3話 奴隷、リサ
ほのぼの(?)した日常です
「みんなー、お昼ご飯出来ましたよー!」
「「「はーい!!」」」
ここは、町外れの奴隷収容所。
私はここの奴隷です。
名前はリサ。姓はありません。
ここに来てから、明日でちょうど3年です。誕生日に売られた為、私の13歳の誕生日も明日です。
私はここで、保護者のようなことをしています。
「ハイハイ、小さい子から順番に並んでー。押さないでねー、慌てなくてもご飯は逃げませんよー」
何故こんなことをしているのかといいますと、私が一番年長で、読み書きや家事が一通り出来るからです。
ここに来たときはからっきしだった料理も、今ではかなり上手になりました。
「リサー、オレにはちょっと多めに入れてくれよー」
そう言うのは7歳のレオ。活発で、男の子の中ではいつも中心にいる子です。この子のように沢山食べようとしてくれる子もいると、作った人からするととても嬉しいです。
「ダメですよ。このご飯は全て、ロイさんの稼いでくださったお金で買っているのですから。それに今沢山食べると、食べ物が少ない時にとってもつらくなりますから、沢山食べない方が後で得をするんですよ」
とはいえ、成長期の活発な男の子にこの量は少し少ないというのも分かるので、悟られない程度に多めに入れてあげました。
それからも波のようにやってくる子供達にご飯とおかずをよそって、最後に自分のをついでから、自分の席に座りました。
そして、恒例になった食事の挨拶をします。
「では皆さん、食べ物を買ってくださったロイさんと、私たちの血肉となる食材に感謝して、好き嫌いをせず、残さず食べましょう。
いただきます」
「「「いただきます!」」」
それから、待ってましたとばかりにフォークとスプーンを持ち、一斉に食べ始めます。
ご飯を食べる時、彼らの間には笑顔が絶えません。
かけがえのない、いつもの風景。
しかしこれはいつまでも続きません。
ここにいる子供達のほとんどは、既に売られる先が決まっているのです。
ロイさんの方針で最低でも8歳まではこの奴隷収容所で育てることになっていますが、8歳になればそれぞれの主人の元に旅立ってしまうのです。
先ほどのレオも、あと1ヶ月で誕生日になり、貴族様に売られることが決まっています。
決まっていないのは、私だけです。
私はいつも、途中からとはいえ育ててきた子供達を見送ることしか出来ません。
「リサ」
考えごとをしていると、声をかけられました。
声の主は分かっています。
「あぁ、ロイさん。お久しぶりですね。どうしたんですか?」
「いやぁ、久しぶりに休暇がとれたんで、ちょっと寄ってみたんだ」
彼が奴隷商人、ロイさんです。
奴隷商人と言っても、ピンからキリまでいます。
彼は元孤児で、奴隷として商人(奴隷商人ではなく、物を売る方の人)のもとで働いていたらしいです。そこで商人のイロハを学び、また自分と同じような孤児を無くすため、奴隷商人となり、各地で身よりのない子供達を保護しては、奴隷として生活を保証しているのです。
現在、合法的に子供…人間を保護対象にするには、大きく3つの方法しかありません。
1、結婚して子供を生む
2、結婚する(ただし15歳未満は結婚できない)
3、奴隷商人として登録し、金を出して人を買う。もしくは親のいない子供を保護する。また、奴隷商人から奴隷を購入する
実質的には、血の繋がらない子供を保護するすべは奴隷にするしかないでしょう。
世界的に家や血統の意識が高く、子供1人でも『家』として認められてしまうが故に、それをやすやすと崩す法律を作れないのです。
しかし、奴隷となれば家とのつながりは完全に絶たれます。
私も、両親に売られた時点で彼らを親とは思っていませんし、法律的にも彼らとのつながりは絶たれたことになっています。
ちなみに、私はロイさんがお金を出して買った唯一の奴隷らしいです。その真意は分かりかねますが。
「それで、今回も新しい仲間はいませんでしたか?」
「ああ。ここ数ヶ月で飛躍的に生活の質が向上したからな。俺も休暇が取れるぐらい孤児もへってる。万々歳だ」
「それは喜ばしいことですね」
今は私達の前で無邪気にご飯を食べている子供達ですが、本来ならば彼らはここに居ない方が良い存在です。
幼いうちに親に捨てられ、または死別することの精神的ショックは、経験したことの無い者にとっては計り知れないことでしょう。
今は楽しそうに笑っている彼らも、ここに来たときは皆一様に、感情の抜け落ちたような顔をしていました。
そんな子供達が減っているのは、大変喜ばしいことです。
「ひさびさにリサの飯が食いたいなぁ。俺にも飯、頼めるか?」
「分かりました。よそってきますね」
そう言って席を立ち、ロイさんのためにご飯をよそいます。
「どうぞ、召し上がれ」
「あぁ。いただきます。
…うん、うまいなさすがリサだ」
ロイさんはそう言って、私の頭を撫でてくれました。
保護者のようなことをしていても、やはり17歳のロイさんにとっては、私はまだまだ子供のようです。
と、そこへ5歳の女の子がトコトコとやってきた。
「リサ~」
「ん?どうしたの?」
問いかけてみると、女の子は無邪気な笑顔でこう言いました。
「リサとロイ、なんだかふうふみたーい」
ブーーーッッ!!
何故かロイさんが飲んでいたスープを盛大に吹き出しました。…汚いです。
「ロイさん?食べ物を粗末にしてはいけませんよ?(ニッコリ)」
「ヒィっ!!わ、悪い…」
いくらなんでも食べ物を粗末にするのは許せません。
「いいですか、このスープには、沢山の命が詰まっているのですよ。
それを、命の大切さを知るあなたが粗末にしては、子供達に示しが…」
するとそこでまた女の子が、
「リサ、おばあちゃんみたーい!」
かっちーん。
「君はちょっと黙ってくれないかなっ!?リサの機嫌が悪くなるから!!
そしてリサ!!今のは俺は悪く無いだろう!! なんで更に不機嫌になってこっちを睨むの!?ちゃんと食べるから!!許してくださいこの通りです!!」
遠くからロイさんの声が聞こえます。
「私、まだ13歳ですよ…?おばあちゃんどころかお母さんにすらなれない年齢なんですよ…?それなのに…おばあちゃん…?
そうですか…私、そんなに老けてますか…」
「いやいやいやそんなことないぞ!?
リサは綺麗だし可愛いし料理うまいし美人だし!!十分若いって!!」
「そこまで褒められると、逆に胡散臭いですね…。しかも一つ若さ関係ないですし…」
「しまった!どさくさに紛れて関係無いことまで言ってしまった!」
「どうやら反省の色が無いようですね…。これはお説教が必要ですかね…」
「いやまて、話し合おう。話せば分かる。だからとりあえず腕を掴むのをやめよう。そして巧妙に関節をキメるのもやめよう…!てかそんなのどこで覚えたんだ!?俺は教えてないぞ…!!」
「さぁ、楽しい楽しいお勉強の時間ですよー」
「嫌だ…!!待ってくれ…っ!!助けてくれ…!!!俺は…俺は無実っ(ガシャン)」
皆まで言わせず、扉を閉めます。
そのとき女の子が、
「やっぱりふうふみたーい!」
と言って笑っていました。
――翌日。
何故かみんなが、朝ご飯を少なめにつぐように要求してきました。
多めにということは今までもありましたが、少なめにということはほとんどないので心配です。お腹でも壊したのでしょうか?
「リサ、今日は俺も、ちょっと少なめに…」
「レオ…あなたまで…。もしかして皆お腹の具合でも悪いのですか?」
もしかしたら集団食中毒かもしれません。その場合かなり危険です。
「い、いや…そういうワケじゃないんだけど…」
そう言って目をおよがせるレオ。
何か隠しているのは見え見えです。
「レオ?」
「ヒッ!!す、すいません全部話します!!」
…そんなに怖がらなくてもいいのに…
「き、昨日のリサが怖かったからさ、食べ物を残さないようにみんな少なめによそって貰ったんだよ…」
「…なっ!!」
その日から、私が料理を作る量が、4分の3くらいになりました。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
外国風とか異世界風の名前付けるの難しい…
女の子も名前つけるつもりでしたがあえなく断念…




