表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻獣観察物語~吸血鬼~  作者: Douke
第二章
11/24

パート9

 ミネルが再び寝たのを確認して、マルクは言われた通りガーリックトーストを作っていると、扉を叩く小さな音が聞こえてきた。

(まさか、昨日の奴らか?)

 焼き終わったトーストを棚にあった皿に乗せ、警戒しながら扉を開けてみると、そこには頭に草を生やした全裸の少女がいた。

「……え?」

「え、ええ!? 人間!? な、なんでこんな所に!?」

 幻獣を見慣れているマルクだったが、突然やってきた少女に反応する事が出来なかった。

 対してその少女は、てっきりミネルが出てくると思っていたらしく、かなり動揺していた。

「ど、どどどどうしよう!? 私一人じゃなんにも出来ないし、それにこの小屋にいるってことはミネルさんがやられたってことですか!? 非力な私なんかじゃ太刀打ち出来ないってことですか!?」

「そんな僕に聞かれても」

 少女はあまりにも動揺しているせいか、自分が恐れているはずの人間(マルクの事だ)に自ら問いかけてしまっていた。それほどに困惑していた。

 しかもそれが言葉だけではなく、行動にまで出てしまっていた。マルクの前であわあわと動き回っていたら、草に足が絡まったらしく、そのまま後ろに倒れそうになった。

「危ない!」

 マルクはその少女の手を引くことにより、どうにか少女は倒れずに済んだ。

「ど、どうもです……」

「あ、いや、別にこれぐらい普通……」

 そこで、マルクと少女の目が合った。いや、合ってしまった。

 人から見たら、マルクと少女は抱き合っているように見えただろう。

 けれど少女は、自分がこの人間に捕まえられてしまったと勘違いをしてしまった。

 その結果。

「き、きゃああああああああああああああああっ!?」

「うわっ!?」

 少女は甲高い悲鳴を上げた。

 それもただの悲鳴じゃなかった。人間の悲鳴よりも高く、まるで超音波のように鼓膜を破ってしまうほど音だった。もし小さな子供がまともに聞いてしまっていたら、死んでしまうかもしれない。

 マルクは咄嗟に耳を両手で塞いだので鼓膜は破れることが無かったが、その悲鳴を間近で聞いてしまったので、一瞬だが意識が無くなりかけた。

(この子、もしかして……)

「い、一体何事じゃ!?」

 今まで寝ていたミネルが小屋から出てきた。どうやら少女の悲鳴で目を覚ましたみたいだ。

 すると悲鳴を上げていた少女は、ミネルの姿を見た途端。

「み、ミネルさん! 無事だったんですね!」

「……やはりお主の悲鳴じゃったか、アルラウネ」

「アルラウネ?」

 どこかで聞いた覚えがあったマルクだったが、アルラウネと呼ばれた少女にいきなり突き飛ばされた。

 マルクはそのまま転がり、昨日と同じように樹木に頭をぶつけてしまった。

 アルラウネはといえば、マルクの事なんて眼中に無いらしく、ミネルの元に駆けつけていた。

「あ、あの人間にやられたかと思いました!」

「お主は馬鹿か。たかが人間なんぞに、我がやられるわけが無かろう」

 大口を叩いているミネルだが、そのたかが人間にやられかけた事を言うほど、マルクは軽い男じゃない。しっかりと空気は読む方だ。

「一応確認なんだけど、その子も幻獣かい?」

 ぶつけた頭を抑えながら、マルクはミネルに尋ねる。

「そうじゃ。こやつはこの森に住んでおるマンドレイクの一種じゃ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ