第2章 第2話 王都の冒険者ギルド
第2章
第2話 王都の冒険者ギルド
重厚な木の扉を押し開けた瞬間――
ざわめきが耳に飛び込んできた。
「……!」
アルトは思わず立ち止まる。
村のギルドとは比べものにならない広さだった。
天井は高く、巨大なホールのような空間が広がっている。
奥には長い受付カウンターが並び、その前には多くの冒険者たちが列を作っていた。
酒場のようなスペースもあり、そこでは朝から酒を飲んでいる者たちもいる。
鎧のぶつかる音。
冒険者たちの笑い声。
依頼の話をする声。
王都のギルドはまさに――
冒険者の巣窟だった。
「……すごいな」
思わず呟く。
すると、近くのテーブルにいた大柄な男がこちらを見て笑った。
「お、新顔か?」
「え?」
「その顔、田舎から来たばっかだろ」
男の隣にいた仲間らしき男たちも笑い出す。
「はは、わかるわかる」
「王都のギルドは初めてか?」
アルトは少し苦笑した。
「まあ……そんな感じです」
男は椅子にもたれながら腕を組む。
「ここはアルディア王国のギルド本部だ。地方とは格が違う」
確かに、その通りだった。
掲示板には無数の依頼書が貼られている。
魔物討伐。
護衛任務。
ダンジョン探索。
素材採取。
中には高額な報酬の依頼もあった。
(すごい数だな……)
アルトが掲示板を眺めていると、再びスキルが反応する。
【クエスト】
①王都の冒険者ギルドへ行け
達成
報酬:経験値獲得
アルトの体に、微かな力が流れ込む。
「……よし」
どうやら無事達成らしい。
残るクエストはあと二つ。
【本日のクエスト】
②王都の情報を集めろ
③???
(情報か)
アルトは周囲を見渡した。
ここなら色々な話が聞けそうだ。
そのときだった。
「おい、聞いたか?」
近くのテーブルから声が聞こえてくる。
アルトはさりげなく耳を傾けた。
「まただよ」
「また?」
「人が消えたらしい」
その言葉に、アルトは少し眉をひそめる。
「……どこで?」
「貧民街だ」
「最近多くねえか?」
話しているのは三人の冒険者だった。
一人が酒を飲みながら言う。
「俺の知り合いのガキもいなくなったらしい」
「マジかよ」
「王都は広いからな……」
別の男が小声で言った。
「奴隷商人じゃねえのか?」
「……ありえる」
その瞬間、アルトの頭に村のギルドマスターの言葉が浮かぶ。
『王都では人が消えるって噂がある』
(……本当なのか)
アルトは黙って話を聞いていた。
すると三人のうちの一人がこちらに気づく。
「おい、お前」
「え?」
「さっきから聞いてただろ」
アルトは正直に頷いた。
「少し」
男は苦笑する。
「まあいい。どうせ王都じゃ有名な噂だ」
「噂?」
「ああ」
男は酒を飲み干し、声を落とした。
「奴隷が増えてる」
アルトの目がわずかに細くなる。
「奴隷……」
「王都には奴隷市場がある。知ってるだろ?」
「……はい」
男は腕を組む。
「でもよ、最近増えすぎなんだ」
「増えすぎ?」
「どこから連れてきてるのかって話だ」
確かにおかしい。
普通、奴隷になる人間は限られている。
犯罪者。
借金奴隷。
戦争捕虜。
しかし、それだけで大量の奴隷が増えるとは思えない。
男はため息をついた。
「まあ、俺たち冒険者には関係ねえけどな」
「関係ない……」
「下手に首突っ込むと面倒になる」
そう言って男は立ち上がった。
「王都は広い」
「そして……闇も深い」
その言葉だけ残し、三人はギルドを出ていった。
アルトはしばらくその場に立っていた。
(人が消える……奴隷が増える……)
偶然とは思えない。
そのときだった。
【クエスト】
視界に文字が浮かぶ。
【本日のクエスト】
②王都の情報を集めろ
達成
報酬:スキル経験値
アルトは小さく息を吐いた。
「……なるほど」
情報収集は成功らしい。
残るクエストはあと一つ。
【本日のクエスト】
③???
条件未達成
「条件……?」
アルトが首を傾げたそのときだった。
ギルドの入口が大きく開く。
バンッ!
勢いよく扉が開き、何人かの冒険者が振り向いた。
そこに立っていたのは――
重装備の騎士たちだった。
王国騎士団。
ざわめきが広がる。
「騎士団?」
「なんだ?」
騎士の一人がギルドの中を見渡す。
そして低い声で言った。
「ここにいる冒険者たちに通達する」
空気が一瞬で張り詰める。
「王都周辺で魔物の異常活動が確認された」
ギルドの中がざわついた。
「魔物?」
「王都の近くで?」
騎士は続ける。
「討伐隊を編成する」
「腕に自信のある者は協力してほしい」
その言葉を聞いた瞬間――
【クエスト】
アルトの視界に、新しい文字が浮かび上がった。
【クエスト】
王都周辺の魔物を討伐せよ
報酬:???
アルトはゆっくりと笑った。
「……来たな」
王都での最初の戦いが、始まろうとしていた。




