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1話 売れない少女


 私は奴隷でした。


 ただの奴隷ではありません。3年間、ただの一度も買われなかった不人気ナンバーワンの奴隷です。


 10歳の時、母から奴隷商人の方に売られて以来、誰にも買われていません。


 その理由は、金額。


 商人…ロイさんに聞くと、何故かは分かりませんが、私だけ他の子達よりも100倍近い値段で取引されるそうです。


 私は読み書きと計算が出来ます。


 でもそれは奴隷を買うような裕福な家の人間ならば誰にでも出来ることです。


 私は貴族様の嗜む遊戯が出来ます。


 ですがそれも、教えれば誰にでも出来ることです。


 私は家事炊事が出来ます。


 でもそれは、私を買うよりずっと安い、メイドを雇えば出来ることです。


 私は容姿が整っています。


 でも私より安くても私よりずっと可愛らしい、あるいは綺麗な子はたくさんいます。


 私と同じことが、私よりずっと安い子達でも出来るのに、私の値段は他の子達より100倍高い…こんな奴隷(商品)、誰も買わなくて当然です。


 だというのに、ロイさんは私の値段を下げようとしません。


 ロイさんの頭がおかしいというわけではありません。私以外の売れない奴隷の値段はキッチリと下げています。


 しかしロイさん曰わく、『お前の値段はこれ以上下げられない。これでも充分赤字なのに、これより下げたら破産してしまう!!』だそうです。


 その理由を聞いても、ロイさんははぐらかすばかりです。


 私を売りたくない…というわけではないようです。奴隷を買いに来たお客様には、何度か紹介をしてもらいました。


 しかしそれでも私を買う人はいません。


 誤解しないでほしいのですが、私は別に売られたいわけではありません。


 奴隷と言っても100年前の奴隷…雑巾のように絞り取られ、使われるだけ使われて、最後には捨てられるような、完全に自由のなくなった物ではありません。


 この奴隷収容所でもちゃんと三食食べられますし、お風呂もベッドも一般の方より若干質は落ちますが、ちゃんとあります。


 ロイさんも奴隷たちに理不尽なことを言ったり、暴力をふるったりする事は決してありません。


 端的に言うと、こここでの生活は安定しているのです。


 ただいくら安定しているといっても、3年も見向きもされないとなると

ちょっと精神的にクるものがあります。


 時には売られたその日に買い手が現れる奴隷もいるのに、私は1095日間も売られてないのです。


 ここに来る前の学校では、『命はお金では買えない』という言葉を習いましたが、お金ですら買ってもらえない私の命には他の子達の100倍の価値があるというのでしょうか。

 答えは否。売れないということはそれだけの価値が無いということと同じです。


 それが、売られて3周年の私が感じることなのでした。

読んでいただいてありがとうございます

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