表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻獣観察物語~吸血鬼~  作者: Douke
第三章
22/24

パート20

 翌日。

 スレイは、幻獣が発見され討伐しろという命令が来ない限り、日々訓練に勤しんでいた。

 だが……幻獣を討伐し続けて約二百年。すでに幻獣の数は少なくなっており、先日のウルフのようにひっそりと暮らしているため発見が困難となっており、ほとんどスレイの役割は無くなっていた。

 そのため、訓練を真面目にしている者は少なく、国としてはスレイに宛てられる軍資金を自国の軍に費やした方がいいのではと議論されるほどに、今のスレイは部隊として成り立っていなかった。

「で、この前の子とはどうなったんだよ?」

「それがよー、最初はあんなに嫌がってたくせに途中からは自分から腰振ってきてさ。いやーもう大変だったわ」

「はは、今度俺にもやらせてくれよ」

 訓練場にも関わらず、下品な会話をして時間を潰している仲間をよそに、マルクは剣をただひたすらに振り続けていた。

 マルクは当時十八歳にも関わらず、スレイではその実力を認められ副隊長としての任を受け持っていた。だがマルクが部隊に指示を出すという事はなく、むしろマルクにとってそれは、邪魔であった。

 もともと、マルクには人をまとめるといった才能は自身ですらないと自覚していた。むしろ、自分から仲間たちと距離を取っており、コミュニケーションは一切していなかった。

 だが副隊長という立場はそれなりに自由に行動することが出来るため、その点にだけは感謝していた。

 もし副隊長出なかったら、先日のように単独でウルフを狩ることなど出来ないのだから。

「――マルク、少しいいか?」

 汗をぬぐう事すらせずに剣を振り続けていたマルクに、アレンが声をかけた。

「……なんだ?」

「出来れば、他の仲間がいるときは示しがつかないので、なるべく敬語を使ってもらいたいものだがな」

 アレンが苦笑しながらそう言ったのには、他にも意味があった。

 アレンはマルクの事をまるで自分の子供のように扱っているため、少しでもいいから世間に適応出来るように、さり気無くではあるがこういう風に教育をしていたのだ。

 それを聞いたマルクは顔を少し歪ませながら、少し考えた結果。

「……俺に何か用か、アレン隊長」

 と、敬語はまったく使われていないが、アレンの事を『あんた』ではなく『アレン隊長』と呼んだだけだった。しかしアレンはその事に不満どころか、逆に満足そうに首を縦に振った。

「うむ。そうやって一人で素振りだけでは、お前の実力では物足りないと思ってだな」

 そして、今この訓練場にいる全員に聞こえるように大きな声で、腰にある剣を抜きマルクにその剣先を突き付け――。

「模擬戦をしないか? マルク・ヴァンプール副隊長」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ