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世界はここから…  作者: モノンST
光と闇、善と悪

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第2章 第7話 初めての自由

第2章

第7話 初めての自由


奴隷商の店を出たあと。


王都アストレアの夕方の通りを、アルトとルミナは並んで歩いていた。


「……」


「……」


沈黙。


さっきまで首にあった首輪はもうない。


奴隷紋も消えた。


それなのに――


ルミナはまだ少しだけ後ろを歩いている。


まるで鎖がまだあるみたいに。


アルトは振り返った。


「ルミナ」


「……なに」


「もう自由だから」


ルミナは少しだけ首を傾げた。


「……?」


「だから、別に俺の後ろ歩かなくていい」


ルミナは数秒考える。


そして小さく言った。


「……癖」


アルトは苦笑する。


「奴隷って大変だな」


ルミナは何も言わない。


ただ静かに歩く。


少しして、アルトが言った。


「とりあえず宿行くか」


ルミナが止まった。


「……宿?」


「うん」


「……一緒?」


アルトは普通に答える。


「他に誰いるんだよ」


ルミナは少し警戒した目でアルトを見る。


「……変なこと、する?」


アルトは思わず吹き出した。


「しない」


「ほんと?」


「ほんと」


ルミナはじっとアルトを見る。


疑っている。


かなり。


「……信用ないな」


ルミナは即答した。


「ない」


アルトは笑う。


「正直でよろしい」


ルミナは少しむっとした顔をした。


その表情を見てアルトは思う。


(さっきより生きてる顔してるな)


奴隷商の店にいたときのルミナは、本当に目が死んでいた。


でも今は違う。


まだ暗いけど。


感情がある。


怒るし。


警戒もする。


それだけで十分だった。



少しして。


二人は宿屋に入った。


王都では普通の宿。


受付の女性がアルトを見る。


「一泊?」


「二人」


女性はルミナを見る。


銀髪。


珍しい。


だが何も言わない。


王都では珍しいことではないからだ。


「銀貨8枚です」


アルトは支払う。


部屋の鍵を受け取る。


「二階、右奥の部屋です」



部屋に入る。


ガチャ。


ルミナは部屋の中を見渡す。


ベッド。


机。


椅子。


普通の部屋。


そして小さく呟く。


「……広い」


アルトは笑う。


「そうか?」


「……うん」


ルミナはベッドの端に座った。


ちょこん。


とても小さく見える。


アルトは気づいた。


(……ちっちゃいな)


ルミナはその視線に気づいた。


「……なに」


「いや」


「今、小さいって思った」


アルトは少し焦る。


「いや別に」


ルミナはじっとアルトを見る。


そして言った。


「……思った」


「ごめん」


ルミナは少しむくれた。


「……小さいの、気にしてる」


「そうなの?」


「うん」


ルミナは腕を組む。


胸も――


小さい。


とても。


本人はかなり気にしているらしい。


アルトは苦笑する。


「まあそのうち大きくなるって」


ルミナは真顔で言った。


「ならない」


即答だった。


アルトは笑う。


ルミナはむっとする。


「……笑った」


「いや、ごめん」


ルミナはぷいっと顔をそむけた。


だがその頬は少しだけ赤い。



そのとき。


アルトの頭の中で声が響く。


【スキル更新】


アルトは目を細めた。


(そういえば進化してたな)


ステータスを確認する。


スキル

クエスト+


内容が変わっていた。


今まで

1日3クエスト


だが――


新しい項目が追加されている。


アルトは驚いた。


(これは……)


そのとき。


ルミナが言った。


「……アルト」


「ん?」


「なんで助けたの」


アルトは少し考えた。


正直に答える。


「クエスト」


「?」


ルミナは意味がわからない顔をする。


アルトは笑う。


「まあ気分だな」


ルミナはしばらく黙っていた。


そして小さく言った。


「……変な人」


「よく言われる」


ルミナは少しだけ視線を落とす。


そして――


とても小さな声で言った。


「……ありがとう」


アルトは聞こえなかったふりをした。


ルミナもそれ以上は言わなかった。


だけど。


その夜。


銀髪の少女は久しぶりに――


安心して眠った。



一方その頃。


王城。


豪華な部屋。


温厚そうな顔の大臣が部下の報告を聞いていた。


「銀髪の奴隷が解放されました」


男の笑顔が少しだけ消える。


「……誰に?」


「冒険者です。名前は――」


男は静かに呟く。


「アルト」


そしてゆっくり笑った。


「面白いですね」


その目は冷たい。


「少し調べましょう」


王都の闇。


その視線が――


アルトへ向き始めていた。

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