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世界はここから…  作者: モノンST
光と闇、善と悪

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第2章 第4話 死んだ瞳の少女

第2章

第4話 死んだ瞳の少女


王都アストレアに来てから、三日目の朝。


アルトは冒険者ギルドを出て、王都の大通りを歩いていた。


石畳の道。

左右に並ぶ巨大な建物。

村とは比べ物にならない人の数。


「やっぱり王都ってすごいな……」


どこを見ても人、人、人。

商人、兵士、冒険者、貴族らしき人間までいる。


だが――


アルトはふと、立ち止まった。


(……なんだ?)


胸の奥。


あの感覚。


スキルが反応している。


頭の中に、いつもの声が響いた。



【クエスト発生】


「死んだ瞳の少女を救え」


・制限時間:本日中

・報酬:???

・失敗:???



(また……???か)


アルトは眉をひそめた。


しかも今回は場所の指定がある。


表示された方向を見ると――


そこは王都の裏通りだった。


「……嫌な予感しかしないな」


アルトは小さく呟きながら、その方向へ歩き出した。



王都の裏通り。


そこは大通りとはまるで別世界だった。


薄暗い路地。

汚れた壁。

怪しい商人。


そして――


鉄格子のついた檻。


「……奴隷商か」


アルトは思わず顔をしかめた。


檻の中には人間がいる。


子供。

女。

老人。


首には奴隷紋。


値札のような札がぶら下げられている。


「安いよ安いよ!

 今日は特別価格だ!」


太った男が声を張り上げていた。


どう見てもまともな商売じゃない。


(これが……王都の闇か)


そのときだった。


アルトの視線が、ある檻に止まった。


一人の少女。


銀髪。


年齢はアルトと同じくらいか、少し下。


やせ細った体。


汚れた服。


そして――


その瞳。


「……」


死んでいた。


完全に。


光がない。


希望がない。


ただ、虚ろに地面を見ているだけ。


まるで人形。


アルトの頭の中で、クエストの文字が強く光った。


【対象確認】


(……この子か)


アルトは檻の前まで歩いた。


奴隷商が気づく。


「お?兄ちゃん興味あるのか?」


「……この子、いくら?」


男はニヤニヤ笑った。


「お、いい目してるな兄ちゃん。

 そいつはちょっと訳ありでな」


「訳あり?」


「言葉がほとんど喋れねえ。

 感情も薄い。

 使えねえ奴隷だ」


男は笑いながら言った。


「でも顔はいいだろ?

 銀髪だしな。珍しいぞ?」


アルトは少女を見た。


少女は――


一度だけ、ゆっくりアルトを見た。


その目。


まるでこう言っているようだった。


(どうせ助けない)


(どうせ同じ)


(全部同じ)


すぐに視線が下がる。


諦めきった目。


アルトはため息をついた。


「……いくら?」


「金貨20枚」


「高いな」


「銀髪だぞ?」


「使えないって言っただろ」


男は肩をすくめた。


「まあな。でも顔がいい奴隷は売れる」


アルトはしばらく黙った。


金貨20枚。


安くはない。


でも――


払えない額でもない。


(……クエストだしな)


アルトは袋から金貨を取り出した。


「買う」


奴隷商の目が光った。


「お、太っ腹!」


男は鍵を取り出し、檻を開ける。


少女の首輪を掴み、無理やり引きずり出した。


ガシャッ


鎖の音。


少女は抵抗しない。


ただ歩かされるだけ。


まるで人形。


奴隷商はアルトに首輪の鎖を渡した。


「はいよ。今日から兄ちゃんの奴隷だ」


少女は地面を見たまま。


アルトは少し困った顔をした。


「……名前は?」


少女は答えない。


奴隷商が笑う。


「言ったろ?喋らねえって」


アルトはしゃがみ、少女と目線を合わせた。


「俺はアルト」


少女の瞳が、少しだけ動く。


アルトは静かに言った。


「お前は?」


長い沈黙。


そして――


かすれた声。


本当に小さな声だった。


「……ルミナ」


アルトは微笑んだ。


「ルミナか」


少女はアルトを見た。


その目は冷たかった。


そして――


はっきりとした嫌悪。


「……最低」


小さく呟く。


アルトは首をかしげた。


「え?」


ルミナは視線をそらした。


「……奴隷、買う人……嫌い」


アルトは苦笑した。


(めちゃくちゃ嫌われてるな)


でも――


頭の中で声が響く。


【クエスト進行中】


【死んだ瞳の少女を救え】


アルトは空を見上げた。


(さて……どうするかな)


王都の闇。


そして――


銀髪の奴隷少女。


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