パート22
訓練が終わり、アレンは大量に置かれてある樽の中にある水で顔を洗っているマルクに話しかけた。
「お疲れ様だな、マルク」
「……あんた、手加減してただろ」
「そういうお前さんこそ。いくら相手が老いぼれの隊長だからと言って、本気を出さなくていいとは言っておらんぞ」
持ってきたタオルをマルクに手渡し、自らも腰に差してあった剣を置き、樽の蓋を開けて中に入っている水で顔を洗い始める。
「お前さんが本気を出していれば、そのスピードに追い付けずに私は負けていたはずだ。違うか?」
「あんたこそ。今持っている剣の重さを軽くすれば、俺と同じくらいの速さで剣を振れるはずだ」
渡されたタオルで顔を拭きながら、アレンが置いた剣をマルクは拾い上げる。その重さはマルクが持っている剣よりもはるかに重く、使われている金属の量が違うのだと分かった。それだけではなく、それを支える柄だけでも相当の重さがあった。
「これも私が自分でやっている訓練の一つでな。年老いても元気でいられるのは、このおかげさ」
「少しは自分の歳を考えてみてはどうだ? 体に合わない特訓は身を滅ぼすだけだぞ」
「言葉を返すようだが、お前さんも訓練などに時間を使いすぎて睡眠時間が足りていないぞ?」
この時初めて、マルクの表情が少しだけ変わった。
「……あんた、なぜそれを?」
「同じ仲間の私生活について口出しするわけではないがな。これでも隊長らしく見ているからな」
自分用にと持ってきたタオルで顔を拭くアレン。
「昨日は断られたが、今日のは隊長としても命令だ。これから酒場に行くぞ」
「……あんたは酒が飲めないだろ」
「だからと言って、嫌いなわけじゃない。夕飯をおごってやろう!」