パート17
しばらくして、森の中からマルクとアレンが戻ってきた。
「アラン、今回の任務は中止だ。スレイはこれより帰還する」
「はあ!? 何言ってるんですか、隊長! 幻獣を放っておくなんて……」
「スレイの隊長は俺だ。いいから黙って俺に従え、エドワード副隊長」
アレンのその一言とただならぬ剣幕によって、エドワードはたじろぎ、しぶしぶと素直に従う事にした。
その間にマルクはミネルの元に歩いていた。
「お、お主!」
「ああ、ミネル。僕がいない間に何も無かったかい? あいつらに襲われてたり……」
「されておらんわ! そ、そんなことよりこれはどういう事じゃ! なぜ、お主はあやつらの知り合いなんじゃ!」
「まあ少し落ち着いてよ。どうどう」
「わしは馬じゃないぞ!」
マルクとミネルたちは小屋の中に入り、アレンはスレイ部隊をまとめ、小屋から遠ざかって行った。
「とりあえずは、これで奴らもしばらくは手出しが出来ない様にしてあるから」
「……お主、本当に何者じゃ? ただの物書きにそんな事が出来るわけがなかろう」
そう言われてしまったマルクはしばらく考える素振りを見せたかと思うと、ゆっくりと息を吐いた。
「ここまで来たら、仕方ないか。いいよ、僕の過去についてちょっと教えてあげるよ」
「隊長、一体あの男に何を言われたんですか?」
エドワードたちは村へと戻りながら、アレンにあっさりと退いた理由を聞いていた。
「あの少女は魔女ではなかった。それだけだ」
「それだけって……。でもあれは幻獣でしたよ!? 放っておくって言うんですか! それにあの男も、一体何者なんですか!」
アレンは無視していたが、エドワードは殺されるのを覚悟にアレンの前に立って、言うまでここを動かない、とでも言いそうな顔でアレンを睨んでいた。
やがてアレンは根負けしたのか、
「……それについても、村に戻ったら話してやる。今の俺は酒を飲みたいからな」
「隊長が、酒を……?」
普段からアレンはあまり酒を飲まない男だった。城の方でたまにある祭りでも、決して飲もうとせず、ただひたすらに本を読んでいるか、訓練をしている。彼はいたって真面目な男だった。
「いいからさっさと戻るぞ。俺達スレイの活動はまだ終わってない」
つまり、まだあの幻獣を討伐するのを諦めていない。そう読みとったエドワードはすぐに道を開けて、アレンの後に着いて行った。