パート15
そこから先の、マルクとアランの戦いは始めと違い、お互いに剣と剣をぶつけ合う戦いになっていた。
アランは両手でしっかりと剣を握り、時にマルクの剣を受け流し、時にするどく重い一撃を与える剣術だった。
対するマルクは、片手に剣を持ち替えたせいなのか空いているもう片方の腕を使い、アランの体に隙が出来る瞬間に拳をアランの銅や顔を殴ってきた。それだけではなく、片手だけで扱っている剣はたとえ流されたとしても、すかさずもう片方の腕で殴りかかる。するどい一撃が来たとしても、すぐに受け流していた。
それを見ていたミネルは、唖然としていた。
ある意味当然であろう。何の考えもなしに決闘を挑んだかと思いきや、マルクはスレイと対等に渡り合えているのだから。
そして、アランも同様に驚き、さらに焦りを感じていた。
(冗談じゃないぞ。この俺が、たかが人間ごときに……!)
「甘いよ」
まるでアランの心中を読んだかのように、マルクは踏み込んだ。
今まで剣で直接斬りかかってきた事が無かったマルクがいきなり踏み込んできたので、アランは慌てて剣で防ごうとした。
けれどマルクは上段からの踏み込みをフェイントとし、いきなり持っていた剣を地面に放り投げた。
そして。
「なっ!?」
身構えていたアランの足を奪い、そのまま地面に抑え込み、隠し持っていた果物ナイフを首に押し当てた。
「僕の勝ちだ」
「ふ、ふざけんな! 隠し武器だなんて卑怯だぞ!」
「卑怯? それはそっちの本当の隊長に言ってくれないかな。こっちはただでさえ重い剣を使わされていたんだから」
そう言ってマルクは立ちあがると、地面に落とした剣を拾い上げ、審判役をしていたアレンの元にへと近づいて行った。剣をアレンに返すと、マルクはその場で膝をついた。
「……久しぶりだな、マルク」
「こちらこそお久しぶりです。約三年ぶりですかね」
親しげな二人の様子に、その場にいた誰もが衝撃を受けた。
「な、お主……そやつと知り合いなのか!?」
ミネルがその場にいた人の代表として、マルクに尋ねるとマルクは苦笑した。
「ちょっと昔ね。まあそこらへんの話はまた後にするよ。それよりアレンさん。少しお話しませんか?」
「いいだろう……。おい、エドワード。指示があるまで動くな」
「わ、分かりました……」
負けた事に対する悔しさか、それとも二人が親しげな関係だという事に対する驚きか。どちらにせよ、アランは素直にアレンの指示を聞いたのだった。