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世界はここから…  作者: モノンST
光と闇、善と悪

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第2章 第5話 奴隷解放

第2章

第5話 奴隷解放


王都アストレアの裏通り。


奴隷商から銀髪の少女を買ってしまったアルトは、鎖を手にしたまま立ち尽くしていた。


「……」


鎖の先には少女。


銀髪の奴隷。


ルミナ。


だが当の本人は、アルトを一切見ようとしない。


視線はずっと地面。


「……」


「……」


沈黙。


気まずい。


(どうしよう……)


アルトは内心かなり困っていた。


村にいた頃は、こんな経験など当然ない。


奴隷なんて見たことすらほとんどなかった。


ましてや買うなんて。


アルトは小さくため息をつく。


「とりあえず……ここ出よう」


ルミナは反応しない。


アルトはゆっくり歩き出す。


鎖が引かれる。


ガチャ…


ルミナも歩く。


抵抗はしない。


ただ歩くだけ。


まるで意思がないように。


(……ほんとに生気がないな)


アルトは横目で少女を見る。


顔は整っている。


銀髪も綺麗だ。


だけど――


目が死んでいる。


完全に。


(何があったんだ…)


しばらく歩き、裏通りを抜ける。


人通りの多い場所に戻ると、ルミナは少しだけ体を強張らせた。


周囲の視線。


奴隷の首輪。


それだけで目立つ。


アルトは立ち止まった。


「……ルミナ」


返事はない。


「お前さ」


少し考えてから言う。


「奴隷、嫌なんだろ?」


ルミナの体がわずかに止まった。


だが答えない。


アルトは続ける。


「俺も嫌だ」


ルミナがゆっくり顔を上げた。


初めて、ちゃんとアルトを見る。


その目は冷たい。


「……嘘」


「え?」


「嫌なら……買わない」


正論だった。


アルトは少し困った顔をする。


「まあ、そうなんだけどさ」


ルミナは吐き捨てるように言った。


「最低」


「またそれ?」


「人を物みたいに買う人……嫌い」


その言葉には、はっきりとした怒りがあった。


さっきまで死んでいた瞳に、少しだけ感情が宿る。


アルトは少しだけ安心した。


(怒れるなら、まだ大丈夫か)


アルトは頭をかいた。


「……まあ聞け」


そして言った。


「解放する」


ルミナの目が大きく開いた。


「……え?」


「奴隷、やめる」


アルトはルミナの首輪を見た。


「この首輪、外せばいいんだろ?」


ルミナは信じられない顔をした。


「……無理」


「なんで?」


「奴隷紋」


ルミナは自分の首を指さした。


そこには赤い紋様が刻まれている。


「契約……ある」


アルトは少し考えた。


「つまり契約を解除すればいい?」


ルミナはゆっくり頷く。


「奴隷商……契約書」


アルトはため息をついた。


「またあそこ行くのか……」


さっきの胡散臭い奴隷商。


絶対に面倒なことになる。


だが――


そのとき。


頭の中で声が響いた。


【クエスト更新】


「奴隷少女ルミナを解放せよ」


・契約を破棄せよ

・報酬:???

・失敗:???


(やっぱりそれか)


アルトは笑った。


「よし、決まり」


ルミナを見る。


「戻るぞ」


「……え?」


「奴隷商のとこ」


ルミナは動かない。


「……なんで」


「解放するって言ったろ」


ルミナはアルトをじっと見た。


疑い。


不信。


そして――


ほんの少しの戸惑い。


「……意味、わからない」


アルトは肩をすくめた。


「俺もよくわからん」


正直だった。


「でもまあ、気分?」


ルミナは眉をひそめた。


「……変」


「よく言われる」


アルトは歩き出した。


「ほら、行くぞ」


ルミナは動かない。


鎖が引かれる。


数秒後――


小さく歩き出した。


その背中はまだ固い。


警戒している。


でも――


ほんの少しだけ。


ほんの少しだけ。


死んでいた瞳に。


小さな光が戻り始めていた。



一方その頃。


王都のある屋敷。


豪華な部屋。


一人の男がワインを飲んでいた。


優しそうな顔。


温厚な笑顔。


王国の大臣。


その男は静かに言った。


「……奴隷市場で動きが?」


部下が答える。


「はい。銀髪の奴隷が一人、冒険者に買われました」


男は微笑んだ。


「ほう」


「珍しいですね。あの個体が売れるとは」


大臣はゆっくりグラスを揺らす。


「そうですね」


そして静かに呟いた。


「……あれは大事な商品だったのですが」


男の目だけが笑っていなかった。


王都の闇。


その歯車が――


静かに動き始めていた。

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