第1章 第5話 走るクエスト
第1章
第5話 走るクエスト
朝の空気は澄んでいた。
村の東側から、太陽がゆっくりと昇ってくる。
鳥の鳴き声が響き、畑ではすでに村人たちが働き始めていた。
そんな中。
一人の少年が村の道を走っていた。
「はぁ……はぁ……」
アルトだった。
息を切らしながら、石畳の道を走り続けている。
普段ならこんな朝早くから走ることはない。
だが今日は違う。
アルトの目の前には、例の光の文字が浮かんでいた。
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クエスト
3km走る
進行状況
1.2km / 3km
報酬:敏捷 +1
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「まだ……半分か」
アルトは少し息を整えながら走り続けた。
昨日の夜。
森でクエストを二つ達成した。
薪集め。
薬草採取。
その結果、筋力と体力が上がった。
そして今は――
敏捷を上げるクエストに挑戦している。
「こうして走るだけで……強くなるんだよな」
まだ信じられない気持ちもある。
だが実際にステータスは上がっていた。
それは間違いない。
村の井戸の前を通り過ぎたとき。
声がかかった。
「おいアルト!」
振り向くと、村の青年ガルドが立っていた。
腕の太い、いかにも農夫という体格の男だ。
「朝から走ってるのか?」
「まあ……ちょっと」
アルトは苦笑した。
「体力作りか?」
「そんな感じです」
ガルドは笑った。
「いいことだ。若いんだから鍛えとかないとな」
アルトは軽く手を振り、また走り始めた。
「はぁ……」
走りながら、アルトは考える。
村の人たちはまだ知らない。
自分のスキルの本当の力を。
もし知られたら、きっと驚くだろう。
あるいは――
面倒なことになるかもしれない。
「今は黙っておくか」
アルトはそう決めていた。
クエストスキルのことは、まだ誰にも話していない。
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村を一周する道を走る。
畑の横を通り。
小さな川を渡り。
牧場の柵の前を通る。
そのとき。
また光の文字が変わった。
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進行状況
2.6km / 3km
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「もう少し……!」
アルトは少しペースを上げた。
体は重い。
だが昨日より、確かに動きやすい気がする。
体力が上がったおかげかもしれない。
村の入り口の門が見えてきた。
そして。
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3km / 3km
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その瞬間。
体がふわっと光った。
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クエスト達成
報酬獲得
敏捷 +1
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「……!」
アルトは足を止めた。
呼吸を整える。
だが不思議なことに、疲れが少し軽くなった。
体が軽い。
「これが……敏捷か」
アルトは軽くジャンプしてみた。
体が少し速く動く感じがする。
ステータス画面を開く。
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ステータス
名前:アルト
筋力:6
敏捷:5
体力:6
魔力:3
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「確実に強くなってる」
アルトの胸が高鳴った。
たった一日。
それだけで、もう三つもステータスが上がった。
普通なら、何年も訓練しないと上がらないものだ。
「これ続けたら……」
アルトの頭に、一つの考えが浮かぶ。
冒険者。
村の外の町には、冒険者ギルドがある。
魔物を倒し。
依頼を受け。
世界を旅する者たち。
子供の頃からの憧れだった。
だが普通の村人がなるのは難しい。
強いスキルが必要だからだ。
だが今は違う。
「俺でも……なれるかも」
アルトは空を見上げた。
青い空が広がっている。
そのとき。
また光の文字が現れた。
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新規クエスト解放
ランク:E
スライムを3体討伐する
報酬:筋力 +2
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「スライム三体……」
アルトは小さく笑った。
昨日は一体倒すだけで必死だった。
だが今なら。
少しは戦える気がする。
「森に行くか」
アルトは村の外れへ歩き出した。
森の奥には、まだ知らないクエストがある。
そしてその先には――
アルトの知らない世界が広がっていた。




