無いが、商人にとっては奴隷も立派な商品。リサの潜在価値は会ったその時に見えた」


 …なるほど。


 と、簡単に割り切れるものではないですが、スキルを持つということはとても大きな意味を持つことです。それだけで世界の情勢を傾けてしまうほどに。それ故にこの場面でロイさんが嘘をつく理由もないのでしょう。


「それで、その能力とは?」


「オールマイティーだ」


「…え?どういうことですか…?」


「つまり、全てのことについて、一定の努力をすれば必ずスキルが得られるスキルだな。例えば武術を続ければ、武術に関するスキルが得られるし、俺のように商人を続ければ、商人のスキルが得られるといった具合だ。既に料理のスキルは身についているんじゃないか?」


 スキルには、先天的な物と後天的な物があると言います。私の場合、先天的に後天的なスキルが身につきやすくなるスキルがついているということでしょうか。


 なんだか頭が混乱して、まともな思考が出来ていないように思います。もう酔いは完全に醒めているようでした。


「これが言いたいことの一つ目だ」


「まだあまり整理できていませんが、まぁ分かりました。それで、二つ目は?」


 するとロイさんは、間髪入れずにこう言ったのです。


「リサ、お前が好きだ。付き合ってくれ」



 ―――リサは、頭が真っ白になった


 こんな文字が、視界を流れた気がしました。

 ここまで読んで下さって、本当にありがとうございます。


ポイントやお気に入り登録、感想など、様々な形で評価を頂いて、本当に嬉しい限りです。


 ここで、作中で説明が少なかったスキルの説明をいたします。


 作中でも言っている通り、スキルには先天的な物と後天的な物があり、いずれにしても先天的な才能によって習得可能なスキルが大きく左右されます。先天的なスキルは無意識に使っていることが多く、自分ではそれがスキルであることな気づくことは稀です。


 後天的な場合も、努力によってじわじわと習得する場合と、ある日突然、なんの前触れもなく手に入ることもあります。前者の場合、努力をすればするほどに習得できる可能性は上がりますが、前述したとおり先天的な才能の欠如しているものは、いくら努力してもスキルは現れません。スポーツでたとえれば、野球の才能しかない人間がいくらサッカーをしても、十人並のレベルで上達が止まってしまい、専門的な技術は習得不可能であるということでしょうか。


 スキルの効果はまちまちで、いわゆるドラ〇エなんかのように技を単発で発射するようなものから、料理や鍛冶なんかのように、それをすることで自然に発動することもあります。


 …と、こんなものでしょうか。


 本来なら作中で説明しなければならないのですが、なるべく早く物語を進めたいので、あとがきを使わせて頂きました。本当に申し訳ありません。


 それでは、次話も良ければ見てください。

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