第2章 第13話 王都の影
第2章
第13話 王都の影
王都アストレア。
広場で起きた奴隷商人の事件は、すぐに兵士たちによって処理された。
死体は運ばれ、人々も次第に散っていく。
だが――
アルトたちはその場に残っていた。
アサヒは悔しそうに拳を握っている。
「絶対おかしいよ…」
「捕まった瞬間に毒で死ぬなんて」
アルトも同意する。
「ああ」
「あれは自害じゃない」
「口封じだ」
アサヒは顔を上げる。
「やっぱりそう思う!?」
シアンは静かに言う。
「奴隷商人の組織は昔からあります」
「でも最近は特に動きが活発です」
アルトは聞き返す。
「最近?」
シアンは頷いた。
「はい」
「奴隷の数が増えているんです」
「しかも――」
少し言葉を止める。
「記録に残らない奴隷が」
アルトは眉をひそめる。
「記録にない?」
アサヒも驚く。
「そんなことできるの!?」
シアンは少しだけ困った笑顔。
「普通はできません」
「でも」
「もし王都の内部に協力者がいたら」
空気が少し重くなる。
アルトは思う。
(王都の内部……)
つまり。
貴族か。
それ以上か。
そのとき。
隣で小さな声。
「……アルト」
ルミナだった。
アルトは振り向く。
「どうした?」
ルミナは少しだけ俯いている。
「……思い出した」
アルトの目が鋭くなる。
「何を?」
ルミナはゆっくり話す。
「……暗い部屋」
「たくさんの檻」
アサヒとシアンも聞いている。
ルミナは続けた。
「……人がいっぱい」
声が少し震える。
「……子供も」
アサヒの表情が変わる。
「子供……」
ルミナは小さく頷く。
「……みんな」
「売られる」
アルトの拳がわずかに握られる。
(やっぱりな)
ルミナはさらに言った。
「……さっきの人」
「そこにいた」
アサヒは怒りを抑えきれない。
「最低だ…」
シアンは静かに言う。
「その場所」
「どこか覚えていますか?」
ルミナは首を振る。
「……わからない」
「逃げたあと」
「……覚えてない」
記憶が途切れている。
アルトは無理に聞かないことにした。
「十分だ」
ルミナを見る。
「ありがとう」
ルミナは少しだけ驚いた顔をした。
そして小さく頷く。
「……うん」
そのとき。
アルトの頭の中に声が響く。
【クエスト更新】
クエスト
「奴隷商人の闇」
進行条件更新
新条件
奴隷密売組織の拠点を見つける
報酬
スキル進化
アルトは目を細める。
(スキル進化…?)
これはかなり大きい報酬だ。
つまり。
それだけ大きな事件ということだ。
アサヒが言う。
「ねえアルト!」
「この事件、調べよう!」
やる気満々。
アルトは少し笑う。
「勇者の仕事か?」
アサヒは胸を張る。
「もちろん!」
「悪は見逃さない!」
まさに太陽のような正義感だった。
そのとき。
シアンが静かに言った。
「でも」
三人が見る。
シアンの表情は優しいまま。
だが。
目だけが少し冷静だった。
「この件」
「かなり大きいかもしれません」
「下手をすると」
「王国の上層部が関わっている可能性もあります」
アサヒは一瞬黙る。
「……それでも」
そして強く言った。
「悪いことは悪い!」
アルトは少し笑った。
(本当にまっすぐだな)
ルミナはぼそっと言う。
「……バカ」
アサヒ「え!?」
「なんで!?」
ルミナは静かに言う。
「……でも」
少しだけ間を置く。
「……嫌いじゃない」
アサヒは嬉しそうに笑う。
「ほんと!?」
ルミナはそっぽを向いた。
「……少しだけ」
アルトはため息をつく。
(賑やかになってきたな)
だが。
このとき彼らはまだ知らない。
王都の奥深く――
豪華な屋敷の一室。
温厚そうな男がワインを飲んでいた。
王国大臣。
穏やかな笑顔。
優しい声。
だがその男こそ。
王都の奴隷密売組織の黒幕だった。
男は部下から報告を聞く。
「そうですか」
「奴隷商人が一人捕まりましたか」
部下が言う。
「はい」
「ですがすでに処理済みです」
男は優しく微笑む。
「よろしい」
「問題ありません」
そして窓の外を見ながら言った。
「商品はまだ十分にあります」
「この事業は」
「王国にとっても利益が大きい」
男の目が冷たく光る。
「邪魔する者がいれば」
「排除するだけです」




